「物を取られた」と親に言ったら…
私が1歳の娘を連れて、近所の公園に遊びに行ったときの話です。娘と同い年の女の子のママAさんと、子どもたちが遊ぶのを近くで見守りながら談笑していました。
しばらくすると、娘たちの元へ5歳くらいの男の子が来て「僕、これで遊ぶ」と言い、娘の持っていた人形を奪ったのです。娘は驚き、泣きそうになりながら私にしがみついてきます。それを見ていたAさんが「今この子が遊んでるよ。順番だよ」と男の子に言いました。しかし、男の子は人形を持ったまま母親のほうに行き「あのおばさんたち、僕の邪魔する」と言うのです。スマホを見ていた母親は一度こちらに目を向けましたが、男の子に「放っておきな」と言い、再びスマホを触り始めます。
その態度にカチンときた様子のAさんは、男の子の母親に「いや、お宅のお子さん、遊んでいた人形を取って行ったんですけど」と言いました。すると母親は「私見てないし、子どものすることなんて知らねーよ。てか、見てたんならそっちが止めればいいだろ!」と声を荒げて言うのです。母親の発言に小さな公園内は静まり返り、私たちは呆れて物も言えません。
すると、かっぷくがいい強面の男性が、男の子の母親に近づいていきます。どうやら男性は男の子の父親らしく、声を荒げた母親に「どうした?」と声をかけました。「おもちゃ取ったとか言われてんだけど、私見てなくて~」と私たちに向けた声よりワントーン高い声で母親は言います。すると、それを聞いた男性は、表情を変えずこちらに近づいて来たのです。
「これはトラブルになりそう……」と私が怯えていると、男性は「うちの息子と妻が失礼な態度を取って申し訳ない」と頭を下げたのです。驚いた私とAさんは顔を見合わせます。男性は男の子を呼び「お父さん見てたよ。〇〇はちゃんとこの子に貸してと言ってなかったよね? 貸してほしいときは“貸してね”って言うんだ。ちゃんと謝りなさい」と男の子に人形を返すよう促しました。そして、母親のほうを向き「おまえなぁ、見てないじゃ済まされないときもあるんだぞ!」と叱責。すると、母親は気まずそうにしていましたが「ごめんなさい」と小さな声で私たちに謝罪したのでした。
父親の対応を見て、イライラしていた私とAさんの気持ちも落ち着きました。その後、男の子も「ごめんね」と言ってくれて、子どもたちは仲良く遊んでいました。
おもちゃの取り合いは、子どもが集まる場所でよく見る光景ではありますが、親が「見ていなかった」「子どものすることだから」と言って開き直ってしまうと、いらぬトラブルに発展しかねないと思いました。この日出会った母親を反面教師に、これからも子どもから目をはなさず、もしよそのお宅に子どもが迷惑をかけてしまったときは、誠実な対応をしようと誓った出来事でした。
著者:佐藤きなこ/30代・ライター。1歳の食いしん坊な女の子を育てるママ。娘と同じく食べることが大好きで、暇さえあれば飲食店の情報をリサーチしている。
作画:ひのっしー
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年9月)