ある日、夫が深刻な顔で「離婚してほしい」と切り出してきました。理由は「重い病気が見つかったから」とのこと。
「治療で弱っていく姿を家族に見せたくない。迷惑をかけたくないから、ひとりで闘病したい」そう訴える夫の目には涙が浮かんでいました。
私は「家族なのだから支え合いたい」と食い下がりました。しかし夫は「お荷物になりたくない」と頑なに拒絶し、耳を貸そうとしません。
これ以上引き留めることは彼の負担になるのかもしれない……そう思い悩み、最終的には彼の強い希望を尊重する形で離婚届を提出することにしたのです。
夫は「実家に戻って治療に専念する」と言い残し、家を出て行きました。幼い娘を抱え、不安な日々が始まりましたが、私は夫の回復を信じ、遠くから祈るしかありませんでした。
元夫からの連絡
元夫から連絡が来たのは、離婚から半年後のこと。「治療が順調で完治した」と話します。あまりの早さに驚きましたが、元気になったのなら良かったと安堵しました。
元夫は「久しぶりに娘と遊びたい。2人だけで出かけさせてほしい」と言います。娘もパパに会えることを喜んでおり、私はそれを承諾。娘を送り出しました。
しかし約束の時間を過ぎても、元夫と娘は帰ってきませんでした。行き先としていた水族館はとっくに閉館しているはずです。
心配になった私は、娘のスマホのGPSを確認することにしました。すると、娘の現在地は私たちが住んでいるマンションです。まもなく帰ってくるのでしょうか……。
ママには内緒…
それから30分後、ようやくインターフォンが鳴りました。モニターには娘の姿しかありません。慌てて鍵を開けて玄関へ迎えると、娘の様子が明らかにおかしいのです。「こんな時間まで何をしていたの? パパは?」と尋ねてみました。
すると娘は「ママには内緒って言われた……」と怯えた表情を見せます。しかし小さな胸に抱えきれなかったのでしょう。ポツリポツリと、今日あった出来事を話し始めました。
水族館からマンションに帰ってきたとき、元夫は娘を連れて5階でエレベーターを降りたそう。向かった先は、あのママ友の家でした。
「パパが『新しいママになるよ』って。ここで一緒に暮らせって。私、もうママとは暮らせないの?」
娘の話を聞いて、すべての点が線で繋がりました。夫の病気は真っ赤な嘘。あのママ友と一緒になるための作戦だったのです。
不倫相手の思惑
「パパはまだ5階にいるはず」 と言う娘。私は少し考えた末、元夫に電話をかけることにしました。
彼は明るい声で「今、帰っているところ。今日は娘とのデート楽しかったよ!」と言います。息を吐くように嘘をつく元夫。もはやかつての情は微塵も残っていませんでした。
私は冷静に、事実を突きつけました。「今、5階のママ友の家にいるでしょ? 全部聞いたよ」
電話の向こうで息を呑む気配がしました。観念したのか、元夫は悪びれる様子もなく、自分たちの身勝手な論理を話し始めました。
「彼女がどうしても引き取りたいって言うんだよ。僕と娘、そして彼女……ビジュアル的にもつりあってるだろ? 娘も、美人のママのほうが嬉しいはず」
その言葉に、私は怒りを通り越して呆れ果てました。病気だと嘘をついて私を騙しただけでなく、娘をまるでアクセサリーのように軽く扱ったのです。もちろん私はきっぱりと断りました。
突然の帰宅
そうこうしているうちに、電話の向こうからインターフォンの音が聞こえました。きっとママ友の旦那様が帰ってきたのでしょう。
実は私とママ友の旦那様は、以前マンションの管理組合で一緒の役員をしており、連絡先を交換していました。娘から話を聞いた直後、私は彼にメッセージを送っていたのです。
どうやらママ友の旦那様は、介護のために実家に泊まる日が多かったよう。ママ友は旦那様の留守を狙って、元夫と密会していたのでしょう。
インターフォンの音に怯え、うろたえる元夫。私は冷たく告げました。
「彼女の旦那さんじゃない? 今までのこと、すべて伝えてあるから」「『すぐに帰る』って相当怒っていたから、しっかりと話し合ってね」
電話の向こうから、ドアが開く音と男性の怒鳴り声が聞こえた気がしました。私はこれ以上関わる必要はないと判断し、静かに通話を切りました。
身勝手な不倫カップルの末路
その後、帰宅したママ友の夫と鉢合わせし、決定的な修羅場となったそうです。言い逃れようのない状況に加え、離婚前から2人が関係を持っていた事実も発覚しました。
元夫は、ママ友の旦那様から慰謝料を請求され金銭的にも困窮しました。あんなに盛り上がっていた関係も、脆いものだったよう。互いに「相手が誘った」「騙された」と責任をなすりつけ合うようになり、結局あっけなく破局したと聞きました。
現在、私は娘の安全を考え、セキュリティのしっかりした別のマンションへ引っ越しました。娘は少しショックを受けていましたが、今は新しい学校で元気に過ごしています。
平穏な日常を取り戻した今、娘を守り抜けたことに安堵しています。
◇ ◇ ◇
自分の欲望のために「病気」という深刻な嘘をつき、さらに幼い子どもまで巻き込んだ元夫たちの行動。大人の勝手な嘘がどれほど子どもを傷つけるか、想像力があまりに欠如しているのではないでしょうか。
誰かをあざむいて手に入れた幸せに価値などありません。誠実さを欠いた選択は、やがて大きな代償として自分に返ってくるのだと、改めて感じさせられる体験談でした。
【取材時期:2025年12月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。