今回は、産後間もない時期に次回の妊娠を考えている方と妊娠された方のために、年子で妊娠したときに大切なことをお話しします。
年子とは?
年子は同じ母親から生まれた1つ違いの兄弟姉妹を意味する言葉です。年齢の数え方は、満年齢(生まれた時点を0歳として、誕生日を迎えるタイミングで1つ加算する)で数えるのが一般的ですが、古くからの風習にある数え年(生まれた時点を1歳として、元旦を迎えるタイミングで1つ加算する)で数えて年子と表現することもあります。
年子というと、1歳差で生まれた子あるいは学年が1つ異なるというイメージを抱きやすいですが、日本の学校教育法では4月2日生まれ~4月1日生まれを学年毎にまとめるため、生まれたタイミングによって年齢差が1つでも学年の差が1つ違いとは限らないケースも起こり得ます。
例
・生まれた年が1年違い、学年が1つ異なる 例:2018年4月生まれと2019年9月生まれ
・生まれた年が1年違い、学年は2つ異なる 例:2018年1月生まれと2019年6月生まれ
・生まれた年が1年違い、学年は同じ 例;2019年4月2日生まれと2020年4月1日生まれ
参考:年齢計算ニ関スル法律 明治35年12月2日法律第50号
学校教育法 第59条
年子で妊娠したときに大切にしてほしいこと
出産から次回の妊娠までの期間が1年未満の場合、母体の合併症が起こる確率が高くなり、新生児死亡率や乳児死亡率、低出生体重児、胎児発育遅延、早産の危険性が有意に高くなることがわかっています。日本は諸外国と比べると最も安全な医療体制を整えているため、出産間隔が1年よりも短いタイミングでの妊娠を良しとする風潮はあります。しかし、母親の身体機能さえ回復すれば妊娠して良いというわけではなく、体力や精神的な負担、子育てそのものの負担、生まれた赤ちゃんへの影響など、いろいろな視点から産婦人科医や助産師、保健師は産後早期の妊娠を積極的にすすめないケースもあります。
もし、さまざまな理由から次の妊娠を早く望む場合や、次回の妊娠までどのくらい期間をあけるべきか悩むときは、まずは産婦人科医へ相談しましょう。もし、年子で妊娠した場合は、前回の妊娠期間よりもより慎重に過ごすことを心得ておきましょう。
家族が増えることは、自分や家族の人生設計を多少変更もしくは調整する必要があるかもしれません。また、上の子を妊娠したときと比べると、産後の回復過程で再び妊娠しているために、体力の衰えを感じるかもしれません。妊娠中はおなかの中の赤ちゃんよりも、目の前で動き回る子どものお世話を優先してしまいがちですが、おなかが張りやすいなどの症状が起こりやすい場合は慎重に過ごしましょう。
0歳から1歳までは、手を使うようになる、立って歩くようになる、お話できるようになる、母乳や育児用ミルクだけなく口から食べ物を食べるようになるなど、人間らしさが育つ時期です。上の子の子育てと新たな生命を授かった生活の両立に苦労はあるかもしれませんが、上の子との年齢差がないことで上の子のときに親としてうまくできないと思っていたことが、下の子のときには気持ちに余裕をもってできることもあります。親が上の子の成長と共に子育てに慣れていきながら、下の子のお世話に応用が利くというのは強みでしょう。
授乳中に妊娠したら気を付けること
いつまで授乳を続けるのかは、お子さんの月齢と妊娠の経過によって判断しましょう。妊娠経過が順調であれば、母乳育児を続けてもかまいませんが、切迫流産や切迫早産と診断された際には、授乳を控えましょう。おっぱいを吸われた刺激で分泌するオキシトシンが子宮の収縮を起こす可能性があるからです。実際は授乳した程度では流産は起きませんが、妊娠経過が順調でも産婦人科医や助産師、保健師から母乳だけで育てることを止めるように助言されることがあるかもしれません。
突然やめてしまうと、授乳中のお子さんの気持ちが不安定になったり、ママのおっぱいに乳腺炎が起こることもあるので、お子さんの変化を見守りながら母乳以外で十分に栄養が摂れるように切り替えていきましょう。おっぱい以外のスキンシップや遊びなどでコミュニケーションをとるように心がけましょう。授乳中に妊娠した場合に、上の子への授乳方法や接し方で困りごとがあれば、助産師へ相談しましょう。
妊娠・出産・子育ては夫や家族のサポートが肝心
上の子の要求に付き合えなくて罪悪感を抱いたり、思い悩んだりすることはあるかもしれませんが、妊娠したママだけが心身のストレスを抱えることはありません。パパや家族、周囲の人の協力は必要不可欠です。家族内でのサポートが不足する場合は、居住地の保健所や保健センターへ相談して、産前や産後に利用できるサービスを紹介してもらいましょう。
まとめ
年子で妊娠といっても、月齢差や年齢差にはいろいろなパターンがあります。年子で妊娠すると、周りの人からの心ない言葉に傷つけられたり、インターネットで拡散される根拠のない情報に思い悩むこともあるでしょう。妊娠・出産・子育てに対する個人的な価値観の押し付けやネガティブな意見、医学的根拠のない情報は聞き流しましょう。
参考:
・産婦人科診療ガイドライン産科編2017
・WHO Postpartum Family Planning