夫・守の言葉をきっかけに、同僚との間に溝ができたと感じて会社を退職した沙織。息子が生まれると、守は「家族のため」と言いながらも細かいルールで沙織を諭すようになります。その優しさに、沙織は次第に息苦しさを感じていきました。
そんなある日、元同僚の恵美と偶然再会します。彼女から、守が「沙織は産後うつだから会えない」と話していたこと、そして同僚は悪口など言っていなかったことを聞かされました。これまでの違和感が、夫への疑念に変わっていきます。
その夜、守に確かめると、「沙織を退職に追い込んだ同僚のデタラメだ」と強い口調で反論。「俺を信じられないのか?」と悲しそうに問い詰められ、沙織はどちらを信じればいいのかわからなくなってしまいます。
悩んだ沙織は、お隣の大山さんの助言もあり、社会とのつながりを取り戻すために再就職を決意。守は「母親以上に必要なものなんて子どもにはない」と反対しますが、沙織は自分の意思を貫くことにしました。
しかし、面接の前日に、あったはずのスーツが消えていました。守に尋ねると、彼は「破れていたから」と、沙織のスーツを処分していたのです。
「これじゃもう使えないね」と初めて見るような冷たい笑顔……。さらに守は「明日有給取ったから3人で買い物に行こう」と告げます。伝えていないはずの面接日を知っていた夫に、沙織は義母から話が漏れたのかとあわてて電話をかけます。しかし、義母は「何も知らない」と否定。ますます得体の知れない恐怖に、沙織は震えるのでした。
結局、面接はキャンセルし、3人で買い物へ。しかし、買い物中も、沙織の頭からは守がいったいどうやって面接のことを知ったのかということが頭から離れませんでした。
どうして…?帰宅時に目撃した衝撃の現場
面接を受けるはずだった日、夫の守は有給休暇を取り、家族3人で買い物に出かけました。しかし買い物中も、妻の沙織は「守はいったいどうやって面接の日を知ったのだろう」と、そのことばかり考えてしまいます。
そしてふと、面接のことはお隣の大山さんも知っている、と思い出します。
沙織は思うままに「隣の大山さんと話したりすることはある?」と尋ねると、守は「あいさつを交わす程度で、ほとんど会うこともない」と否定しました。
それを聞き、沙織はほっとします。自分の相談に乗ってくれた大山さんが、守に話すわけがありません。自分が混乱しているだけなのだと、改めて思うのでした。
日曜日。スーパーで買い物をしながら、沙織はこれからの計画を再確認します。月曜日に荷造りをし、火曜日に家を出るのです。今度こそ守に悟られないようにしなければと、気を引き締めました。
しかし帰宅すると、マンションの廊下で息子の晴人を抱いた守が、隣の大山さんと親しげに話している姿が目に飛び込んできました。
あいさつ程度だと言っていたのに……。沙織は「どうして2人が……!?」と愕然としました。
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パートナーとの間に、ふとした心のすれ違いを感じた経験は大小あれど、誰しもあるのではないでしょうか。忙しい毎日の中では、つい大切な会話が後回しになり、小さな誤解が生まれてしまうことも。ですが「きっと大丈夫」と思い込む前に、その小さな違和感に向き合うことが、2人の関係を立て直すための大切な一歩になるのかもしれませんね。