母乳神話を気にせず、自信をもって育てていきたいと強く思った出来事
義母と夫、私、そして生後3カ月になった息子で外食をしたときのお話です。その飲食店にはお座敷があり、息子と同じくらいの月齢の子どもがいるご夫婦も来ていました。メニュー表を見て頼むものを決め、ベルを鳴らしたときのことです。50代くらいの女性店員さんが注文を聞きに来てくれたのですが、その店員さんは息子を見て突然「おっぱい(母乳)で育てているの?」と聞いてきました。
息子は母乳のみでしっかりと体重が増え、ぷくぷくしています。しかし、プライベートなことですし、見ず知らずの方に話したくはありません。店内には男性のお客さんもいます。お座敷の別の席では、食事を終えたご夫婦が赤ちゃんに育児用ミルクを飲ませている最中でした。さまざまな方がいる中で、私はそのデリカシーのなさにイラッとして「一応」とだけ返答。
すると店員さんは「やっぱりそうだと思った! 母乳だけで育てているなんてすごいじゃない! このガッチリした体つきは、母乳じゃなきゃ無理よ」、「ママの愛情をいっぱいもらえて、この子は幸せだね」と言ってきたのです。早く会話を終わらせたかったのですが、店員さんがひとりで盛り上がって収拾がつきません。自分の母乳事情が、他のお客さんに知れ渡ってしまい恥ずかしくなった私。そして、そばで育児用ミルクをあげているママの気持ちを思うと、すぐにでも帰りたい気持ちになりました。
そんなとき、お店のオーナーらしき50代の女性が、様子を見に来てくれました。そして「無事に大きくなれば母乳でも育児用ミルクでもいいと思うわ」、「私には母乳で育てた子と育児用ミルクで育てた子がいるけれど、どっちも元気だし愛情は変わらないわよ」と小さな声で店員さんに言ってくれたのです。小さい声ですが、お座敷内のご夫婦にも聞こえるように言ってくれているのがわかりました。そのままオーナーさんがにこやかに注文を取り、同じ空間にいた両方の赤ちゃんにやさしく声をかけて、その場を和ませてくれたのです。
「おっぱい?」と聞いてきた店員さんは、自分の経験から母乳で育てるのが一番だと思っているのかもしれません。しかし、あのオーナーさんが言ったように、母乳と育児用ミルクの間に愛情の差などないと思います。この先息子に育児用ミルクが必要になったとしても、母乳神話に負けず自信をもって育てていきたいと強く思った出来事でした。
著者:今野椛乃/女性・会社員。妊娠・出産後、未経験のWeb業界に飛び込む。3歳と2歳の子どもを子育て中のズボラなママ。助産師の資格あり。
作画:kazasato
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています