さらに、夫が金髪の外国人女性と親しそうに歩いているのを見かけた、と知人から聞かされたことで違和感は膨らみました。夫が働くホテルに外国人の同僚が複数いることは知っており、以前からよく名前が出ていた女性スタッフのことが頭をよぎります。
思い切って尋ねると、夫は即座に否定。人違いだろう、証拠もなく決めつけるなと苛立った様子で反論してきます。
話し合いをするチャンスだと考え、最近の態度の変化を指摘しても、夫は「結婚して何年も経てばこんなものだろ。いつまでも恋人気分でいるほうがおかしい」と言って、取り合おうとしませんでした。
証拠を突きつけると…
私の考えすぎなのかもしれない、仕事が忙しいのは本当かもしれないし、結婚生活に慣れれば態度が変わるのも自然なことなのかもしれない——そう考えようとしたものの、胸の奥にわだかまった違和感は、日に日に大きくなっていきました。
夫を疑う日々はつらく、こんな思いをするなら本当のことが知りたいと考えた私は、調査会社に浮気調査を依頼しました。
調査結果として私の元に送られてきたのは、夫が同僚の女性の自宅に頻繁に通っているという事実。写真という動かしようのない証拠を手にしたときは、悲しみよりも先に、やはりそうだったかという冷めた感情が胸を占めました。
証拠を突きつけると、あっけなく認めたものの、謝罪の言葉はありません。
夫は苦笑いを浮かべながら「……もうバレたのか」とつぶやき、そのあとで「正直言って、あの人といるほうが気が楽なんだ」と淡々と言い放ったのです。
そして追い打ちをかけるように、浮気相手が妊娠していることを告げ、離婚を切り出してきました。
慰謝料3万円
離婚自体は、私も考えていたことでした。問題は夫の態度です。彼が提示した慰謝料の額は、たったの3万円でした。浮気をして相手を妊娠させ、妻を裏切った代償がそれだけだというのです。
気持ち程度のものだと悪びれる様子もありません。半年後には子どもが生まれるのだから、さっさと離婚を済ませたいのだろうという魂胆が透けて見えました。
私は内心で怒りを押し殺しながら、あえて喜んだふりをしました。「そんなにいいの? ありがとう!」と言うと、夫は拍子抜けした顔をしています。
泣いてすがりつくと思っていたのでしょうが、私は笑顔で、すぐに離婚の手続きを進めようと伝え、弁護士に離婚協議の仲介を依頼しました。
私は後々揉めないように、離婚協議の話し合いをスマートフォンで録音していました。弁護士さんが協議書の内容もひとつずつ読み上げながら説明しましたが、夫は面倒そうに「いいよいいよ、早く終わらせよう」とほとんど聞いていない様子。
これは夫の良くないクセです。案の定、夫は書類に目を通そうともしませんでした。「もういいから早く終わらせてくれ」と言いながら、署名したのです。私の作戦通りに——。
慰謝料が300万円に!?
1週間後、夫から慌てた連絡がきました。慰謝料が300万円になっていると。
私は落ち着いて答えました。協議書にはしっかりとこちらの請求額が書かれています。また、その内容を説明したうえで夫自身が署名しているのです。
細部まできちんと確認せずにサインしたのは夫自身の責任でした。その説明のやり取りは、録音した音声データで手元に残っています。
「これから子どもが産まれるのに、こんな額は払えない」と夫は取り乱しましたが、私は一歩も引きませんでした。
「あなたが確認して署名した書類です。内容については、きちんと記録も残っています」
私はそう伝え、静かに電話を切りました。悔しそうに声を荒らげる場面もありましたが、署名済みの書類の前では何も言い返せなかったのです。
浮気相手との子どもは…
その後、無事離婚は成立し、私は慰謝料で念願だった海外旅行に出かけました。その旅先で、偶然にも素敵な出会いに恵まれたのです。帰国後もゆるやかに交流を続けるうちに、少しずつ心の傷が癒えていくのを感じていました。
そんな折、半年ぶりに元夫から連絡がありました。二度と連絡するなと言っていた本人からの突然の電話に驚きましたが、声には以前の横柄さがなく、どこか弱々しい響きがありました。
事情を聞くと、再婚相手との間に生まれた子どもについて、遺伝子検査を受けた結果、自分の子ではないことがわかったというのです。相手の女性は子どもの本当の父親と再婚すると言い出し、元夫のもとを去ったのだとか。
元夫は目が覚めた、後悔している、会って謝りたいと繰り返しました。しかし私には、その言葉が本心から出たものだとは到底思えませんでした。裏切られた直後に元の相手に泣きつくのは、反省ではなく都合の良い逃げ場を探しているだけです。
新しいパートナーがいることを伝えると、元夫は動揺を隠せない様子。思わぬ報告に戸惑う元夫をそのままに、私は電話を切ったのでした。
◇ ◇ ◇
信頼は一度壊れてしまうと、簡単には取り戻せません。自分の行動の結果に向き合わず、都合が悪くなったときだけ相手に頼ろうとしても、差し伸べられる手はもうないでしょう。
日ごろから誠実な関係を積み重ねていくことの大切さを、改めて考えさせられる体験談でした。
【取材時期:2026年2月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。