※この記事は、第1回「体験談&マンガ投稿コンテスト」の予選通過作品です。
恐怖の始まりは穏やかに…
土曜日の昼下がり、ショッピングモールで買い物をしていた私たち家族は、お昼を食べるためにレストランフロアへ行きました。お店の前にあるメニューサンプルを見て、「これがいい!」ともうすぐ3歳になる娘がお子様ランチを指差し、お店を決定しました。
店内に足を踏み入れると、「いらっしゃいませ〜!」とにこやかに近づいて来た40代男性の店員さん。奥の広めの席に案内してくれたり、子ども用の椅子を用意してくれたりと、丁寧かつフレンドリーな接客に、私たちは食事が楽しみになっていました。
私たちのあとにきたた赤ちゃん連れの親子にも「かわいいね〜。何カ月ですか? 男の子?」と話しかけており、子ども好きな良い方だな〜と思っていました。しかしこの男性スタッフこそが、某アニメに出てくる食堂のおばちゃんより怖い「お残しは許しまへんでおじさん」だったのです。
明らかになるおじさんの正体
注文が決まり、呼び出しボタンを押すと、先ほどの男性スタッフがおしぼりとお茶を持ってきました。「ランチセットA2つとお子様ランチでお願いします」。夫が注文を終えると男性スタッフは一度下がり、お子様ランチについてくるおもちゃを持ってきてくれました。娘が目をキラキラ輝かせながらおもちゃを選ぼうと手を伸ばしたそのとき、男性スタッフがカゴをすっと娘から遠ざけたのです。
「え?」声には出ていませんが、3人で同じ表情をする私たち。それまで感じがよかっただけに驚きました。そして男性スタッフはニコッとしながら冗舌に語り出したのです。
「おじちゃんね〜お残しする子は大嫌いなの。前にもね〜お残しする悪い子がいたんだけど、お嬢ちゃんはお残しせずに、ぜ〜んぶ食べられるよね? もしお残ししちゃったら、おもちゃはあげられないからね〜。おじちゃんとお約束できるかな?」。
「いやいや! 怖い怖い怖い!」。言っていることは正しいかもしれないけど、プレッシャーが半端ない。衝撃的な出来事に夫も私も愛想笑いしかできず、娘は怯えながらおもちゃをひとつ手に取りました。
止まない「許しまへんで」攻撃
そのあともお子様ランチを持ってきては、「ハンバーグと〜エビフライと〜ご飯と〜特にこのお野菜を残さず全部食べてほしいんだよね〜!」、お茶を入れにきては、「あらら? お野菜が残ってるぞ〜? お約束は覚えてるかな〜? おもちゃ返してもらっちゃうよ〜?」と娘に話しかけてくる、お残しは許しまへんでおじさん。しつこすぎて大人でもトラウマになるレベルです。
娘がこれ以上怖い思いをしないよう、「大丈夫だよね〜! おいしいね〜!」といつも以上に明るく振る舞うこと20分ほど。元々少食でなかなか完食できたことのない娘は、この日も1/4ほど残しておなかいっぱいの様子。それでも頑張って残りの半分は私が食べましたが、無念のギブアップ。お残しは許しまへんでおじさんが他のテーブルに行っている隙に、必死に夫が口にかきこみました。
早く会計してお店を出ようとすると、「お嬢ちゃんまたきてね〜!」とお見送りをしにきたお残し許しまへんでおじさん。「もう二度と行きまへ~ん!」。
私たち夫婦も娘にはなるべく好き嫌いなく、基本的には残さず食べるよう言って育ててきました。しかしここまで強要されると、食べることの喜びや楽しさがなくなってしまうのだと知ることができました。お残しは許しまへんでおじさん、ありがとう!
著者:ずんちゃんママ/女性・主婦。無痛分娩で出産した一児の母。娘と夫と3人暮らし。
イラスト:さくら
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています