壊れていく日常
夫の変化は、態度だけではありませんでした。 次第に、私への言葉が露骨になっていったのです。
私をチラッと見て「結婚してから色気なくなったよな! 俺の同級生の奥さんは、みんな綺麗だったぞ!」とため息をつきながら一言。さらに「正直、地味な嫁と一緒にいるの、恥ずかしいんだよなぁ。俺はもう、お前を女として見れないからな」と心無い言葉を浴びせてきたのです。私は夫の言葉を聞くたびに、心が削れていくのがわかりました。しかも夫は、娘の前でも平気で私の容姿いじりをしたりするのです。私は笑って受け流しながら、内心では必死に気持ちを整えていました。夫の暴言を受けても「家族なんだから」「そのうち元に戻る」と思いたかった……。
でも、娘の表情は日に日に曇っていきました。夫がスマホばかり見ている背中を見つめ、「遊ぼう」と言いたいのに口を閉じる。その姿が、胸に刺さりました。
残されたスマホと、一本の電話
ある夜、夫が珍しくスマホをリビングに置いたまま入浴しました。夫には悪いと思ったのですが、これまでの夫の怪しい言動が気になった私は夫のスマホをチェックすることに……。
パスワードは娘の誕生日。ここまでは今まで通りでした。しかし、メッセージアプリを開くと、画面には同じ女性から何度も通知が届いていました。 名前はAさん。やり取りの内容は、どう見ても「ただの友人」ではありません。さらに、写真フォルダの奥には、見知らぬ女性とのツーショットが何枚もあったのです。撮影日は、同窓会の直後でした。その瞬間、私は胸の奥がすっと冷たくなったのを覚えています。その日からモヤモヤした気持ちで過ごしていたある日、夫が「3日間、出張に行ってくる」と言い残して家を出ました。嫌な予感がした私は、念のため会社に確認すると、やはり夫は有休を取っていました。出張は嘘……。ここまで証拠が揃えば答えは十分でした。
そんなとき、見知らぬ番号から電話がかかってきたのです。相手は「病院関係者」を名乗り、夫が事故に遭ったと言うのです。ただ、話し方がどこかぎこちなく、さらに「旅行中に……」と口を滑らせ、慌てて「出張中です」と言い直したのです。これは間違いなく浮気相手だと思った私は相手の名前を尋ねました。すると返事はなく、電話は一方的に切れました。そしてその直後、今度は夫本人から電話がかかってきたのです。
「歩けなくなるかもしれないって……」夫の悲痛
電話口の夫の声は、今まで聞いたことのないほど弱々しいものでした。夫は「出張先で事故に遭って……。検査中だけど、足の感覚がないんだ。もしかしたら一生歩けないかもしれないって看護師さんが……」と呟きました。そして、少し間が空いて、続けて言いました。 「怖いんだよ。ひとりだと不安で……。お願いだから、来てくれないか?」と言うのです。
私はその声を聞いて、気持ちがまったく動かなかったわけではありません。それでも、浮かんできたのは優しさではなく、 娘の前で私を貶めてきた言葉の数々でした。私は静かに「それは大変ね。でも私じゃなくていいでしょ。あなたはひとりじゃないでしょ? 隣にいる人に頼ってください」と告げました。沈黙が続く中、私は「側にいてほしい人は私じゃないでしょ? これからはAさんと2人で生きてください」と、それだけ伝えて電話を切りました。
その後、夫からの電話が鳴り止みません。そろそろケジメをつけなければと思っています。
◇ ◇ ◇
家庭の空気は、子どもにも伝わります。だからこそ、大人が自分と子どもを守る選択をすることは、わがままではありません。違和感を無視せず、自分と子どもを守るために動く決断も必要なのかもしれませんね。 この経験が、同じように悩んでいる誰かの背中をそっと押せたら、そう願っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。