アニメに出てくる「炎太郎」に憧れるゆうちゃんのために、ゆうちゃんの髪を金髪に染めた母えみこ。園からは何も言われなかったのですが、保護者とトラブルになり、ドイツに単身赴任中の夫に相談しました。
夫との話がひと段落ついたところで、起きてきたゆうちゃん。久しぶりにパパとの電話に喜ぶゆうちゃんは、大好きになった炎太郎の魅力について話します。
パパが「ほかにはどんなキャラクターがいるの?」と聞くと、ゆうちゃんは、ほかの登場キャラクターやその役をしているお友だちの魅力も話しつつ、「ゆうちゃんね、炎太郎みたいに強くなって、たくさんの人を守れるようになりたいの」と、ゆうちゃんが炎太郎に憧れる本当の理由を話してくれたのです。
ゆうちゃんの表情が突然くもる…その理由は












ゆうちゃんがパパに「いつ会えるの?」と聞くと、「日本に帰れるのは夏休み」とパパ。すると、それまでニコニコだったゆうちゃんの顔が突然曇り「やだ。ゆうちゃん早くパパに会いたいよ」と言い出しました。「前にお話ししたでしょ?」と母えみこがなだめましたが、「すぐに会えると思ったんだもん。そんなに長い間会えないなんて思ってなかったんだもん」と泣き始めるゆうちゃん。
そんな姿を見て、母えみこは、自分がいろいろとわかっていなかったことに気づきます。炎太郎のようになりたいのは見かけじゃなくて中身のこと、パパと離れて暮らすことをちゃんと理解して納得したわけじゃないこと。そして、髪を染めたかったのも自分だし、日本に残ったのは、ゆうちゃんがお友だちと離れるのが嫌だからじゃなく自分がキャリアを捨てたくなかったからということ…。
それに気づいたえみこは「よし、パパにもっと早く会いに行こう!」とゆうちゃんを抱きしめたのです。
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思わぬところから、ゆうちゃんの本当の気持ちがわかりましたね。ゆうちゃんは、炎太郎の外見じゃなくて中身に憧れて「炎太郎になりたい」と思っていたこと、お友だちよりもパパと離れたくなかったこと…。
ゆうちゃんの本当の気持ちを知れたことは、母えみこの心に大きく響き、髪の毛のことも含めて、ゆうちゃんの気持ち以上に、自分のの都合や希望を優先してしまったのではないかと思うようになったようです。
子どもの気持ちがわかっていたとしても、大人の都合を優先せざるを得ないときは多々ありますが、母えみこの場合は、無意識のうちにそれを「ゆうちゃんの気持ち」で覆い隠していたことに罪悪感を感じたのかもしれません。もしかしたら、自分の都合でゆうちゃんを振り回してしまったと思ったのかもしれません。
それに気づき、ゆうちゃんにちゃんと「ごめんね」と謝ることができたのは、母として素敵なこと。自分の子どもとはいえ、1人の独立した人間として尊重することを忘れてはいけませんね。
山野しらす