兄嫁は以前からブランド志向が強く、バリバリ働くキャリアウーマンでしたが、待望の第1子妊娠を機に、専業主婦として育児に専念することを決めたそうです。「用意するものが多すぎて困っちゃう」と話す兄嫁に、私はさっそく、大切に保管していた品々を役立ててもらおうと提案をしました。
「お下がりはゴミ」と言い放った兄嫁
兄嫁と出産準備の話をしていたとき、私は自宅のクローゼットに眠っているベビー用品の存在を伝えました。息子が使っていたベビー用品の中でも、状態が良く、まだまだ使えるものは残して、大切に保管していたのです。
「もしよかったら、うちにあるお下がりを使いませんか?」
そう声をかけた瞬間、兄嫁が眉をひそめました。そして信じられないことに、鼻で笑いながらこう言い放ったのです。
「お下がりなんて、結局はゴミでしょ? うちの子にそんな汚いもの、使わせたくない」
もちろん、経済力のある兄夫婦なら新品をそろえることなど容易でしょう。しかし、私の意図は単なる節約ではなく、まだ十分に使える思い出の品を有効活用してほしかっただけなのです。
自分たちをバカにされたとでも思ったのでしょうか。それ以来、兄嫁との間には深い溝ができ、私は無理に関わるのをやめて距離を置くことにしました。
兄嫁の自慢話と、弟嫁の控えめな相談
そうして、兄嫁とはギクシャクしたまま迎えたお正月。実家には親戚一同が集まり、遠方に住む弟夫婦も帰省していました。男性陣が別室でお酒を飲みながら盛り上がっている間、私と兄嫁、そして弟嫁の3人は、居間でお茶を飲みながら談笑することに。
兄嫁と顔を合わせるのはあの日以来でしたが、彼女は相変わらずでした。自分が揃えた海外ブランドのベビー用品がいかに高価で素晴らしいかを、延々と自慢し続けています。
そこへ、遅れて弟嫁が加わりました。妊婦同士、会話は弾んでいましたが、時折混ざる兄嫁の嫌みな自慢話に、弟嫁も少し困惑している様子。私は兄嫁の一件があったため、お下がりの話は自分からは出さず、黙って聞き役に徹していました。すると、弟嫁が私のほうを向き、控えめに相談してきたのです。
「あの、お義姉さん。もし、もう使わないベビー用品があったら、譲っていただけませんか? 使う期間が短いものですし、もしよければ大切に引き継いで使いたいなと思っていて……」
その言葉に、私は救われる思いでした。もちろん二つ返事で快諾。
その日はみんなで実家に泊まることになっていたので、私は「家が近いから、明日の朝に一度自宅に戻って、荷物を持ってくるね」と約束しました。
それを見ていた兄嫁は、お茶をすすりながら「ゴミの行き先が決まってよかったわね。私には誰かのお古なんて、とても無理だけど!」と、鼻で笑っていました。
手のひらを返した兄嫁のいやしい本音
翌朝、私と夫は一度自宅に戻り、整理してあったベビー用品を車に積み込んで再び実家へ向かいました。居間に広げられた品々を見て、弟嫁は目を輝かせて喜んでくれました。
息子のために義両親が奮発してくれた人気ブランドのベビーカーや、友人から贈られた高品質の知育玩具など、実は兄嫁が好みそうなアイテムもたくさん含まれていたのです。
そこへ、身支度を終えて起きてきた兄嫁がやってきました。昨日まで「ゴミ」と呼んでいた品々をのぞき込み、一着のブランド服を手に取ると、事もなげに言いました。
「あ、これかわいい〜。私もらうね」
その言葉に、私は思わず絶句してしまいました。あんなに頑なに「ゴミ」だと拒絶していたのに、目の前の品物が良いものだとわかった途端に手を伸ばす姿に、悲しいというか、あきれてしまったのです。大切に保管していた息子の思い出の品を、そんなふうに扱う人には渡したくないと強く感じました。
「申し訳ないんだけど、これはすべて◯◯さん(弟嫁)に譲ると約束したものだから。お義姉さんは、こだわりの新品をそろえるとおっしゃっていましたよね?」
私は努めて穏やかに、しかしはっきりとお断りしました。兄嫁は驚いた顔をして固まっていましたが、私はそのままその服も弟嫁に託しました。
大切に使い続けることの意味
後から兄に聞いて知ったことですが、仕事を辞めて収入が減ったにもかかわらず、兄嫁は見栄を張って高額な買い物ばかりを続け、家計がかなり苦しくなっていたようです。それを見かねた兄から厳しく節約を命じられ、実は喉から手が出るほどお下がりが欲しくなっていたのだとか……。
あんなに強く拒絶してしまった以上、今さら私に謝罪して「やっぱり譲ってほしい」とは言えなかったのでしょう。私は今、弟嫁から送られてくる、お下がりを使ってくれている赤ちゃんの写真を見るたびに、息子が小さかったころの懐かしい記憶を思い出して、温かい気持ちになります。
ベビー用品は使う期間が限られているからこそ、良いものを次の世代へ繋いでいく。物を大切にする心を持つ弟嫁に譲ることができて、本当によかったと心から思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。