妊婦健診で「卵巣が腫れている」と言われたけど大丈夫?

この記事の監修者

医師太田 篤之 先生
産婦人科 | おおたレディースクリニック院長

順天堂大学卒後、派遣病院勤務を経て、平成22年より順天堂静岡病院周産期センター准教授就任。退職後、平成24年8月より祖父の代から続いている「おおたレディースクリニック」院長に就任し現在に至る。

この記事の監修者

助産師古谷真紀

一般社団法人産前産後ケア推進協会プロジェクトリーダー。大学病院勤務を経て、2015年より現職。妊娠中や産後の女性のココロとカラダの相談、ママパパ&赤ちゃんのちょっと気になるコトに日々応えています。

妊婦健診で「卵巣が腫れている」と言われたけど大丈夫?

 

今回は、妊娠初期に「卵巣が腫れている」と指摘されたときに知っておいてほしい知識についてお話しします。

 

「卵巣が腫れている」とはどういう状態?

卵巣は、子宮の左右に1つずつあり、通常は2~3cm程度の大きさです。卵巣内に水や血液などの分泌物がたまって通常のサイズよりも大きくなった状態を「腫れている」と表現します。

 

妊娠初期(0~15週)は、卵巣はホルモンの影響によって自然に腫れている状態になりやすいため、妊婦健診で「卵巣が腫れている」と指摘され、「次回の健診まで様子を見ましょう」と言われることは比較的多いケースです。

妊婦健診で「卵巣が腫れている」とわかった場合は、超音波検査で自然な腫れなのかを観察して、妊娠や出産に影響を与える腫れと疑う場合は、MRI検査をおこなって診断します。

 

妊娠中に卵巣が腫れている状態は自然に治る?

妊娠中に卵巣が腫れている状態は、自然に治るものと、自然に腫れが引かず手術が必要となるものがあります。 妊娠に伴う生理的な変化によって卵巣が腫れている場合は、その後1カ月ほど経過すれば、自然に腫れは引いていきます。

 

「卵巣が腫れている」と指摘されても自覚症状はないことが多いでしょう。体調がよければ、普段どおりの生活をしてかまいません。体調が優れないときは、妊娠中である自分を労わるように生活しましょう。もし、突然の激しい腹痛や性器出血が起きた場合は、直ちにかかりつけの産婦人科を受診しましょう。

 

卵巣の腫れが自然に引かない「卵巣腫瘍」とは

さまざまな原因によって、卵巣が通常のサイズよりも大きく腫れている状態を「卵巣腫瘍(らんそうしゅよう)」と呼びます。

 

卵巣は通常、骨盤内にあるため、大きく腫れても、にぎりこぶしほどの大きさになるまで、目立った自覚症状がないことが多いです。そのため、卵巣腫瘍は妊婦健診や健康診断で偶然発見されることがよくあります。

妊娠初期に卵巣が腫れていると指摘を受けたあと、週数を重ねても自然に腫れが引かない場合は卵巣腫瘍ができていると考えられます。

 

卵巣腫瘍は、良性腫瘍のほか、卵巣がんである悪性腫瘍、良性と悪性の中間となる境界悪性腫瘍の3つに大きく分かれます。良性でも悪性でも、卵巣の腫れが続いたり、サイズが大きくなったりする場合は手術をします。妊娠中の手術は、卵巣腫瘍の部分だけ切り取りますが、状況によっては片側の卵巣を全部切除することもあります。卵巣は2つあるので、もう一方の卵巣が残っていれば、次回の妊娠は可能で、妊娠する確率も変わりません。

 

妊婦健診で発見されるほとんどのケースは、良性であることが多く、卵巣腫瘍のおよそ80%は良性の「卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)」で、水や血液などが卵巣の中にたまって起こります。

 

妊娠初期に、卵巣が自然に腫れている状態も、「ルテイン嚢胞(ルテインのうほう)」(黄体嚢胞)と呼ばれる良性の卵巣嚢腫の1つです。胎盤から分泌されるhCG(絨毛性性腺刺激ホルモン)が卵巣を刺激して、卵巣の黄体という部分に水がたまり、自然に腫れている状態となります。胎盤が完成する妊娠16週ごろにはhCGの分泌が低下することで、卵巣の腫れは自然と消失するので、手術などの治療は必要ありません。

その後の妊娠経過が順調であれば、経腟分娩で出産することが可能です。ただし、一般的な妊婦さんと同じように、逆子や前置胎盤などの合併症を理由に帝王切開で出産することはあります。

 

悪性の卵巣腫瘍の場合は、妊娠週数と症状や進行度によって、今回の妊娠への影響も考えながら治療方法を検討します。妊娠初期(0~15週)は、赤ちゃんの体の器官ができる大事な時期のため、この時期におこなう精密検査や治療は胎児に異常や奇形を起こす危険があるため慎重におこないます。妊娠中期(16~27週)から妊娠後期(28週以降)に化学療法をおこなう場合は、おなかの中の赤ちゃんへの影響は少ないとされています。基本的に、経腟分娩で出産することは可能ですが、個々のさまざまな理由によって、帝王切開での出産となる場合もあります。

 

卵巣腫瘍は、良性でも、悪性でも、母体と赤ちゃんのそれぞれの危険性と利益を考えながら治療を進める必要があるので、担当医と十分に話し合いましょう。

 

卵巣腫瘍が妊娠や出産に与える影響

妊娠中に卵巣腫瘍がある場合、卵巣の根元から捻じれる「茎捻転(けいねんてん)」が起きたり、卵巣が破裂したりすることがあり、その際には緊急的に手術が必要です。

 

卵巣腫瘍を切り取らずそのままにしておくと、妊娠中は茎捻転が起きたり、卵巣が破裂したりする影響で、流産や早産を引き起こす可能性があります。出産時には、卵巣嚢腫が骨盤内にはまってしまい、分娩の進行を妨げる(赤ちゃんが産道を通るのを邪魔する)可能性があります。

 

また、悪性だった場合(卵巣がんだった場合)に治療せず放置していると、出産を終えるころにはがんがかなり進行した状態になる可能性があるため、妊娠経過の早い段階で手術など治療をしたほうが良いです。

 

卵巣腫瘍が赤ちゃんに与える影響

基本的に、卵巣腫瘍がおなかの中の赤ちゃんに直接の影響を及ぼすことはありません。もし悪性の卵巣腫瘍だとしても、がん細胞が胎盤や赤ちゃんへ転移することはありません。

 

まとめ

妊娠初期は、卵巣はホルモンの影響によって自然に腫れている状態になりやすいため、妊婦健診で「卵巣が腫れている」と指摘を受けつつも、「次回の健診まで様子を見ましょう」と言われることは比較的多いケースです。 自然に腫れが引かない卵巣腫瘍は、良性でも、悪性でも、母体と赤ちゃんのそれぞれの危険性と利益を考えながら治療を進める必要があります。担当医と十分に話し合いながら、妊娠中から治療を進めましょう。  

 

<参考>

・産婦人科診療ガイドライン産科編2017

・産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2017

・CardonickE, Iacobucci A. Use of chemotherapy during human pregnancy. Lancet Oncol 2004:5:283-291

・BakriYN Ezzat A, Akhtar M, Dohami II,Zahrani A. Malignantgerm cell tumors of the ovary:Pregnaney considerations. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol 2000 May;90(1):87-91

 

 

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