アニメに出てくる「炎太郎」に憧れるゆうちゃんのために、ゆうちゃんの髪を金髪に染めた母えみこ。園からは何も言われなかったのですが、保護者とトラブルになり、ドイツに単身赴任中の夫に相談しました。
夫は、えみこの気持ちに寄り添いつつも、ゆうちゃんの体への影響と、金髪がゆうちゃんにとって「不利な記号」になってしまわないかというデメリットについて話しました。
母えみこはムッとしましたが、夫は「保育園の先生が、カラフルなモヒカンで顔中にピアスをつけていたら、どういう第一印象を持つ?」と問いかけ、「人によって受け入れられる外見には差がある。ルールの範囲内で自分の考えを貫くのは素晴らしいけど、まだ5歳のゆうちゃんには荷が重い」といい、「成長して、自分の考えや意思に責任を持てるようになったら、親として全力でサポートしてあげたい」と続けました。
冷静に状況を判断した夫の言葉に、えみこもその考えに納得したのです。
ゆうちゃんの本当の気持ち















夫との話がひと段落ついたところで、起きてきたゆうちゃん。久しぶりに、パパと電話で話すことができました。
大好きになった炎太郎の魅力について、パパに話すゆうちゃん。すると夫は、「ほかにはどんなキャラクターがいるの? お友だちはどんな役で、そのキャラクターに似ているの?」と聞きました。するとゆうちゃんは、ほかの登場キャラクターやその役をしているお友だちの魅力も話しつつ、「ゆうちゃんね、炎太郎みたいに強くなって、たくさんの人を守れるようになりたいの」と、ゆうちゃんが炎太郎に憧れる本当の理由を話してくれたのです。
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ゆうちゃんは、炎太郎の外見に憧れていたのではなく、炎太郎の内面の強さ、心のたくましさ、やさしさに憧れていたのですね。もちろん、憧れの炎太郎と同じ髪色にし、同じコスチュームを着られたのも単純にうれしかったとは思います。
でも、そんな外見だけでなく、ちゃんと炎太郎の中身を見ていたゆうちゃん、すごくしっかりしていますね。このゆうちゃんの言葉には、きっと母えみこもハッとさせられたのではないでしょうか。
子どもですし、「炎太郎が好き」と言われると、ついつい「外見が好きなのかな。かっこいい立ち回りが好きなのかな」と思ってしまいがちですが、ゆうちゃんは、炎太郎の「人間としての大切な部分」を感じ、「炎太郎みたいになりたい」と言っていたのですね。母えみこも見落としていた「ゆうちゃんの本当の気持ち」なんだと思います。
子どもって意外としっかりしていて、自分の考えもちゃんと持っています。そのことを私たち大人も忘れないようにしなくてはならないし、見習うところもありますね。
山野しらす