本社で目にした、気になる新人社員
10年ぶりの本社ということで、かつての後輩が社内を案内してくれることになりました。懐かしい顔ぶれにあいさつしながら、総務部の部屋へ立ち寄ったときのことです。一人の女性社員の態度が、どうにも気になりました。デスクに座ったまま、業務とは無関係そうな様子でスマートフォンを操作しているのです。
「あの方、ずっとスマホを触っているようだけど……業務連絡ではなさそうね」
後輩に尋ねると、その女性・A子さんは人事部長のめいで、入社間もない新人社員だと教えてくれました。入社の経緯自体は問題ではありません。しかし、どう見ても仕事への意欲が感じられません。
さらに後輩いわく、勤務態度を注意された際に「叔父が人事部長だ」と強調するような言い方をすることがあり、周囲が対応に困っているのだそうです。契約社員やアルバイトに対しても高圧的な態度を取ることがあり、それが原因で職場を離れた人もいる、という話でした。
視線の先で起きた、思わぬ出来事
無意識のうちにA子さんを見ていた私は、ふと目が合ってしまいました。すると彼女は、真っすぐこちらに歩み寄ってきたのです。
「さっきから何? 新しいパートのおばさん? 私の叔父、人事部の責任者なんだけど。余計なことしないほうがいいわよ」
初対面の相手に対するとは思えない物言いに、私は言葉を失いました。さらに彼女は、軽い調子でこう続けたのです。
「ちょうどいいわ。喉が渇いたから、お茶を入れてきて」
案内していた後輩は慌てて止めようとしましたが、私は一度深呼吸し、「わかりました」とだけ答えました。彼女は「給湯室はあっちよ。早くね」と笑いながら言い、私はそのまま給湯室へ向かいました。
給湯室で出会った、思わぬ人物
給湯室でお茶の準備をしていると、偶然、社長が通りかかりました。
「おお、久しぶりだな。戻ってきたんだな……って、どうした? 何をしているんだ?」
私は、先ほどA子さんから言われた内容を、事実として淡々と伝えました。追ってきた後輩も加わり、職場で困っている社員が少なくないことや、これまでの経緯を補足します。社長は驚いた様子で「そんな話は聞いていなかった……」と頭を抱え、人事部長を呼び出すよう指示しました。事実確認のため、全員で総務部へ向かうことになったのです。
総務部に戻ると、A子さんは相変わらずスマートフォンを見ていました。私が「お待たせしました」とお茶を差し出すと、彼女は顔を上げ、背後の光景を見て凍りついたようでした。部屋にいた社員たちが一斉に立ち上がり、深く頭を下げたのです。その後ろには、社長と人事部長の姿もありました。私は静かに言いました。
「お茶です。『私に逆らうと、叔父である人事部長に話が行く』とおっしゃっていましたね」
人事部長は顔色を変え、「そんなことを言ったのか」とA子さんを厳しく叱責します。一方のA子さんは、「ちょっとお願いしただけです」と言い訳を始めました。そこで社長が口を開いたのです。
「正式な発表はこれからだが……。私は今期で第一線を退く予定だ。その後、経営全般を補佐する立場として、海外支社で実績を積んだこの人に戻ってきてもらった」
職場を立て直すための決意
この出来事をきっかけに、私は次期社長として、職場環境の見直しに本腰を入れることを決めました。立場を利用した不適切な振る舞いが見過ごされることのないよう、評価制度や相談体制を整備し、社員教育を徹底することにしたのです。
A子さんも人事部長も、指導を受けた後は態度を改め、現在はそれぞれの役割を果たしています。改革を進めた結果、社内の風通しは大きく改善しました。
数年後、私たちの会社は「働きやすい企業」として評価されるようになり、社員の定着率も向上しています。これからも社員一人ひとりと向き合いながら、より良い職場をつくっていきたいと思っています。
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立場を背景にした横柄な態度は、職場全体の空気を悪くします。今回の出来事をきっかけに、問題を見過ごさず環境改善へとつなげた判断は見事ですね。誰もが安心して働ける職場づくりの大切さを、改めて考えさせられるエピソードではないでしょうか。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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