【医師監修】妊娠中の葉酸の効果・効能は?始めるタイミングや摂取量について

この記事の監修者
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医師福岡 正恒 先生
産婦人科 | 産婦人科医

京都大学医学部卒。同大学院修了後、京都大学助手、講師を経て、平成11年より産科婦人科福岡医院院長。京都大学在職中は、婦人科病棟や産科病棟などを担当。またこの間、英国エジンバラ大学・生殖生物学研究所に留学。日本産科婦人科学会・産婦人科専門医、京都大学医学博士。

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妊娠をきっかけに、葉酸の必要性を知ったという方も少なくないのではないでしょうか。

葉酸は、妊婦さんにとってもおなかの中の赤ちゃんにとっても大切な栄養素のひとつです。今回は、葉酸について詳しく解説していきたいと思います。

 

 

葉酸とは?

葉酸は水に溶けやすい性質をもった水溶性ビタミンB群のひとつです。

葉酸は、赤血球の生成に役立ったり、細胞の再生を促進したりするなどの効果があります。また、動脈硬化による心臓疾患や脳梗塞、高血圧を防いでくれる効果も期待されています

 

 

妊娠中に葉酸が必要な理由

葉酸を摂取することで、神経管閉鎖障害の50~70%が予防できるといわれ、厚生労働省も、妊娠を計画している女性や妊娠の可能性がある女性、そして妊婦さんに対して、葉酸の摂取を呼び掛けています。(※1)

 

神経管閉鎖障害というのは、主に脳や脊椎に生じる先天性の癒合不全のことをいいます。

神経管の下の部分である脊椎に癒合不全が生じると、「二分脊椎」となり、腰の部分に腫瘤があるタイプが最も多くみられます。二分脊椎は、本来ならば脊椎の管の中にある脊髄が脊椎の外に出てしまっている状態のため、二分脊椎が起きた場所では、神経障害が生じ、下肢の運動や排泄に影響を及ぼすことがあります。

 

また神経管の上の部分で癒合不全が生じると、脳に腫瘤がある「脳瘤」や脳の発育ができない「無脳症」となります。無脳症の場合、流産や死産などのリスクが高くなります。

 

参考:

※1.神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について|厚生労働省 <http://www1.mhlw.go.jp/houdou/1212/h1228-1_18.html>

 

 

葉酸を摂取するタイミング

葉酸を摂りはじめるタイミングとして最適なのは、妊娠の1カ月以上前から妊娠後3カ月までの間と推奨されていおり、妊娠初期は特に積極的に葉酸を摂取することが望ましいです。(※1)

なぜなら、妊娠5週ころからおなかの中の赤ちゃんの脳や脊髄などの中枢神経系が作られ始めるからです。

一方、一般的に妊娠反応が陽性になる時期は妊娠4週以降で、妊娠がわかった時点では、すでにおなかの中の赤ちゃんの成長が始まっている段階です。

妊娠がわかり、葉酸を摂取しはじめたとしても、効果がすぐに出てくるわけではないので、妊娠がわかる以前から葉酸を摂取することが大切になってくるのです。

 

また、妊娠7週目ころまでには、中枢神経系だけでなく、心臓や肺など重要な臓器も作られ始めますので、これらの臓器の発育に葉酸は欠かすことができません。その他、葉酸には造血作用を助ける働きもあるため、貧血になりがちな妊娠中のママにも必要な栄養素となります。

 

参考:

※1.神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について|厚生労働省 <http://www1.mhlw.go.jp/houdou/1212/h1228-1_18.html>

 

 

妊娠中の葉酸の必要量

葉酸は1日にどのくらいの量を摂取すればよいものなのでしょうか?


厚生労働省は、18~49歳の成人における葉酸の推定平均必要量を 200μg/日、推奨量を240μg/日としています。

 

妊婦さんの場合、推定平均必要量が400μg/日、推奨量は480μg/日、妊娠を希望している女性の推奨量は640μg/日(成人女性の推奨量240μg/日+付加量400μg/日)となっています。

 

参考:

授乳婦の食事摂取基準 - 厚生労働省 <http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000114401.pdf

 

葉酸の摂り方

妊娠中は、葉酸に限らずバランスよく栄養を摂る必要があります。日々の食事内容に注意し、効率よく葉酸を摂取できるようにしていきましょう。

 

●葉酸を多く含む食品
・たたみいわし:300μg
(100g中)
・焼きのり:60μg(1食分約3g)
・枝豆:260μg(100g中)
・モロヘイヤ:250μg(100g中)
・ブロッコリー:120μg(100g※茹でても同じ)
・アボカド:84μg(100g中)
・納豆:60μg(1パック中)
・エリンギ:88μg(100g中)
・いちご:90μg(100g中)
・キウイ:36μg(100g中)

 

葉酸は水に溶けやすく、熱に弱いという性質があります。調理方法によっては、成分が失われてしまうことが多くなります。ですから、葉酸が含まれている食品を調理するときは、スムージーやジュースにするなど工夫し、できるだけ多くの栄養素を摂取できるようにしましょう。


ここで注意をしておかねばならない点はサプリメントによる葉酸の摂取の仕方です。

葉酸を手軽に摂取するのにサプリメントを活用するのもよいですが、一日摂取目安量当たりで摂れる葉酸の量は商品によって異なります。自分が不足している葉酸の量はどのくらいなのかをしっかりと把握し摂取することが大切です。

 

 

葉酸の過剰摂取について

厚生労働省は食事以外の葉酸の過剰摂取量として1,000μg(1mg)と定めています。

 

1日1,000μgの葉酸摂取することは難しく、また葉酸は尿などと一緒に排出されやすい水溶性ビタミンであるため、副作用のリスクは少ないと言えるでしょう。

ですが、ここで気を付けなければならないのはサプリメントの過剰摂取です。

 

国民生活センターによると、

「葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)を大量(1~10mg)摂取すると、発熱・蕁麻疹・紅斑・かゆみ・呼吸障害などの葉酸過敏症を起こすことがある。また、ビタミン B12欠乏症の診断を困難にしたり、亜鉛と複合体を形成して小腸からの亜鉛の吸収を抑制する可能性があるため、食事摂取基準でも上限量が設けられている。また、『妊娠後期(30~34週)に1mgの葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)のサプリメントを飲んでいた場合は、飲んでいなかった場合と比べて、小児が3.5歳の時点で喘息になるリスクが1.26倍高かった』という報告もある」

と伝えています。(※)

 

サプリメントによって簡単に摂取ができるがゆえに過剰にとってしまいがちですが、葉酸はたくさん摂れば摂るほど良いというものではないということを認識しておく必要があります。

 

参考:

※胎児の正常な発育に役立つ「葉酸」を摂取できるとうたった健康食品_国民生活センター<http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20110526_1.pdf>

 

 

まとめ

葉酸は赤ちゃんの成長に欠かすことのできない栄養素のひとつですが、葉酸だけを摂取していれば、神経管閉鎖不全のリスクを下げられるというわけではありません。

葉酸は体内の蓄積性が低いので毎日摂ること、葉酸以外の栄養バランスも大切です。上手にサプリメントも活用して、葉酸を摂取していきましょう。


 

 

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