遠慮ゼロの義姉一家
ある日も、義姉一家は当然のような顔で義実家にやってきました。玄関を開けた瞬間、義姉の夫が「俺ビールでいいや」とソファに座り込んだのです。内心「自分たちで買ってきてよ……」と思う私でしたが、義両親は「はいはい、お菓子よ~! ビールも冷えてるわよ」と当たり前かのように用意してしまうのです。
その様子を見て、ついに夫が「父さん、姉ちゃんたちを甘やかしたらダメだよ。来月で定年退職だろ?」と口を開きました。 すると義姉は「余計なこと言うんじゃないわよ! あんたたちだって家賃も光熱費も払ってないでしょ!」と言い返してきたのです。夫も負けじと「その代わり食費も生活費も俺たちが出してるし、家事もほとんどやってるだろ」と反論しました。しかし義姉の夫は、へらへら笑いながら「まぁまぁ仲良くしようよ」と軽く流します。その一言で話はうやむやになり、結局いつものように義姉一家は好き放題。それでも義両親は強く言えず、結局世話を焼いてしまうのでした。
そんな中、私たちはある計画を立てていました。義父が定年を迎える節目に、日頃の感謝を込めて旅行をプレゼントしようと思っていたのです。
義姉が目をつけたもの
旅行のことを義両親に伝えたとき、義父は驚いたあと、少し照れたように笑ってくれました。義母も「そんなことしなくていいのに」と言いながら、うれしそうにしてくれて、私たちまで温かい気持ちになりました。
ただ、その直後に義父は真顔になり「この話はお姉ちゃんたちには言わないように」と念を押してきたのです。義母もため息まじりに「知られたら面倒なことになるものね」と続けるのです。私も夫も、その意味はすぐにわかりました。義姉一家に知られたら、きっと自分たちも乗っかろうとしてくるからです。数日後、義姉一家がまたやってきたときのことです。 リビングに置かれていた旅行先のパンフレットを見つけた義姉が「へぇ、いいところじゃない。誰か旅行でも行くの?」と言うのです。義母は少し慌てた様子で「いいなぁって思ってパンフレットを置いてあるだけよ」と答えました。しかし、その言い方が不自然だったのでしょう。義姉はじっとパンフレットを見つめたあと「ちょっとトイレ借りるね」と席を立ったのですが、なかなか戻ってきません。気になって様子を見に行くと、義姉は別の部屋をのぞき込み、棚や引き出しをガサゴソと探っていました。そしてついに、引き出しの中から旅行の予約券を見つけたのです。そこに書かれていたのは、手配者である私の名前でした。それを見た義姉は、ニヤリと笑いました。どうやら義姉は、義母が私たち夫婦に旅行をプレゼントするのだと勘違いしたようだったのです。
私は胸の奥がざわつきました。……なんだか嫌な予感がする。けれど、そのときはまさか本当にそんなことをするはずがないと、自分に言い聞かせてしまいました。 しかし――その予感は、数日後、最悪の形で現実になることになったのです。
盗まれた旅行
退職祝いとしてプレゼントした旅行当日。 義両親が出発の準備をしていると「……あれ? 予約券がない」と言う義母の声で、家の空気が一瞬止まりました。封筒の中に入れていたはずの旅館の予約券が消えていたのです。
家中を探しても見つからず、私たちは慌てて旅館に確認を取りました。すると、予約はすでに別の名前に変更されていると言われたのです。旅館の予約は、手配していた私の名前で取ってありました。しかし義姉は、予約券に書かれていた番号を使って旅館に連絡し、自分たちの名前に変更してしまっていたのでした。 その日は、義父の退職祝いとして私たち夫婦が旅館をプレゼントした日でしたが、実は私たち家族も同じ日に近くの民宿を予約していました。せっかくなら近くで一緒に食事でもできたらと思い、私たち家族は別の民宿を予約していたのです。 事情を話すと、民宿のご主人が「お部屋が一つ空いていますよ」と言ってくれたので、急きょ義両親も私たちと同じ民宿に泊まることになりました。その夜、義姉から一本の電話を受けたのです。
「あら~、予約券なくなって困ってるんじゃない?」
そして義姉は、楽しそうに笑いながら「今ね、高級旅館に来てるの。あんたが貰うはずだった旅行、私たちが代わりに楽しんであげてるわよ♡」と言い放ったのです。私はその言葉を聞いて、思わず「高級旅館? 私たちの宿泊先は民宿ですが?」と伝えました。電話の向こうが、ぴたりと静まりました。どうやら義姉は、義母が私に旅行をプレゼントするのだと勘違いしたようだったのです。私は続けて「旅行は私たち夫婦から義父の退職祝いとしてプレゼントしたものなんです。予約券がなくなってしまったので、今は急きょ私たちと同じ民宿に泊まっているんです」と告げました。 義姉が息をのむ気配が伝わってきました。
その直後、電話を代わった義父が「よくもせっかくのプレゼントを奪ったな! 誰のものであろうと盗むなんて許されるか!」と激怒! そして「お前たちには散々甘くしてきたが、もう限界だ。家賃も光熱費も、今後は一切払わん!」と言い放ったのです。その言葉に義姉は「だって……ほら! いつもみたいに許してよ」とすがるのでした。まったく反省しない義姉に呆れた義父はそのまま電話を切るのでした。
数日後、義姉一家は慌てて謝罪に来ました。そして「これ、一応お土産」と言って差し出したのは、旅館のせんべい。それを見た義父は「ふざけるな!! 二度と顔を見せるな!」と義姉一家を追い出したのでした。こうして、義姉一家への援助は完全に打ち切られたのです。
◇ ◇ ◇
家族だからといって、人のものを盗むことが許されるわけではありません。優しさを当たり前に受け取り、甘え続けた結果、大切な関係まで壊れてしまうこともあるのかもしれません。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。