新郎両親の信じられないスピーチ
妹の結婚式の日。僕は仕事の都合で少し遅れて披露宴会場に入りました。ちょうど新郎側の家族のスピーチが始まるところで、邪魔にならないようそっと席に着いたのですが、開始早々、耳を疑う言葉が飛び出しました。
新郎の父と母が、「●●さん(妹)は、あまり余裕のない家庭で育ったそうで……。そんな方が、わが家の暮らしについてこられるか心配です」と、ゲストの前で平然と口にしたのです。
さらに、「生活水準も価値観も違うでしょうから、こちらに早く合わせてもらわないと」と続け、僕たちの家庭と自分たちの家庭を露骨に比べる話を延々と語り出しました。
新郎は、比較的裕福な家庭育ちだと妹から聞いていました。一方で、僕たちはたしかに金銭的に余裕があったとはいえない家庭です。それでもごく普通に暮らしてきました。
結婚式という晴れの場で、こんなこと言わなくても……という発言のオンパレードに、式場の空気は微妙に張り詰め、僕と家族は思わず顔を見合わせてしまいました。両親は言葉も出ないほど驚いており、妹は笑顔でしたが、無理に笑っているように見え、胸が痛みました。
善意の名を借りた、ただの押し付け
どうしても我慢できず、僕はスピーチを終えた新郎の両親を会場の外に呼び出しました。「先ほどの話、どういうつもりですか」と伝えると、彼らから返ってきたのは……
「本当のことを言っただけです。妹さんのためを思っての助言ですよ」
「正直、格が違う家庭だと思っています。だからこそ、うちのやり方に従ってもらわないとw」
あまりに率直な見下し方に、言葉を失いました。彼らからすると、妹を「仕方なく選んであげた」という認識なのだと感じました。僕たちが感謝すべきだと本気で思っているようでした。
僕が「結婚は上下関係を作るものではないはずです」と伝えても、「結婚した以上、うちの価値観に従うのは当然でしょう」と、結局彼らは聞く耳を持ってくれませんでした。
結婚式から数カ月後…
結局その日は、何事もなかったかのように披露宴は続き、妹は形式上は新しい家庭へと入っていきました。妹のことが心配で、何度も連絡を取りましたが、妹は「大丈夫」と繰り返すばかりでした。
しかし、結婚式から数カ月が経ったころ、妹は涙を流しながら「もう耐えられない」と実家に戻ってきたのです。話を聞くと、新郎本人はやさしいものの、両親の前では言いなりで、妹を守ってくれることはなかったとのこと。妹は、義両親から罵倒される日々だったと言います。
「大丈夫」は強がって言っていたのだと、胸が締め付けられる思いでした。そして両親とも「離婚をしたほうがいい」と後押しし、妹夫婦は離婚。夫の両親は、「いなくなってせいせいする」とだけで、離婚に対して何も言わなかったそうです。
あの日のスピーチで本性が露わになった
離婚後、妹はしばらく落ち込んでいたようでしたが、時間の経過と共に少しずつ笑顔を取り戻していきました。そんな中、思いがけず新郎側の家族の近況が耳に入ってきました。
結婚式には、新郎側の知人も多くいました。新郎側のゲストたちも「あのスピーチは……」と思う方が多かったようで、「あの家は人を見下す」「関わると面倒そうだ」と周囲から距離を置かれるようになったというのです。
結婚式で受けた屈辱は、決して消えるものではないと思います。妹の中でも嫌な記憶として残ってしまったでしょう。ただ、あの日のスピーチをきっかけに、新郎の家の本性が露わとなり、正直、少しスカッとしている自分もいます。他人を見下すような態度は、いずれその人たちを孤立させるのだなと感じた出来事となりました。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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