思い出にさようなら
子どもたちの成長と共に手狭になったので、テーブルを買い替えました。古いテーブルに、購入した粗大ごみシールを貼りながら「テーブル下にもぐって、いないないばぁ!って遊んだな。あっ、この傷~」など、次々と思い出が蘇ってきました。
が、感傷に浸る余裕もなく、翌朝マンションの指定場所へテーブルを出しました。粗大ごみは、指定日時に自治体が粗大ごみシールを確認して回収に来ることになっています。
数十分後、勤務先に向かうため家を出るとテーブルがなくなっていたので、「回収早いな」と思いつつ仕事へ向かいました。するとその道中、自治体の回収業者から着信があり「回収予定のテーブルがない」と言われたのです。
なんか悔しい!
事情を話すと「あ~、やられましたね」とひと言。時折、良い状態の家具は盗まれることがあるとのこと。あっけにとられていると「自分たちにできることはないので」と電話を切られました。
「粗大ごみシールは高かったし、見知らぬ誰かが持ち去るなんて気持ち悪い……」と、悔しいやらモヤモヤするやら、複雑な気持ちに。もともと捨てる予定だったのに、なんとなく家族の思い出も盗まれたように感じ、しばらく落ち込みました。
犯人は身近な人!?
この事件から1年ほど経ったころです。帰って来るなり「あのテーブルがあった!」と大声を出す夫。なんと隣人の自転車に積んであると言うのです。姿を消したテーブルは、隣人が所持していたことがわかりました。
見に行くと、特徴的な形をしているので、すぐにそれと気がつきました。不自然に自転車の荷台からはみ出したテーブルには、わが子が付けた傷も残っていました。似た家族構成で、会えばあいさつする程度の隣人。あのとき隣人が持って行ったのかと思うと、また複雑な気持ちが沸き上がってきました。
管理会社に訴えようか迷いましたが、いろいろ考えた末、隣人とのトラブルは避けたかったのでやめました。自転車に積まれたテーブルはわずかにリメイクされ、きれいに磨かれた状態。少し直して売りに出そうと持ち出したのかもしれません。もちろん私が貼った粗大ごみシールは綺麗にはがされていました。
この一件は、本当に悔しい経験でした。しかし、モノとの別れ方、そしてご近所付き合いの難しさについて深く考えさせられる良い機会にもなりました。思い出が詰まったものであればあるほど、最後まで自分の手で丁寧に見送ることの大切さを学びました。シール代は勉強代だったと、今では思うようにしています。この経験のおかげで、私たちはモノも人間関係も、以前より少しだけ大切にできるようになった気がします。
著者:富伊 凛/30代女性/2016年、2020年生まれの兄妹の母。仕事と育児の両立に苦戦し、離職を決意。都会暮らしに疲れ果て、地方移住をもくろむ。趣味はベランダ園芸。嫌いなものは、花につく悪い虫と、雨の日の電動チャリ走行。
イラスト:はたこ
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年8月)
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