いつも感じのいいママさんが、実は…



息子が1歳になったころ、私たち家族は広めのアパートへ引っ越すことに。隣には誰も住んでおらず、1階には感じのいい夫婦と2歳くらいの男の子が住んでいました。1階のママさんとは、買い物に出かけるときや、息子を散歩へ連れて行くときなど、タイミングが同じになることがしばしば。お互いに子どもの話もするようになり、良好な関係を築いていました。
新居での生活にも慣れてきたある日の夜。息子を寝かしつけ、夫とテレビを見ていたとき、突然インターホンが鳴りました。「こんな時間に何!?」と確認すると、そこに居たのはなんと警察! 慌てて夫に対応してもらうことに。
警察官は「1号室に対して近所から騒音の苦情が出ています、物音やけんかの声を聞くことはありませんか?」と夫に聞いてきました。1号室はあのママさんたち家族が住む部屋です。1号室が留守にしていたのか、上階に暮らすわが家を警察が訪ねてきたようでした。私たちはそのような騒音を聞いたことはなかったので、夫は「聞いたことありません」と答えました。
しかし、数日後の夜。家の外から女性が叫ぶ声が聞こえてきました。少し窓を開けると、真下に住むあの夫婦がけんかしているようでした。「息子を連れて出て行くから!」「誰も私のことなんてわかってくれないのよ!」と、かなりヒートアップしている様子。それは、私が知っている愛想の良いママさんの声ではありませんでした。
翌日、息子を散歩へ連れて行くタイミングでママさんと偶然出会った私。勇気を出して「大丈夫ですか?」と聞いてみました。すると、途端にママさんはボロボロと涙を流し始めたのです。聞くと、夫が育児に関わってくれず、疲弊しているそう……。また、ママさん一家が家にいるタイミングで再び警察官が来たようで、余計に思い悩んでいると言いました。私はママさんの悩みの解決の糸口になればと思い、その日は一緒に支援センターへ行き、保健師さんに話を聞いてもらうよう案内しました。
その後、わが家に警察官が来ることも、夜中に怒鳴り声が聞こえることもなくなりました。後日、ママさんからお礼を言われました。ママさんによると、警察へ通報されたことでパパさんも深刻さを感じたのか、育児をするようになったそう。正直、かかわらないほうがいいとも思っていましたが、「誰かに頼っていいんですよ」と、声をかけて良かったと感じています。
※育児に悩んだり、困ったときは相談窓口に相談するのも一つの方法です。
『よりそいホットライン』では、電話、FAX、チャットやSNSによる相談に専門の相談員が対応してくれます。悩みの内容は、暮らしの悩みごとやDV・性暴力などの相談、外国語による相談をしたい方など多岐にわたっています。まずは、0120-279-338(岩手県、宮城県、福島県からは、0120-279-226)に電話してください。
著者:伊藤美菜/女性・主婦。2歳のイヤイヤ期の女の子と、5歳のわんぱくな男の子のママ。夫の転勤で縁もゆかりもない地に引っ越し、マイペースに田舎暮らしを楽しんでいる。保育士の資格あり。
作画:Pappayappa
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています