【医師監修】妊婦が胃腸炎になったらどうすればいい?胎児への影響は?対処法と治療法について
嘔吐や下痢などの症状が現れる胃腸炎。妊娠中に胃腸炎にかかるとママがつらいのはもちろんのこと、赤ちゃんへの影響も心配ですよね。胃腸炎には複数の種類があり、発症する原因もさまざまです。今回は、妊婦さんが胃腸炎になった場合の、赤ちゃんへの影響や対処法についてお話しします。
- 【目次】
- ・胃腸炎の種類・感染経路・症状
- ・胃腸炎による赤ちゃんへの影響
- ・妊娠中の胃腸炎 治療法と対策
- ・まとめ
胃腸炎の種類・感染経路・症状
胃腸炎には感染によるものと、非感染のものがあります。それぞれの感染経路や主な症状についてご説明します。
●感染性胃腸炎
細菌、ウイルス、寄生虫などに感染して発症します。嘔吐・下痢、発熱、腹痛などの症状が現れます。
・ノロウイルス
生の貝類などを食べることで感染します。発症すると嘔吐や下痢などが現れ、周囲の人にも接触感染する恐れがあります。毎年冬ごろに感染が多発します。
・カンピロバクター
夏ごろに感染が多い細菌で、下痢や発熱などの症状を引き起こします。感染経路は、肉類を加熱不足の状態で食べることとされています。また、ペットの犬や猫から感染した例もあります。
・サルモネラ菌
牛、豚、鶏などの腸管内に存在する細菌です。感染すると嘔吐や下痢など、食中毒の症状を引き起こします。犬や亀などのペットからの感染も報告されています。
・大腸菌群
大腸菌には数多くの種類がありますが、中でも病原性をもつ腸管出血性大腸菌感染症(O157)には注意が必要です。腸管出血性大腸菌は生の肉やレバーなどの内臓を食べることで感染し、重症化すると危険な細菌です。感染力も強く、集団感染も多数発生しています。初期症状として、激しい腹痛や下痢、血便などが挙げられます。
●非感染性の症状
胃腸炎は感染以外の原因によって引き起こされるものもあります。妊娠中に非感染性の胃腸炎を発症する原因として、次のような要因が挙げられます。
・つわり
つわりで繰り返し嘔吐してしまうと、嘔吐物によって胃の粘膜が傷つき、食道炎につながる恐れがあります。また、妊娠中は食欲が増す「食べつわり」を経験するママも多く、暴飲暴食を繰り返すと、胃腸がダメージを受ける原因になります。
・ホルモンバランスの変化
妊娠中はプロゲステロンと呼ばれる女性ホルモンの分泌量が上昇します。この影響で、消化管の筋肉が弛緩し、消化機能が弱まるケースも考えられます。消化管の運動が低下すると、胃酸が逆流し、炎症につながる可能性があります。
・ストレス
ストレスによって自律神経が乱れると、胃酸過多を引き起こし、炎症を起こすおそれがあります。妊娠中は、ストレスを感じる場面が多いものです。ストレスや疲れの溜め過ぎには要注意です。
胃腸炎による赤ちゃんへの影響
胃腸炎は数日で自然に治まることが多く、通常であれば、赤ちゃんへの影響は心配ないとされています。とはいえ、嘔吐や下痢によって、飲み物・食べ物を思うように摂取できない場合、脱水症状や体重低下が心配です。少しずつでも水分や栄養をとるようにしましょう。
妊娠中の胃腸炎 治療法と対策
妊娠中に胃腸炎を発症したらどのように対処すればよいのでしょうか? 治療と自分でできる対処法についてご説明します。
●胃腸炎で病院を受診する目安
以下のような症状がある場合は、病院を受診しましょう。
・下痢や嘔吐が続き、水分や食べ物を摂取できない
・下痢、嘔吐のほかに、発熱や腹痛などの症状がある
・数日内に非加熱の肉や魚を食べた
・おなかの張りや胎動の様子などに違和感がある
特に妊娠中の胃腸炎は、つわりとの判別がつきにくいものです。吐き気や嘔吐などを、つわりのせいと決めつけないことが大切です。
●何科を受診すればいい?
産婦人科では対応が難しい場合があります。胃腸炎は細菌などへの感染が疑われるため、他の妊婦さんから隔離の措置を取られることもあります。まずはかかりつけの産婦人科に電話をし、診察が可能か確認しましょう。急を要する場合は、最寄りの内科や消化器科などを受診してもよいでしょう。感染の疑いがあることと、妊娠中であることを忘れずに伝えましょう。
●治療は病院の処方薬で
胃腸炎はほとんどの場合、対処療法のみで自然に治癒すると言われています。妊娠中でも使用できる整腸剤などが処方されることもありますが、薬の処方など特段の治療がないまま様子を見る場合もあります。症状が重い場合は、抗菌剤を用いたり、点滴によって水分補給をおこなったりするケースもあります。いずれにしても、原因と症状に合わせて適切な治療を受けることが大切です。くれぐれも市販の胃腸薬を自己判断で服用することは、避けましょう。
●自宅でのケアと予防対策
自宅では次のような点に気を付けて過ごしましょう。
<胃腸炎の症状があるときのケア法>
・こまめに水分補給をする
・脂っこい食べ物を控え、お粥や卵、大豆製品など、消化しやすい物をとる
・睡眠時間を十分に確保し、身体を休める
<日頃の予防対策>
・肉、魚介類は十分に加熱し、生ものが触れた包丁やまな板はきちんと洗う
・帰宅時や食事前の手洗い・うがいを徹底する
・ペットの糞尿には直接触れない
・胃腸炎が疑われる人となるべく接触しない、他人の嘔吐物に触らない
さらに、日頃から適度な運動やバランスよい食事など健康的な生活を心がけて、胃腸の調子を整えていきましょう。趣味など自分の好きなことをしてストレス解消することも大切ですね。
まとめ
妊娠中の胃腸炎には感染性と非感染性のものがあります。細菌やウイルスに感染を予防するために、生の肉や魚を食べるのは避けましょう。また、日頃からストレスを溜め過ぎず、健康的な生活で胃腸の調子を整えることも大切です。