【助産師監修】つわりになりやすい人の特徴とは?体質・性格・生活習慣から見える傾向とセルフチェック法

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助産師関根直子

筑波大学卒業後、助産師・看護師・保健師免許取得。総合病院、不妊専門病院にて妊娠〜分娩、産後、新生児看護まで産婦人科領域に広く携わる。チャイルドボディセラピスト(ベビーマッサージ)資格あり。現在は産科医院、母子専門訪問看護ステーションにて、入院中だけでなく産後ケアや育児支援に従事。ベビーカレンダーでは、妊娠中や子育て期に寄り添い、分かりやすくためになる記事作りを心がけている。自身も姉妹の母として子育てに奮闘中。

【助産師監修】つわりになりやすい人の特徴とは?体質・性格・生活習慣から見える傾向とセルフチェック法

 

妊娠が分かった喜びと同時に、多くの女性が経験する可能性のあるものが「つわり(悪阻)」の辛さです。つわりは妊娠初期に多くみられますが、同じ妊娠でも、つわりの程度は人によって大きく異なります。なぜこのような違いが生まれるのでしょうか。今回はつわりになりやすい人の特徴を体質や性格、生活習慣の観点から詳しく解説し、自身の傾向を把握できるチェックリストもご紹介していきます。

 

 

つわりとは?妊娠初期に起こる自然な反応

つわりは、妊娠初期に多くみられる症状です。一般的には妊娠5~6週頃から始まり、妊娠12~16週頃まで続くことが多いですが、個人差が大きく、これよりも早く始まる人、遅くまで続く人、あるいは全く症状がない人もいます。約80%の妊婦が何らかのつわり症状を経験するとされており、妊娠における自然な生理現象の一つと考えられています。

 

なぜつわりが起こるのか?ホルモンバランスの変化が主因

つわりの発症メカニズムには複数の要因が関わっていますが、最も有力な説は「ホルモンバランスの急激な変化」です。

 

妊娠すると、胎盤から分泌されるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の濃度が急激に上昇します。このhCGは妊娠継続に不可欠なホルモンですが、同時に消化器系や神経系に影響を与え、吐き気や嘔吐を引き起こすと考えられているのです。

 

またプロゲステロン(黄体ホルモン)の増加も胃腸の働きを抑制し、消化不良や胃もたれの原因となります。エストロゲン(卵胞ホルモン)の変化も、嗅覚の敏感さや情緒の不安定さに関与しているとされているのです。

 

心因的な理由も原因の一つ

妊娠初期のあらゆる不安や疲労、周囲のサポート不足など、様々な心因的ストレス要因がつわりの症状を引き起こす、または悪化させるともいわれています。

 

吐き気・嘔吐が最も代表的な症状で、特に空腹時や朝起きた時に強く現れることが多いです。匂いがきっかけとなることもあり、今まで大丈夫だった香りや調理中の匂いで吐き気を感じたり胸焼けする場合もあります。

 

食欲不振・匂いに敏感になることで、特定の食べ物が食べられなくなったり、反対に特定のものしか受け付けなくなったりします。ご飯の匂いがダメになる人は特に多く、炊飯器を開けるだけで気分が悪くなるケースも珍しくありません。

 

倦怠感・眠気も頻繁に見られる症状で、普段より疲れやすくなったり日中でも強い眠気に襲われたりします。これらの症状により、日常生活に支障をきたすことも多いです。

 

よだれづわりは 唾液の分泌が過剰になる症状です。常に口の中に唾液が溜まり、吐き出さずにいられないこともあります。吐き気や嘔吐を伴う場合もあります。

 

その他: 頭痛、めまい、便秘など

 

つわりに「なりやすい人」の特徴を徹底解説

つわりの程度には個人差がありますが、特定の傾向を持つ人はより強く現れることが知られています。

 

体質的な要因

妊娠すると分泌されるホルモンの一つにhCG(human chorionic gonadotropin)があります。hCGは性腺刺激ホルモンと呼ばれ、黄体を刺激することで女性ホルモンの分泌を促します。妊娠初期のhCGによる感受性には個人差があり、同じhCG濃度でも反応の強さが異なります。hCGに対して敏感な体質の人ほど、つわり症状が強く現れやすいです。

 

自律神経が乱れやすい体質の人も要注意です。つわりは自律神経系の変化と密接に関わっており、普段からストレスや生活習慣の変化で自律神経のバランスが崩れやすい人は、妊娠によるホルモン変化の影響を受けやすくなります。

 

低血圧・冷え性の傾向がある人も、つわりが重くなる可能性があります。血行不良は胃腸の働きを悪化させ、消化器系の不調を招きやすくするためです。また体温調節機能が不安定な人も、ホルモン変化による体調不良を感じやすいとされています。

 

性格や精神的な傾向

意外に思われるかもしれませんが、性格的な特徴もつわりの程度に影響することが指摘されています。

 

真面目・几帳面・完璧主義な人は、妊娠による体の変化や生活リズムの乱れにストレスを感じやすく、そのストレスがつわり症状を悪化させる可能性があります。「こうあるべき」という思いが強い人ほど、思うようにいかない状況に精神的な負担を感じがちです。

 

ストレスに敏感な人、神経質なタイプも同様に、妊娠という大きな環境変化に対して過敏に反応しそれがつわりの症状として現れることがあります。心配性で細かいことが気になる性格の人は、妊娠に対する不安や心配事がつわりを増強させる要因となりやすいです。

 

生活習慣の影響

日常の生活習慣も、つわりの程度に大きく関わってきます。

 

不規則な睡眠・食生活を送っている人は、ホルモンバランスがより不安定になりやすくつわり症状が強く現れる傾向があります。夜更かしが多い、食事時間がバラバラ、栄養バランスが偏っているなどの習慣は、妊娠前から改善しておくことが重要です。

 

忙しいワークスタイル、交感神経優位な生活を送っている人も要注意です。常にストレス状態にあると、自律神経のバランスが崩れつわり症状が悪化しやすくなります。責任の重い仕事をしている、長時間労働が続いている、休息が取れないなどの状況は、つわりを重くする要因となります。

 

血糖値の変動もつわりの症状に影響する原因となります。一般的に妊娠すると血糖値が乱れやすくなると言われており血糖値を急激に上昇させる甘い物やジュースの接種は血糖値が急上昇した後に急降下しやすいので取りすぎには注意してください。

 

つわりの重さに差が出る理由とは?一卵性・多胎妊娠との関係も

つわりの程度に個人差が生まれる理由は複雑ですが、いくつかの要因が明らかになってきています。

 

一卵性双胎や多胎妊娠でつわりが重くなる理由

双子や三つ子などの多胎妊娠では、単胎妊娠と比べてつわりが重くなることが知られています。これは、胎児の数が多いほどhCGの分泌量が増加するためです。

 

一卵性双胎の場合、一つの受精卵が分裂して双子になるため胎盤の構造や血管の分布が複雑になり、ホルモンバランスがより不安定になりやすいとされています。また栄養や酸素の需要も倍になるため、母体への負担が大きくなりつわり症状も強く現れやすいです。

ホルモン量の個人差と胎盤の成長スピードの関係

同じ妊娠週数でも、hCGの分泌量や胎盤の成長スピードには個人差があります。胎盤は15~16週頃には出来上がるのが一般的ですが、胎盤の形成が早い人ほど急激なホルモン変化による影響を受けやすく、つわり症状が強く現れることが多いです。

 

また母体の代謝能力や解毒機能の個人差も、つわりの程度に影響します。ホルモンを効率よく処理できる人とそうでない人では、同じホルモン量でも症状の現れ方が異なってきます。

 

つわりが重い時の正しい対処法とやってはいけないNG対応

つわりが辛い時は、適切な対処法を知っておくことが重要です。間違った対応は、症状を悪化させる可能性があります。

 

医療機関に相談すべきサイン

以下の症状が現れた場合は、重症妊娠悪阻の可能性があるため速やかに医療機関を受診してください。

 

  • ・水分も摂取できないほどの嘔吐が続く場合は、脱水症状を起こす危険があります。尿量の減少、口の渇き、立ちくらみなどの症状も要注意です。医療機関で行われる尿検査において、脱水・飢餓状態の指標となるケトン体が陽性を示すと入院管理となることもあります。

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  • ・妊娠前の体重の5%以上の体重減少は妊娠悪阻の定義とされており、栄養不足による母体や胎児への影響が心配されます。

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  • ・発熱、意識朦朧、極度の脱力感などの症状が現れた場合は、緊急性が高いためすぐに医療機関を受診してください。

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自己判断での薬使用・食事制限の危険性

つわりが辛いからといって、市販の制吐剤や胃薬を自己判断で使用するのは非常に危険です。妊娠中は使用できない薬が多く、胎児への影響が心配されます。必ず医師に相談してから薬を使用してください。

 

また体重増加を気にして、極端な食事制限をすることも避けるようにしましょう。妊娠初期は胎児の重要な器官が形成される時期であり、適切な栄養摂取が不可欠です。食べられるものを少量ずつでも摂取し、水分補給を心がけることが大切になります。

 

栄養補助・鍼灸・漢方などの代替療法の有効性

医学的治療と併せて、代替療法を取り入れることで症状の軽減が期待できる場合があります。

 

葉酸サプリメントやビタミンB6の摂取は、つわり症状の軽減に効果があるとする研究報告があります。ただし妊娠中の栄養補助食品は、医師と相談の上で適切な量を摂取することが重要です。

 

鍼灸治療については、特定のツボへの刺激がつわり症状を和らげる可能性が指摘されていますが、妊娠中の鍼灸は専門知識を持つ治療師による施術を受けるようにしましょう。

 

漢方薬についても妊娠中でも使用できるものがありますが、必ず漢方に詳しい医師や薬剤師に相談してから使用してください。

 

つわり軽減に役立つ5つの生活改善ポイント

つわり症状を少しでも和らげるために、日常生活で実践できる対策をご紹介します。

 

起床時の低血糖

起床した直後は血糖値が下がっており、つわり症状が強く現れやすい時間帯です。枕元(寝た状態で手が届く範囲)に、クッキーやビスケット、グミやタブレットなどのお菓子や小さなパンやおにぎりを置いておくとよいです。

 

炭酸水やレモン水はさっぱりとした味わいで飲みやすく、胃のむかつきを抑えやすいです。ただし冷たすぎる飲み物は胃に負担をかけるため、常温程度が理想的といえます。

 

空腹を避ける軽食習慣

空腹時間が長くなると血糖値が下がり、つわり症状が悪化しやすくなります。1日3食の食事にこだわらず、少量ずつを頻回に摂取する「分食」を心がけましょう。/span>

 

クラッカーやビスケット、バナナなどの消化しやすい食品を携帯し、お腹が空く前に摂取することが効果的です。特に炭水化物は血糖値を安定させる効果があるため、つわり対策に有効とされています。

 

におい対策の具体例

つわり中は嗅覚が敏感になるため、普段気にならない匂いが不快に感じられることがあります。

 

マスクの着用は、外出時のさまざまな匂いをシャットアウトする最も簡単な方法です。マスクにレモンやミントのエッセンシャルオイルを1滴垂らすと、リフレッシュ効果も期待できます。

 

調理時は換気扇を強めに回し、窓を開けて空気の循環を良くしましょう。調理中の匂いが辛い場合は、家族に協力してもらうか匂いの少ない食材を選ぶことも大切です。

 

レモンの匂いは、多くの妊婦にとって気分を落ち着かせる効果があるとされています。レモンを切って香りを嗅いだりレモン入りの飲み物を摂取したりすることで、つわり症状の軽減が期待できるので知っておきましょう。

 

心身のリラックス法

ストレスはつわり症状を悪化させる要因の一つです。心身をリラックスさせることで、症状の軽減を図りましょう。

 

深呼吸は、いつでもどこでも実践できる簡単なリラックス法です。鼻からゆっくりと息を吸い口からゆっくりと吐く腹式呼吸を心がけることで、自律神経のバランスを整える効果があります。

 

妊娠中でも使用できるアロマオイルを使った芳香浴は、気分転換に効果的です。ただし、妊娠中は使用を避けるべきオイルもあるため、専門店で相談してから使用してください。

 

好きな音楽を聴くことも、心を落ち着かせる効果があります。クラシック音楽や自然音などの穏やかな音楽は、リラックス効果が比較的高いです。

 

周囲の理解と支援の取り入れ方

つわりは外見からは分からない辛さがあるため、周囲の理解を得ることが重要です。

 

家族にはつわりの症状や辛さを具体的に説明し、家事や買い物などのサポートをお願いしましょう。「いつまで続くか分からない」「個人差がある」ことも伝え、長期的な協力体制を築くことが大切です。

 

職場では上司や同僚に妊娠の報告と併せて、つわりの可能性についても説明しておきましょう。通勤時間の調整や休憩の取り方など、働きやすい環境を整えるための相談をすることが重要です。

 

つわりでの通勤緩和や仕事中の休憩等に関する相談には、母子健康連絡カードの活用が有効です。

 

参照:「母健連絡カード」とは?

 

まとめ:つわりの重さは人それぞれ、自分の傾向を知って適切に対処しよう

つわりは多くの妊婦が経験する症状ですが、程度や期間は人によって大きく異なります。体質、性格、生活習慣などさまざまな要因が関わっているため、一概に「こうすれば大丈夫」とは言えないのが現実です。

 

チェックリストで自分の傾向を把握する意義

今回ご紹介したチェックリストは、自分がつわりになりやすいタイプかどうかを把握するための目安です。該当項目が多かった人は妊娠前から生活習慣を見直したり、妊娠が分かったら早めに対策を講じたりすることで、症状の軽減につながる可能性があります。

 

ただしチェック項目が少なかった人も、つわりがまったく起こらないわけではありません。妊娠は一人ひとり異なる経験であり、予想とは違う症状が現れることも多いです。

 

我慢せず相談を。適切な医療・支援を受けることが母子の健康に直結する

つわりの辛さは、経験した人にしか分からない部分があります。「妊娠は病気ではない」という言葉に惑わされず、辛い時は我慢せずに医療機関に相談することが大切です。

 

つわりは重症化すると重症妊娠悪阻(じゅうしょうにんしんおそ)と呼ばれ、脱水症状や体重減少を引き起こし、場合によっては入院が必要となることもあります。

 

母体と胎児の健康を守るには、重症妊娠悪阻に発展する前に適切な治療を受けることが重要となります。

 

つわりは一時的な症状ですが、その期間を少しでも快適に過ごすために自分に合った対策を見つけることが重要です。周囲の理解と協力を得ながら、大切な時期を乗り越えていきましょう。

 

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