義弟から投げかけられた、場違いなひと言
声をかけてきたのは、妹の夫である義弟でした。彼は相手によって態度を変えるところがあり、私は以前から距離を置きたいと感じていました。
「お義兄さん、高卒でフリーランスなんですから、もう少しおしゃれしてきたらどうですか? お義姉さんは医師なのに……あ、アドバイスですよ」
軽口のようでいて、明らかに見下した言い方。私はごく一般的な式典用のスーツを着ていただけだったので、内心では違和感を覚えました。
言い返そうか迷ったその瞬間、仕事の電話が鳴りました。
仕事を理由に、その場を離れて
「すみません、仕事の電話なので」と伝えてその場を離れると、義弟は背中越しに「どうせ単発の仕事でしょ。ご自由にどうぞ」と、投げやりな言葉を口にしていました。
その日、妹は体調不良で欠席。ひとりで出席していた義弟は、どこか気が大きくなっていたのかもしれません。私は式の雰囲気を壊さないよう、できるだけ距離を取ることにしました。
式が進んだある場面で、司会者がこう切り出しました。
「それではここで、新婦の弟様で、現在A社の代表を務めていらっしゃる方から、ごあいさつをお願いいたします」
その瞬間、会場が一瞬ざわつきました。義弟も、信じられないという表情でこちらを見ています。
思いがけず明らかになった、私の立場
A社は、私がフリーランスとして活動していた時代を経て立ち上げた会社です。現在は医療業界向けの製品を扱う小規模な企業として、少しずつ知られるようになっていました。
義弟は動揺した様子で、思わず口に出してしまったのでしょう。
「え……社長? あの……?」
その場に居合わせた、姉と私の幼なじみであるB子が、静かに「身内だとしても、今の言い方は失礼だと思いますよ」と言いました。周囲も小さくうなずき、義弟はそれ以上何も言えなくなっていました。
式が終わった後、義弟はどこか落ち着かない様子でした。後から知ったのですが、私の会社は、彼が仕事上で関心を持っていた取引先の1つだったそうです。彼は取り繕うように話しかけてきましたが、これまでの発言をはっきりと認めたり、謝ったりすることはありませんでした。
B子は以前から、義弟が私にだけ態度が違うことに違和感を覚えていたそうです。「彼は独学で道を切り開いて、今は会社を率いている人よ」と伝えると、義弟は気まずそうにその場を去っていきました。
その後に起きた、仕事上のすれ違い
その後、義弟は仕事の面でも思うようにいかなくなったようです。結果として、私の会社と彼の関係先との契約は成立しませんでしたが、それは私個人の判断ではなく、あくまで社内での検討結果でした。
しかし義弟は納得できなかったのか、私のせいだと感じていた様子。事実とは異なる話を周囲に広めようとしたようですが、根拠がなく、自然と信用されなくなっていったと聞いています。
義弟は職場で居心地を失い、最終的に退職。妹との関係も次第に冷え込み、話し合いの末、別々の道を歩くことになりました。一方で私は、仕事に引き続き向き合う日々を送っています。
今回の出来事を経て、妹は「見る目を養わないとね」と前向きに笑うようになりました。
まとめ
兄として、これからの妹の人生に、きっと良い出会いがあると信じています。今回の経験を通して、妹自身も「人を見る目」を改めて考えるきっかけになったようでした。肩書きや表面的な評価ではなく、その人がどんな姿勢で人と向き合い、どんな行動を積み重ねてきたのか——それこそが本当の価値なのだと、私自身も改めて実感しました。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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