【医師監修】赤ちゃんの鼻水が出る原因と吸引するときの対処のポイント

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医師松井 潔 先生
小児科 | 神奈川県立こども医療センター 産婦人科

愛媛大学医学部卒業。神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神奈川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等、同総合診療科部長を経て現在、同産婦人科にて非常勤。小児科専門医、小児神経専門医、新生児専門医。
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助産師古谷真紀

一般社団法人産前産後ケア推進協会プロジェクトリーダー。大学病院勤務を経て、2015年より現職。妊娠中や産後の女性のココロとカラダの相談、ママパパ&赤ちゃんのちょっと気になるコトに日々応えています。

鼻垂れ赤ちゃん

 

今回は、赤ちゃんの鼻水が出やすい理由と家庭でできるケアについてお話しします。

 

 

赤ちゃんの鼻水が出やすい理由

呼吸をすると気道と呼ばれる空気の通り道(鼻・のど・口・気管など)にはさまざな異物が入ってきます。鼻は、鼻毛によって異物の侵入を防ぎ、粘液などによって異物を外に出すという仕組みが備わっています。


ウィルスや細菌がその仕組みをすり抜けて侵入すると鼻の粘膜が刺激され、炎症が起きたり腫れたりします。すると鼻づまりや鼻水が垂れるなどの症状が起こります。鼻水にはウィルスや細菌を外に追い出す役目があります。ホコリ、ハウスダスト、ダニ、ペットの毛などが鼻に入って鼻の粘膜が刺激されるとアレルギー反応を起こして鼻水が垂れることもあります。

 

赤ちゃんの鼻の中は狭く、鼻と耳をつなぐ耳管が大人に比べると短く太く水平のため、ウイルスや細菌が入りやすい構造になっています。赤ちゃんは鼻毛が生え揃っていないために異物の侵入を防ぎきれず、温度や室温、環境の変化によって鼻水が出やすい特徴があります。
 

 

鼻水の性状からわかること

・透明でサラサラした水っぽい鼻水
水溶性鼻汁(すいようせいびじゅう)というもので、風邪の引き始めに出やすいです。

 

・黄色や緑色でドロドロした鼻水
ウイルスや細菌と戦うために血液中から出てきた白血球などの成分とウイルスや細菌の死骸を含んだものです。薄い黄色の鼻水は鼻水が出始めてから数日間経過したころに出てきたり、濃い黄色や緑色で粘り気が強い鼻水は膿性鼻汁(のうせいびじゅう)と呼び、においがすることもあります。風邪をひくと大なり小なり副鼻腔炎を起こしているものです。

 

 

鼻水が詰まることで生じる症状と病気

鼻水が詰まると呼吸がしづらいだけでなく、哺乳がしにくくなったり、他の病気を引き起こします。鼻水が出ていて発熱(37.5度以上)している、鼻水が出ていて母乳や育児用ミルクを普段のように飲めない、黄色や緑色の鼻水が1週間以上出ている場合は、小児科や耳鼻科を受診しましょう。

 

・じょうずに母乳や育児用ミルクを飲めなくなる
鼻詰まりが起こると呼吸しづらいため、呼吸しながら哺乳する赤ちゃんにとっては哺乳しにくくなります。赤ちゃんが横たわることで鼻詰まりが起こる場合は、横抱きではなく縦抱きで授乳すると呼吸がラクになることもあります。鼻詰まりが続くと苦しくて泣き、泣き続けることで鼻が詰まり、さらに不機嫌になることもあります。鼻詰まりや鼻水の症状が起きて、普段のように哺乳ができないときは、小児科や地域の助産師へ相談しましょう。

 

・目やにが出たり、まぶたが腫れる
鼻と目の空間は、鼻涙管(びるいかん)という管でつながっていますが、鼻が詰まると鼻水や涙が逆流して目やにが多くでたり、まぶたが腫れることがあります。

 

・中耳炎を起こしやすい
鼻と耳の空間は、耳管(じかん)という管でつながっていますがウイルスや細菌を含む鼻水が耳管を通って中耳にたどり着くと、中耳で炎症を起こすことがあります。

 

・副鼻腔炎(蓄膿症)
鼻の穴のなかを鼻腔(びくう)といいます。鼻腔の周りには、鼻腔につながる左右対称の骨で囲まれた空洞があり、この空洞部分を副鼻腔(ふくびくう)と呼びます。

 

副鼻腔炎(蓄膿症)とは、副鼻腔の粘膜に細菌やウイルスが感染することで炎症が起こり、鼻詰まりや鼻水、痰、咳という呼吸器症状と、発熱、頭痛、顔面の痛みなどを伴う病気です。通常は2週間以内に治りますが、3カ月以上続く場合は慢性副鼻腔炎といいます。

 

・後鼻漏(こうびろう)
鼻水が鼻の穴の方向ではなく、のどのほうへ流れることを後鼻漏といいます。後鼻漏が起きると息苦しいために哺乳量が減ったり、寝ているときに呼吸が苦しくなったり咳が出たりします。赤ちゃんの鼻水がのどへ流れて痰がからんだような咳をしている場合は後鼻漏です。後鼻漏は中耳炎の原因になることもあります。

 

 

家庭でできる鼻水へのケア

鼻詰まりや鼻水の症状を和らげるために、赤ちゃんは自分で鼻水をかめないので大人が取り除いてあげることが大切です。

 

・部屋を加湿して、綿棒やティッシュ、ガーゼなどでやさしく拭き取りましょう。
空気の乾燥を防ぐことで鼻の通りがよくなり、呼吸をしやすくなります。鼻の粘膜を傷つけないように、やさしく拭き取りましょう。自力で鼻がかめない月齢や年齢の間は、大人が鼻の下にティッシュを押し当てて下方向へ引っ張るだけでも、鼻水を取り除くことができます。沐浴やお風呂のときにでてくる鼻水をこまめにふき取るだけでも効果的です。鼻水がネバネバしている場合は、沐浴やお風呂のときに鼻に蒸しタオルを当てた後のほうが取りやすくなります。

 

・家庭内での感染を防ぎましょう。
家庭内での感染を完全に防ぐことはなかなか難しいですが、以下のことに気を付けるとよいでしょう。

 

鼻水にはウイルスや細菌などが含まれているので、上のお子さんなど同居する家族への感染を防ぐために鼻水の付着した綿棒やティッシュ、ガーゼをそのまま放置しないように気を付けましょう。ゴミ箱に捨てる、外出先であればビニール袋に入れるなど、取り除いた鼻水に再度触れることがないように工夫しましょう。逆に、上のお子さんや同居する家族が鼻をかんだ後のティッシュなどに赤ちゃんが触れないようにも気をつけましょう。親は鼻水を取り除いたらせっけんと流水で手を洗いましょう。

 

 

鼻水専用の吸引器を使用するときのポイント

必ず購入しなければならないものではありませんが、鼻詰まりや鼻水の症状を繰り返す場合には、鼻水専用の吸引器を購入して使用してもよいでしょう。
 

赤ちゃんの鼻水を取り除く吸引器には、スポイト式、ストロー式、電動式など多くの種類があります。どのタイプが優れているというものではないので使いやすいものを使いましょう。

 

・吸引の圧は弱めに、吸引器の先端は顔の面に垂直方向に挿入する。
赤ちゃんの鼻の中は狭くて、デコボコの入り組んだ構造です。ネバネバした鼻水は鼻の穴とほぼ水平方向の一番奥にたまっています。吸引器の先端は、鼻の穴に対して下から上へ突っ込むのではなく顔の面の垂直に挿入しましょう。挿入しながら少しずつ角度を変えると、鼻水を吸引しやすいポイントが見つかるので、ゆっくり少しずつ吸引しましょう。吸引するときの圧は弱めに設定して、鼻の粘膜を傷つけたり、強く圧迫しないように気をつけましょう。強い圧で一気に吸い取らないでください。もし、鼻血が出た場合は、その日は吸引を控えて、翌日以降におこないましょう。


・吸引するときは赤ちゃんの頭を固定して、安心と安全を心がけましょう。
吸引するときに、赤ちゃんの頭を固定しないと、吸引器の先端の動きが安定せず、鼻の粘膜を傷つけてしまう可能性があります。寝かせたままでも、抱っこしたままでも、頭が固定できればどのような姿勢でもかまいません。赤ちゃんが鼻水の吸引に苦痛を感じさせないように、「鼻水取るとスッキリするよ」などやさしく声をかけながらおこないましょう。

 

 

まとめ

鼻水はこまめに取り除くことが大切です。鼻水が出ていて発熱(37.5度以上)している、鼻水が出ていて母乳や育児用ミルクを普段のように飲まない、黄色や緑色の鼻水が1週間以上出ている場合は、小児科あるいは耳鼻科を受診しましょう。

 

【参考】
日本小児科学会 こどもの救急
日本耳鼻咽喉科学会HP 子どものみみ・はな・のどの病気 Q&A
日本アレルギー学会HP

 

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