2人目だからとのんびりしていた私
私は1歳8カ月の長男と夫、夫の両親と一軒家で暮らしていました。出産当日は朝から長男をベビーカーを乗せて教会の礼拝へ行き、その後、1駅先の私の祖母の家まで歩いて行って、昼食を食べました。それからまたベビーカーを押して近くの競馬場へ行き、夕方まで長男とアスレチックで思いっきり遊びました。
夕方6時ごろやっと自宅に帰ると、ちょうど夫が飲み会に出かけるところでした。「出産予定日近いのになあ」と不満に思いましたが、笑顔で見送りました。夕食を食べ、20時ごろに長男と入浴していると、おなかに何となく痛みを感じました。21時に長男を寝かしつけると、またおなかが痛みます。長男は初産だったこともあり、陣痛開始から12時間後にようやく生まれました。今回もきっとそんな感じだろうと思い、のんびりと構えていましたが、念のため入院セットを玄関に準備しました。
おしるしだと思った出血は…?
23時半ごろ、夫が帰宅したので、「もしかしたら陣痛きてるかも」と言うと、「えーっ!」と夫は驚いたり喜んだりしていましたが、何しろベロベロに酔っぱらっていたので、私は怒って背を向けて布団に入りました。すると夫も布団に寝そべり、5分後にはいびきをかき始めました。「陣痛きてるって言ったのに寝るんかい!」と私は怒って起こそうかとも思いましたが、あきらめて陣痛の間隔を記録していました。
すると、急に激しい痛みが襲いかかり、その勢いで「漏らしちゃったかも?」という感覚がありました。トイレに行きパンツを下ろそうとすると、手に血が! 「あっ!」と思い、夫に「おしるしー!」と叫びました。
そして、夫がくるまでにパンツの処理をしなくてはと思い、パンツの中にある物を触ると……何とそれは赤ちゃんだったのです!
夫がトイレのドアを開けたちょうどそのとき、赤ちゃんが「おぎゃー」と泣きました。夫は仰天し、「おばあちゃーん!」と義母を呼びました。すぐに2階から義母が降りてきて、「あらあら大変、生まれちゃったのね。お風呂に入れないと」と言って、浴室に行きお湯はりを始めました。夫はおろおろしながら、119番に電話しました。
救急車に運ばれ助産院へ
すぐに救急隊員が到着して、トイレの中で赤ちゃんと座りこんでいる私を見て、「大きいのだと思ったんですね」と察してくれました。赤ちゃんの首にへその緒が巻き付いていたので、救急隊員はそれを取ってから、へその緒がつながったままの赤ちゃんを私のおなかに置き、私をストレッチャーに乗せました。私は救急車に運ばれながら、夫に入院セットを持ってきてもらうよう頼みました。夫は相変わらずおろおろしながら、私のあとに続き救急車に乗り込みました。
かかりつけの助産院に着くと、助産師さんが「2人目は早いって言ったじゃないの!」と夫を叱っていました。助産師さんが手早くへその緒を切り、赤ちゃんを抱き上げると、女の子だとわかりました。その瞬間、娘はうんちをしてしまったらしく、助産師さんは、「体重量る前に減っちゃったわねえ」とつぶやいていました。沐浴してからようやく身体測定をすると、身長は49cm、体重は2,800gでした。
長女は産着を着せられ、毛布にくるまれて私の隣にそっと寝かされました。助産師さんが部屋から出て行くと、夫は「ふぅー」と大きく息を吐いて畳に転がりました。その息は酒臭く、私は「やれやれ……」と溜め息をつき、先行きを少し不安に思ったのでした。
2人目の出産ということで、初産よりのんびりしていたらセンセーショナルな事件となってしまいました。何が起こるかわからないのが出産なんだなと思いました。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
著者:杉野萌/女性・介護福祉士兼ライター。中3の息子、中1の娘の2児の母。現在は介護福祉士として働くかたわら、詩やエッセイの執筆、新聞投稿をおこなう。社会へのメッセージから、過去の自身の恋愛や家族への思いなど幅広いテーマで執筆中。
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています