「陰キャはおばさん担当なw」見下されていたけれど…
取引先との会食に、上司の命令で参加することになった僕。
お相手は“美女揃い”と評判の企業で、先輩たちはまるで合コン気分。
「陰キャのお前は、あのおばさん担当な(笑)」
そう言って笑う先輩に、僕は苦笑いで返すしかありませんでした。
でも、相手の女性に罪はない。
せっかくのご縁だからと、丁寧に挨拶をしました。
「今日はよろしくお願いします」
「こちらこそ。皆さんがどうしてもと言うので、ご一緒させていただいたの」
その女性は控えめながらも、知的で上品な雰囲気。
年上だからといって“おばさん”と呼ぶこと自体、失礼だったと気づかされました。
美女たちを相手に、酔いが回るにつれ下世話な冗談や自慢話ばかりする軽薄な先輩たちとは対照的に、 僕はその女性と穏やかに会食を楽しみました。
仕事の話から人生観まで、どの言葉にも経験の深みがあり、学ぶことばかりでした。
「あなたなら、娘のプロジェクトを任せられるわ」
数日後、取引先との大規模プロジェクトの打ち合わせに向かうと、そこにはあの女性がいました。
なんと、彼女は取締役の妻であり、プロジェクト責任者の補佐も務めていたのです。
「このプロジェクトのメイン担当は、佐藤さん(僕)にお願いしたいと思っています」
突然の指名に、先輩が慌てて食い下がります。
「なぜ俺じゃないんですか!?」
女性は静かに答えました。
「先日の会食で、皆さんの様子を見ていました。
誰に対しても誠実に耳を傾ける姿勢――仕事において、私が最も大切だと感じていることです」
そして僕の方を見て、やわらかく笑いました。
「それに……あなたなら、娘のプロジェクトを任せられるわ。
この子も、あなたのような人と仕事をしたら成長できると思うの」
その瞬間、会議室が静まり返りました。
僕は思わず背筋を伸ばし、「全力で取り組みます」と答えました。
外見でも年齢でもなく、“誠実さ”が見抜かれる
後日、僕はチームリーダーとしてプロジェクトを進めることに。
会食でのあの時間が、信頼を築くきっかけになるなんて――。
人の価値を決めるのは、「どんな姿勢で人に向き合うか」だと、心から実感しました。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。