小さな善意を踏みにじるひと言
ある朝、私は気分転換と職場の雰囲気づくりを兼ねて、書類棚の上に小さな花を飾りました。
「きれいなものがあると、少し気持ちが明るくなりますよね」
ところが出社してきたA山部長は、それを見るなり鼻で笑い、「そんなものが売上につながるのか?」と一蹴し、「余計なことを考えずに仕事をしろ」と強い口調で言いました。
気に障ったのだろうかと思い、私は「申し訳ありません」と頭を下げました。するとちょうど社長が現れ、花を見て
「いいね。職場が明るくなる」と感心されたのです。
その瞬間、A山部長は私の前に出て、「私が部下のために用意したんです」と、まるで自分の手柄であるかのように話し始めました。
私は言葉を失いましたが、これがA山部長の“いつものやり方”なのだと、このときはっきり理解しました。
奪われる成果、押し付けられる責任
社長が去った後、私は勇気を出して言いました。
「先ほどは役に立たないとおっしゃっていましたよね。あの花を飾ったのは私です」
しかしA山部長は、「部下のやったことは上司の成果だ」と取り合いませんでした。
こうした出来事は一度や二度ではありません。部下が時間をかけてまとめた資料や成果は、いつもA山部長の名前で報告され、評価だけが彼のものになっていったのです。
名前を消される報告書
ある日、私は業務改善の提案書を残業して作成しました。内容を確認したA山部長は、「よくやった」と言いながらも、
「社長に出すから、俺の名前で提出する」と当然のように指示しました。「上司が責任を持つということだ。感謝するべきだぞ」と言われ、私は悔しさを抱えながらも従うしかありませんでした。
そんな状況が続く中、ある朝の朝礼でA山部長は突然、「営業第一部の難航案件を、お前が担当しろ」と私を指名しました。その案件は、社内でも長年進まず“失敗が濃厚”と見られていたものです。「何としてでも契約を取れ。無理なら、お前が報告しろ」と言い残し、A山部長は「俺は関与しない」と責任を放棄しました。
落ち込んで帰宅した私が家で愚痴をこぼすと、企業法務を専門とする弁護士の弟が首をかしげました。
「その上司、面倒なことを避けてるだけじゃないか。少しおかしいな」
一方で私は案件を進める中、取引先のキーパーソンが、偶然にも祖母の幼なじみであることを知ります。丁寧に話を重ねた結果、少しずつ信頼関係を築くことができ、最終的には前向きな合意を得ることができました。
事実を積み上げた報告
契約成立後、私は自分の名前で報告書を作成しました。案の定、A山部長は「上司の名前がないのはおかしい」と詰め寄ってきましたが、私は冷静に対応しました。
その後、社内でおこなわれた正式な報告の場では、契約に至るまでの経緯ややりとりが事実として共有され、A山部長が案件に関与していなかったことも明らかになりました。さらに、社内調査の過程で、A山部長の行動や人間関係についても問題が指摘されたと聞いています。
結果として、契約は私の実績として正式に認められました。一方A山部長は、組織運営上の判断として配置換えとなり、第一線を離れることになったそうです。
それから半年後、私は部長職を任されました。今度は自分が、成果を正しく評価し、協力し合える職場をつくる番です。あのときの経験を忘れず、誠実に仕事と向き合っていこうと思っています。
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部下の成果を自分のものにし、責任を避け続けていた上司。しかし彼女は、不当な状況に流されることなく、事実と結果を積み重ねることで信頼を勝ち取りました。評価されるべき人が正しく評価される――その当たり前を守る行動こそが、職場の未来をつくるのかもしれません。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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