【医師監修】赤ちゃんのスキンケアで大切なこととは? 洗い方や保湿などの方法について

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医師松井 潔 先生
小児科 | 神奈川県立こども医療センター 産婦人科

愛媛大学医学部卒業。神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神奈川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等、同総合診療科部長を経て現在、同産婦人科にて非常勤。小児科専門医、小児神経専門医、新生児専門医。
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助産師古谷真紀

一般社団法人産前産後ケア推進協会プロジェクトリーダー。大学病院勤務を経て、2015年より現職。妊娠中や産後の女性のココロとカラダの相談、ママパパ&赤ちゃんのちょっと気になるコトに日々応えています。

保湿されている赤ちゃん

 

今回は、新生児期から始める正しいスキンケアについてお話しします。

 

 

赤ちゃんの皮膚の特徴

皮膚は表皮、真皮、皮下組織で構成されています。皮膚表面は皮脂で覆われて、十分に水分が保持されている状態が正常な皮膚です。赤ちゃんの皮膚の構造は、大人とほぼ同じですが、全体的に皮膚は薄く表皮の厚みは大人の1/2~1/3の薄さしかありません。そのため、こすったりせっけんで洗いすぎるなどの刺激に弱く、皮膚のバリア機能が弱いという特徴があります。

 

新生児期(生後0~28日目)~生後2カ月ごろまでは、一時的に性ホルモンが増加し皮脂の分泌が盛んになるため、頭や顔が脂っぽくなり、新生児痤瘡(しんせいじざそう)や脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)が起こりやすい時期です。


生後3カ月を過ぎると急激に皮脂の分泌量が減り、最も乾燥しやすいカサカサの肌になります。この時期にアトピー性皮膚炎になる子も多く、あせもやよだれ、おむつによってかぶれやすくなります。この時期は皮脂だけでなく、皮膚を保湿するアミノ酸やセラミド(角質層細胞間物質)も少ないため、水分の保持量が少なく、十分な保湿機能やバリア機能が弱まっている状態です。


汗を分泌する汗腺は、赤ちゃんも大人もほぼ同じです。大人より体の小さい赤ちゃんは、皮膚の面積に対する汗腺の密度が高いため、汗をかきやすいという特徴もあります。

 

 

保湿が必要な理由

月齢や年齢によって皮膚は変化していきます。皮膚が乾燥して皮膚のバリア機能が低下すると乳児湿疹やアトピー性皮膚炎を発症しやすくなります。また、湿疹ができた部位や傷ついた部位からアレルゲンが体内に侵入すると食物アレルギーや気管支喘息などのアレルギー疾患を発症する場合があります。

 

生後間もない時期から保湿をすることは肌のうるおいを保ってバリア機能を補い、湿疹やアトピー性皮膚炎の予防または症状の軽減になります。
 

 

洗い方の基本

正常な皮膚を保つために皮膚を清潔に保つことが大切です。

 

①泡でやさしく、素手で洗う
固形せっけんや液体せっけんを使用するときは、そのまま直接体につけるのではなく泡立てて、泡でやさしく汚れを浮かせながら素手で洗うと良いです。泡タイプのボディソープを使用しても良いです。ガーゼやタオルは繊維が荒いため、皮膚を摩擦して刺激することで皮膚のバリア機能が低下する可能性があります。湿疹がある部位も泡でやさしく洗いましょう。 


皮脂の分泌が多い部位(頭、おでこ、鼻)を泡でやさしく、手指の腹でなでるように洗いましょう。顔を洗うときは、目・鼻・口・耳にせっけん成分が入らないように頭を起こしながらすすぎます。首から足までは皮膚の重なっている部分やくびれた部分も泡でやさしく洗いましょう。

 

②洗い流した後は、押し拭きする。
洗い終わったら、シャワーなどでお湯をかけてすすぎ、乾いたタオルで包み込むように押し当て水分を拭き取りましょう。

 

③沐浴や入浴の後に保湿する
押し拭きのあとに皮膚が乾燥しないうちに保湿をしましょう。

 

 

保湿の基本

入浴後に保湿しないと、入浴前よりも皮膚は乾燥します。沐浴や入浴した後5分以内を目安に保湿剤を塗ると効果的です。保湿剤はたっぷりと皮膚にのせるように塗りましょう。

 

【医師監修】赤ちゃんのスキンケアで大切なこととは? 洗い方や保湿などの方法について

 

 

保湿剤の使用量の目安

保湿に適した量は大人の手のひら2枚分の面積に対して約0.5gです。適切な量を清潔な手に出し、塗る部位に点在させ、手のひら全体で広げるように塗ります。保湿剤を塗布した部位がテカっと光りティッシュペーパーが付着する程度が適量です。

 

・チューブ
大人の人差し指の先端からひとつ目の関節までの長さを絞り出した量が約0.5g


・ローション
 1円玉くらいの大きさに出した量が約0.5g


・瓶
大人の人差し指の先端からひとつ目の関節の1/2まで長さをすくった量が約0.5g

 

保湿剤の量

 

 

保湿剤の種類

保湿剤は季節や塗る部位、時間帯などに応じて塗布し続けることが大切です。夏はベタつきの少ないローションタイプ、春や秋は水分が多く伸びのよいクリームタイプ、冬は油分の多い軟膏やクリームがおすすめです。

 

【軟膏】
油脂性軟膏は、皮膚を保護して柔らかくする作用があります。刺激性が低いので皮膚の状態を問わず使用できますが、ベタつきがあり洗い流しにくいです。しっかり保湿したい場合に時間に余裕があるときや、沐浴や入浴後に使用するといいでしょう。

 

【クリーム】
油分が多いタイプと水分が多いタイプがあります。ベタつきが少なく洗い流しやすいです。油分が多いタイプは空気が乾燥する冬に適しています。水分が多いタイプはどの季節でも使用可能です。しっかり保湿したい場合に、時間に余裕があるときや、沐浴や入浴後に使用するといいでしょう。

 

【ローション】
頭皮や背中など広範囲を保湿する場合によく伸びるタイプのローションはおすすめです。蒸し暑い夏は使用感がさっぱりしているタイプのローションが適しています。

 

【ワセリン】
 皮膚の表面をしっかりと保護してくれます。硬くて塗りづらいため、沐浴や入浴後の体が温かく、皮膚表面に水分が残っているうちに塗りましょう。

 

 

保湿を続けても湿疹などの症状がひどい場合は?

保湿剤を1日2~3回塗る習慣を続けると、しっとりとした正常な皮膚になります。保湿をしても湿疹がひどい、かぶれて皮膚が赤くなっている、ジュクジュクしている、黄白色のかさぶたがある、赤いブツブツができているなどの症状が続く場合は小児科もしくは皮膚科へ受診しましょう。病院で処方される医療用の保湿剤やステロイドを適切に使用することで早く治すことができます。


 「ステロイドは危険」「ブツブツ・ジュクジュクしているのはデトックスの証拠」「アトピー性皮膚炎は自然治癒力や免疫力を高めれば治る」などの情報がwebやSNS上に出回っていますが、医学的に正しい情報ではないので気をつけましょう。

 

 

まとめ

清潔と保湿を続けることで赤ちゃんの皮膚のうるおいを保ってバリア機能を補い、湿疹やアトピー性皮膚炎、その他のアレルギー疾患の症状を軽減することができます。清潔と保湿を毎日の習慣にしましょう。

 


■参考文献
一般社団法人日本アレルギー学会アトピー性皮膚炎ガイドライン専門部会:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2015.協和企画、2015

公益社団法人日本助産師会発行冊子「助産師、保健師、看護師<指導者>のための大切な新生児期からのスキンケア」監修 大矢幸弘(国立成育医療研究センター生体防御系内科部アレルギー科医長 医学博士 初版2017年


■参考URL
日本アレルギー学会HP
日本皮膚科学会HP
環境保全再生機構HP パンフレット 知っておきたい乳児のスキンケア

 

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