息子の扱いが雑すぎる友人
仲のいい友だちの中では1番早く、26歳で結婚、出産をした私。妊娠中は体調がすぐれず、産後も回復に時間がかかり、なかなか友だちと会う機会がありませんでした。ところが息子が生まれ半年ほどして体調が落ち着いたころ、産前から連絡を取り合っていて、高校時代からずっと仲のいいAちゃんが「赤ちゃんにも会いたい!」とランチに誘ってくれたため、喜んで行くことにしました。しかし、少し気がかりだったのは息子の人見知り。Aちゃんには「人見知りが始まって、私以外に抱かれると泣いちゃうの……」と伝えましたが「大丈夫よ〜!」とひと言。私は「無理に抱っこしないから大丈夫」と言う意味だと受け取り、Aちゃんとの約束の日を決めました。
ランチ当日、生後6カ月になった息子はベビーカーの中でぐっすり。お店の前で待っているとAちゃんが合流しました。Aちゃんは息子を見るなり、いきなり大きな声で「かわいいっ! なんで寝てるの~? 起きてよ~」とベビーカーを揺らすではありませんか。「え、無理やり起こすなんてかわいそう! それに、起きたら泣いてゆっくり食事できない……!」と思った私は、すかさず「ぐっすり眠ってるから揺らさないで~」と苦笑いしながらAちゃんに言います。するとAちゃんは「ごめんごめん」とすぐにやめてくれ、幸いにも息子が起きることなく予約していたイタリアンのお店へ入れました。
しばらくAちゃんと食事や会話を楽しんでいたのですが、息子が起きてしまいました。ただ、機嫌がよかったのでベビーカーに寝かせたままにして、「落ち着いて食事できそう」と私はひと安心。しかしAちゃんが急に「起きたなら抱っこしよ〜!」と言い、私の止める間もなくいきなり息子を抱きあげたのです。それもピザを食べて油がたっぷりついた手を拭かずに……。この日のためにと思ってせっかく買った息子のかわいい洋服には、油じみができてしまいました。不衛生な手のままで抱っこされたことも気になりましたが、それよりも事前によく人見知りすると伝えていたのにも関わらず、何の断りもなく抱っこされたことにイライラ……。
案の定、息子は盛大に泣きだしてしまい、ランチどころではなくなってしまいます。Aちゃんは「え~泣いてる~、ごめんね~」と息子に謝ったあと「ママ抱っこお願い!」と私に抱っこの交代をせがみます。さらに追い打ちをかけるように、息子に「これやわらかいしおいしいよ〜、これで泣き止みな〜」と自分の食べたスプーンでリゾットを食べさせようとするAちゃん。私はすかさず「まだそういう食べ物は食べさせたことないから!」と口元まで運ばれたスプーンをあわてておしのけ、回避します。Aちゃんは「も〜じゃあどうしたら泣き止んでくれるわけ〜?」と少々不満顔。
私は息子をあやしますが、こうなってはもう泣き止まないのがわが子。息子のお世話で会話もままならず、料理も楽しめない状況に……。そんな私たち親子にAちゃんは冷ややかな目を向け「なんかせっかく会ったのに全然楽しめないね……。こんなに泣き止まないなんて普通じゃないよね? 子どもがいると大変だから、今度は誰かに預けてきたら?」と言ったのです。赤ちゃんにも会いたいって言ってくれたから連れてきたのに……! と私は怒りが爆発寸前。しかし、あえて冷静に「人見知りするから、なかなか預けられないかも。だからしばらくAちゃんと会うのは控えるね。息子の機嫌も直らないし、悪いけど今日はもう帰らせてもらうね」と言い、驚くAちゃんに自分の食事代を渡し、店を出ました。
帰宅後、Aちゃんに「今日はごめんね。息子に会いたいって言ってくれたからうれしかったけど、『楽しめない』って言われてちょっと悲しかった」とメールしましたが、返信はなし。息子の服の油じみは洗濯で綺麗になったのでそれ以上言及はしませんでした。
それからAちゃんとは連絡をとっていませんでしたが、3年後にAちゃんも結婚し、1児のママに。出産のお祝いで他の友人たちと一緒に久しぶりに会ったとき、「あのときの私、本当にひどかったよね。ごめんね」と謝罪してくれました。「恥ずかしながら、自分が妊娠出産するまで、赤ちゃんへの接し方とか子育ての大変さとか全然知らなくて……。私、自分のことしか考えてなかった」と言います。私も当時は初めての育児にいっぱいいっぱいで余裕がなく、Aの態度にイライラしてしまっていたと話し、無事和解。今では育児の相談ができる大好きな友だちの1人になっています。
当時子どもがいなかったAちゃんにとって、子どもとの接し方やママたちの苦労がわからないのは仕方がないと思います。しかし相手の苦労や接し方がわからないときこそ、お互いが不快にならないように慎重に行動する必要があると私は思います。自分自身も、状況や環境の違う相手と接するときは、相手を思いやる姿勢を忘れないようにしようと改めて思った出来事です。
著者:佐野千佳/パート。8歳の息子と4歳の娘を育てながら、週5回パートに出るワーママ。自分のしたいことも楽しむアクティブ系女子。真面目でやさしく研究熱心な息子と、ポジティブで明るくひょうきんな娘に癒やされる日々を送っている。
作画:Pappayappa
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年9月)