【医師監修】 妊娠中に走ってしまったときの注意点について

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医師太田 篤之 先生
産婦人科 | おおたレディースクリニック院長

順天堂大学卒後、派遣病院勤務を経て、平成22年より順天堂静岡病院周産期センター准教授就任。退職後、平成24年8月より祖父の代から続いている「おおたレディースクリニック」院長に就任し現在に至る。

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助産師古谷真紀

一般社団法人産前産後ケア推進協会プロジェクトリーダー。大学病院勤務を経て、2015年より現職。妊娠中や産後の女性のココロとカラダの相談、ママパパ&赤ちゃんのちょっと気になるコトに日々応えています。

走る女性のイメージ

 

「妊娠中につい走ってしまった」「運動不足だから走りたい」という妊婦さんのために、妊娠中に走ることを控えたほうがいい理由と妊娠中によくあるケースをお話しします。

 

 

妊娠中に走ることを控えたほうが良い理由

妊娠中に走ることを控えたほうが良い理由は以下のようなものがあります。

 

●転倒しやすく、頭やおなかをぶつける可能性がある。
母体には、妊娠前に経験したことのない体重や体型の変化、体の重心の変化が起こります。妊娠後期(妊娠28週以降)には、立ったときに自分の足元が見えづらいほどにおなかが大きくなります。

 

また、妊娠中は骨格を支える靭帯がゆるむため、体全体のバランスが不安定になりやすいです。靭帯がゆるむことは、大きくなる子宮のサイズに合わせて骨盤がクッション性のある動きをするため、妊娠中や出産時に役立ちます。しかし、足の裏の靭帯もゆるむため、妊娠前よりも偏平足に近づくことで、体重を支える足のバランスも悪くなります。
 
そして、妊娠中の生理的な体の変化によって、体全体のバランスが不安定になり、瞬発的な動きが鈍くなることから転倒しやすく、思わぬケガをする可能性があります。特に、おなかを強くぶつけた場合、常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)を起こすことがあります。常位胎盤早期剥離は、胎児に栄養や酸素を供給している胎盤が剥がれることで、胎児の脳性麻痺を引き起こしてしまうことや、死亡に至ることもあります。また、子宮内に大量出血することで、母体の生命も危険な状態となることがあります。もし、走って転んでおなかをぶつけた場合は、必ず産婦人科を受診しましょう。
 
●振動による腹部への刺激で子宮収縮の増加が起こる可能性がある。
妊婦さん本人は、子宮収縮をおなかの張り(おなかが固くなる)やおなかや腰の痛みとして感じます。子宮収縮に伴い、性器出血や破水が起こることもあり、流産や早産を引き起こす可能性があります。もし、走ってしまった後におなかの張りや性器出血、破水があれば、早めに産婦人科へ受診しましょう。
 
●子宮への血流量が低下して、結果的に胎児が酸素不足になる可能性がある。
息が上がるほどに走り続けると、全身の筋肉への血流量が増加するために、子宮への血流量が低下して、結果的に胎児への酸素供給が滞る可能性があります。


胎動が感じられる週数に入っていれば、妊婦さん本人は走り終えた後に、胎動が減少したことで気づくかもしれません。走った後の30分間で1~2回以上の胎動が出現すれば正常と判断してよいでしょう。もし、胎動が少ない気がするときは、早めに産婦人科へ受診しましょう。


妊娠前から走る習慣がなかった方は、自身の体への負担も大きくなるため、妊娠中の運動不足の解消を目的として走ることを取り入れるのはやめましょう。
 

 

妊婦さんがうっかり走ってしまったときは?

【ケース1】妊娠に気づかず走ってしまったけど大丈夫?
妊娠していることに気づかず、うっかり走ってしまったことを思い出して妊娠への影響を心配される妊婦さんもいますが、正式に妊娠していると判明したあとの経過が順調であれば、特に気にする必要はありません。


産婦人科診療を専門としない人が作成した書籍や雑誌、webの情報のなかには、「妊娠初期に走ると流産の原因となる」と書かれていることがありますが、このような情報も気にする必要はありません。妊娠初期(妊娠0~15週)に起こる流産の最も多い原因は、受精卵の染色体異常です。妊娠初期の流産は、走ったことが直接の原因ではありません。

 

【ケース2】体重コントロールのためのジョギングやランニングは大丈夫?
妊娠中の万が一の事故やケガを未然に防ぐため、腹部に振動が加わるもの、転びやすく外傷を受けやすい運動は避けたほうが良いため、大丈夫とは断言できません。


妊娠中に運動したい場合は、まず担当の医師や助産師へ相談しましょう。妊娠中に運動して良い条件は、妊娠12週以降で正常な妊娠経過であること、妊婦健診で医師や助産師から運動を禁止されていないことです。


妊娠前から運動習慣がある場合は、基本的には中止する必要はありませんが、妊娠前よりも運動量の制限は必要です。また、運動習慣のない妊婦さんが、体重管理のために突如負荷のかかる運動をし始める必要もありません。


全身運動として、走るのと同じような効果がある歩行がおすすめです。走ることが得意な妊婦さんは、走るよりもペースダウンしてウォーキングを。運動習慣がない妊婦さんは、少しずつ散歩程度から始め、歩く習慣を続けるだけでも十分な運動になります。

妊娠中の運動については、医師や助産師、運動指導をするトレーナーから専門的な指導と助言を受けましょう。特に高血圧、糖尿病、肥満などの妊娠中の合併症の予防と治療を目的とする運動については、主治医と相談して十分に注意しておこないましょう。
【参考】日本臨床スポーツ医学会 妊婦スポーツの安全管理基準(2004年)
 

【ケース3】上の子どもを追いかけるのに、つい走ってしまうけど大丈夫?
走ることで思わぬ転倒やケガをする可能性があります。「つい走ってしまう」状況をなるべく減らしましょう。「つい走ってしまった」直後は、おなかの張りや胎動が普段と変わりないかを確認しましょう。

 

 

まとめ

走ることが妊娠へ影響するかどうかは、走った前後の妊娠経過や走った状況、運動能力などによって異なります。走った後、体調に変化が起きたとき、胎動がいつもより少ないとき、転倒したときは必ず受診しましょう。そして運動したいという方は、全身運動としては効果が同じである歩行で、スピードを調整しつつ対応していきましょう。

 

【参考】
産婦人科診療ガイドライン産科編2017
妊婦スポーツの安全管理基準 日本臨床スポーツ医学会誌 Vol. 13 Suppl., 2005
日本医療機能評価機構 再発防止委員会 リーフレット 常位胎盤早期剝離

 

 

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