授乳の時間になっても帰ってくれない
息子が生後2カ月のころ、50代の元同僚のAさんが家に出産祝いを届けに来てくれました。職場で会うだけの付き合いなので、長くても1時間程度で帰るだろうと思っていた私。
始めは、「体調はどう?」と気遣ってくれて、大人と話せる楽しさを感じていました。しかし、10時半に来訪してから12時を過ぎても、Aさんの話は止まりません。私はまだ夜中も3時間おきに起きていたため睡眠不足。おなかも空いたうえに授乳の間隔が空いたことで、右胸が岩のようにガチガチに張り、激痛を感じ始めていました。
限界を迎え「そろそろ授乳の時間なので」と伝えると、Aさんは「懐かしい! 私も完母だったわ」と笑顔。私がさらに「胸が張って痛くて授乳したいので……」とそれとなく帰宅を促すと、Aさんは「あら、やっぱり新米ママはダメね。そんなの甘いわよ。私も完母だったけど、それくらいの張り、当たり前に我慢したものよ。まったく大げさなんだから~」と言い「それより私の姑がさ〜」と、全く興味のない昔話を続けます。私が痛みに顔を歪めていても、チラリと見て「ふふ、痛いのね。でも母親になったなら、少しくらいの我慢強さを身につけなさい」と鼻で笑われる始末。結局、昼食を食べる間もなく一方的に話を聞く羽目になり、14時を過ぎても彼女は居座り続けていました。
そこへ、義母が訪ねてきました。徒歩5分と近所に住んでいる義母は、産後間もない私のために、いつもお昼過ぎになると夕飯用にとおかずをおすそ分けに来てくれるのです。玄関先で、私の青ざめた顔と右胸の服に母乳が滲み出ていることに即座に気づいた義母。驚きとともに「ちょっとあなた大変じゃない! 服に染みてるけどなんで授乳してないの? 今すぐ授乳しなさい!」と大きな声で言いながら、キッチンへ入っていきました。
すると、そこでリビングにいたAさんに気づいた義母。ソファにふんぞり返って座るAさんを見て、状況を瞬時に理解したようです。「あら、お客様? ……失礼ですが、いつからいらしているの? この子のこの状態、見てわからないんですか?」と義母が言うと、Aさんは「いえ、さっきから話をしていただけですよ~」と悪びれもなく返します。
義母はそれを聞き「『さっき』じゃないでしょう。服にまで染み出しているんですよ?」と強い口調で伝えました。そして私に「早く授乳しておいで」と言ってくれたのですが、Aさんが「大げさねぇ。私は来客があったらこのくらい我慢してましたよ」と、まさかの反論。すると義母はさらに強い口調で「あなたねぇ……! 乳腺炎になったらどうするの! この子も赤ちゃんもどれだけ苦しむか! 客人を自称するなら、相手の体調くらい察しなさい! 今すぐお引き取りを」と反撃。結局、義母のあまりの剣幕と正論に、Aさんは捨て台詞を吐く暇もなく、逃げるように家を飛び出していきました。
Aさんが去ったあと、私はすぐに息子に母乳を与えました。義母にお礼を言うと「あなたはやさしすぎるの。これからは、あなたと赤ちゃんを傷つける人に、気を使う必要なんて一切ないからね」と言ってくれました。その言葉に、どれだけ救われたかわかりません。
その後、Aさんからは「お義母さんちょっと大げさすぎると思うわ~」と反省の気ゼロのLINEが送られてきました。私は、お子さんがもう成人している彼女にとって、授乳の痛みなど『遠い昔の他人事』でしかないのだと痛感しました。これ以上関わる必要もないと感じ『義母のおかげで、乳腺炎にならずに済みました。今は育児に専念したいので、失礼します』とだけ送りました。お祝いのお返しを送ってからは、連絡を取っていません。
子育てを経験している相手だからと言って、今の自分の悩みが当たり前に通じるわけではないと知った今回の出来事。気を使いすぎずに、言葉でもっとはっきり伝えることが大事だとわかりました。自分と子どもを守るために、義母のように「NO」と言える強さを持ち、自分たちの平穏を一番に大切にしていきたいと思った出来事でした。
著者:小田りさ子/30代・ライター。生後11カ月になる息子と夫婦の3人家族。食べることや散歩、ひとりで過ごす時間が好き。
作画:yoichigo
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年1月)