妻の横に立っていた“スーツ姿の男”の正体
玄関が開く音がして、妻が帰ってきました。いつもなら「ただいま」と言うのですが、その日は違いました。妻の後ろには、見知らぬスーツ姿の男性が立っていたのです。
妻は私を見るなり、「あなたとの結婚生活、もう終わりにする。私、本気で好きな人ができたの。これで貧乏暮らしから解放される♡」と告げました。隣に立つ男性は、どうやら妻の不倫相手のようでした。
不倫相手の男性は、「俺が彼女を養う。離婚届、よろしく!」と笑顔で名刺を差し出してきました。妻が働いている会社の後輩らしく、いわゆる“エリート”と呼ばれるタイプ。社内でも出世候補で、年収も高いようです。
驚かなかったと言えば嘘になります。ただ、最近の妻の様子を見ていて、いつかこうなる予感はしていました。帰宅が遅い。スマホを肌身離さない。そして何より、妻はもともとお金の使い方が荒く、「自分へのご褒美」と称してバッグなどを買うことが多かったのですが、最近はその頻度が明らかに増えていると感じていました。
「パパとママどっちと暮らす…?」娘に聞くと
私は深呼吸して、「わかりました。離婚で構いません」と答えました。すると妻は、「ありがとう」と、少し拍子抜けしたような表情を浮かべました。
ただ、ひとつだけ確認しなければならないことがありました。娘のことです。私は娘の顔を見て、静かに聞きました。「突然のことで動揺していると思うけど……どうしたい?」すると娘は、少しも迷うことなく答えました。「パパと暮らす」
それは、私が「ごめん」と言いたくなるほど正直な言葉でした。仕事で忙しい時期でも、娘の話だけは聞こうとしてきました。プログラミングに興味を持ったときも、休日に一緒にパソコンを触り、小さな成功を一緒に喜んできました。娘を思ってやってきたことが、きちんと伝わっていたのだと思うと、胸がいっぱいになりました。
こうして私たちは離婚し、娘の親権は私が持つことになりました。引っ越しの準備を進めながら、私は内心ほっとしていました。娘にとって、落ち着いて過ごせる環境を作り直せると思ったからです。
「大丈夫かな?」娘が不倫相手を心配するワケは
新居の賃貸マンションは、2人で暮らすには十分な広さがあり、少しでも寂しくならないよう、景色がよく見える部屋を選びました。引っ越したその夜、娘がふいにぽつりと言いました。「ねえパパ。ママと一緒にいたおじさん、大丈夫かな」
私は思わず、「大変だと思うよ」と答えてしまいました。すると娘は、「そうだよね。ママ、買い物いっぱいするでしょ。あのおじさん、これから大変だと思う」と続けました。子どもながらに、しっかり状況を理解している。そのことに苦笑しつつも、胸の奥が少し痛みました。
不倫相手から「助けて…」突然の連絡が
離婚して数カ月が経ったころ、思いがけない相手から連絡がありました。妻の不倫相手だった、あの“エリート”男性です。どうやら妻のスマホから、私の連絡先を調べたようでした。
送られてきた文面は、にわかには信じがたいものでした。「別れたいんです。助けてほしい」正直、目を疑いました。あれほど「幸せにします」と言っていた人物とは思えません。
彼は、自分の給料も貯金も、次々と彼女の買い物に消えていくと訴えてきました。高級バッグ、エステ、服、アクセサリー。元妻は「私のメンテナンス」と言いながら、レシートを積み上げていく。止めようとすると、「稼ぎが悪いのが悪い」「あなたと結婚したのは間違いだった」と責められる――私がかつて聞いたことのある言葉が、そのまま彼の口から出てきました。
私は、心がすっと冷えていくのを感じました。「それを私に言うのは筋違いです」と返すと、「……でも、あなたなら」と食い下がってきます。私は、「浮気した側が頼るのは間違っています。あなたが選んだ相手なのですから、自分で責任を取ってください」と伝え、それ以降は返信しないことにしました。
不倫相手の次は元妻が会社に現れて…!
不倫相手から連絡が来てしばらくしたある日、今度は元妻が私の会社の前で待ち伏せしていました。昼休みに外へ出た瞬間、ヒールの音と香水のにおいがして、振り向くと元妻が腕を組んで立っていたのです。
元妻は私を見上げ、「メールでも送ったけど……より戻してあげる。私がいないと、娘も寂しいでしょ?」と言いました。自分が選ぶ側で、相手は待つ側。相手の気持ちは確認しない――何も変わっていませんでした。
私は静かに言いました。「必要ありません。帰ってください」すると元妻は、「何よ。私が戻れば、みんな幸せになれるのに」と言います。その瞬間、私ははっきり伝えました。「あなたは娘の心を傷つけた。母親を名乗る資格はない」元妻は言い返すことができず、唇を噛みしめていました。
その日の夜、娘には「今日ね、ママが来たんだ」とだけ伝えました。すると娘は少し黙ったあと、こう言いました。「……会わなくていい。だってママ、私のこと応援してくれないもん」胸が痛みました。母親を拒む言葉を、子どもに言わせてしまった現実が、重くのしかかったからです。
その後、共通の知人から聞いた話では、元妻は再び“エリート”男性のもとに戻ったものの、散財癖は直らず、揉め続けているそうです。離婚したいと言われても、今度は元妻がごねて泥沼状態になっているとか。その話を聞いても、私はもう何も感じませんでした。自分で選んだ道の結果だからです。
私が守るべきなのは、目の前で笑う娘と、娘の未来。それだけを考えて、これからも前に進んでいこうと思います。
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目先の豊かさを求めて選んだ道が、必ずしも幸せにつながるとは限りませんよね。後悔することのないよう、自分にとって本当に大切なものを見失わずにいたいですね。
【取材時期:2026年1月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。