専業主婦を見下す夫
Aは3歳の女の子Bちゃんを育てるママで、専業主婦。A自身は働きたい気持ちがずっとあったものの、保育園の空きがなく、申し込みをしても落選続きだったのです。
しかし、働けないことを娘のBちゃんのせいにしたくなかったAは、家事をこなしながら、「娘との時間をたっぷり取ろう」と前向きにとらえ、育児に奮闘していました。
ある日、娘のBちゃんと支援センターへ行き、買い物をして、いつもより少し遅い時間に帰宅したA。バタバタと夕飯づくりを進めていると、定時で仕事を終えたAの夫が疲れた様子で帰宅しました。夫はAが忙しなく動いているのを見て「まだ夕飯できてないのか? こっちは仕事で疲れてて早く休みたいんだよ。専業主婦なのに今日1日何してたんだ?」とネクタイを緩めながら冷たく言い放ったのです。
「ごめんなさい、Bと支援センターに行った帰りに買い物に行ってて……」とAが弁明するも「子どもと遊んでただけじゃねぇか」「働いてないんだから、そのぶん家のことくらい完璧にしろよ」と罵る夫。働いていないことを娘のせいにしないと決めていたAは、悔しい気持ちをグッと堪え、翌日から家事も育児も夫に文句を言われないように頑張ろうと決意しました。
そして数日後、夫が定時で帰ってくるまでに、家事を全て完璧にこなしたA。Bちゃんとにこやかに夫を出迎えました。すると夫は鼻で笑いながら、「ふっ。いいよな、家にいるだけの専業主婦は、ストレスなんてないんだろうな」「毎日会社でストレス抱えてる俺とは違って」と言ったのです。しかし、夫の帰宅までに家事が片づいているのも、AとBちゃんがにこやかに夫を迎えられるのも、Aが朝からBちゃんと公園へ行き、疲れたBちゃんを寝かしつけ、お昼寝中に必死に家事を片づけた結果です。
そんな自分の努力を「家にいただけ」と軽視されたことが悲しくなったAは、思わず泣いてしまったそうです。しかしそんなAを見ても夫は寄り添うどころか「早く俺みたいに外で働いて稼げよ。いつまでラクして専業主婦するつもりだよ」と言い残し、用意した食事も「今は気分じゃない」と拒否したまま自室にこもって趣味のゲームを始めてしまいました。
結局言い返す隙すらなく「外で働いていないからって、そんなに見下されるもの?」と惨めな気持ちでAが落ち込んでいると、Bちゃんが心配そうにAをのぞきこみました。そして、Bちゃんは「ママはお家のこと頑張ってるよね」と言うのです。Bちゃんの言葉にハッとしたA。もともと「娘との時間をたっぷり取ろう」と思っていたことを思い出し、娘の前でこんな表情をしてはいけないと、自分を奮い立たせることができたのだそうです。
後日、支援センターでAからこの一連の話を聞いた私。私からも「私もAが一生懸命Bちゃんと向き合って子育てしているのを知ってるよ! 今後何かあったら相談してよ」と伝えました。私の言葉を聞いたAは、目に涙を浮かべながら「ありがとう」と言ったのでした。
長年夫から嫌味を言われ続けたAは、現在離婚を視野に動いているようです。「次の春にはBも幼稚園に入れるの。保育園みたいに抽選とかもないから、入園は確実そうで安心してる。入園したらいっぱい働いて、離婚するつもり。夫を後悔させてやるんだから!」と話していました。
働いているかいないかで人を評価するような言動は、相手を深く傷つけてしまうものだと改めて思った今回の一件。夫婦だからなんでもストレートに言っていいわけではないですし、夫婦だからこそお互いを思いやる気持ちを大切にしないと、離婚という結末になりかねないのだと、Aの話を聞いて思いました。私も今後もし何か夫に不満を抱いたら、感情的にならず、冷静に話し合おうと思った出来事でした。
著者:佐藤きなこ/30代・ライター。1歳の食いしん坊な女の子を育てるママ。娘と同じく食べることが大好きで、暇さえあれば飲食店の情報をリサーチしている
作画:Pappayappa
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年10月)