半年ぶりに夫と対面した日、私は朝から落ち着かない気持ちで準備をしていました。毎日のように電話していたとはいえ、直接会うのは久しぶりです。夫の好物を並べて、帰りを待っていました。
玄関の扉が開き、夫がリビングに入ってきた瞬間――私は思わず息をのみました。たった半年のはずなのに、体つきが明らかに変わっていたのです!
半年ぶりに再会した夫の異変
夫の顔は丸くなり、体も一回り以上大きく見えました。久しぶりの再会に喜ぶよりも先に、驚きと戸惑いで私はどうしていいかわからなくなりました。
しかし、夫はそんな私の様子に気づくこともなく、テーブルの料理に視線を向けていました。
「うまそうだな。早く食べよう」
そう言いながら、夫はキッチンへ向かい、砂糖の入った容器を手に取ったのです。そして次の瞬間、私が作った料理の上に砂糖を振りかけ始めました。揚げ物にも、サラダにも、ご飯にも――ためらいなく、たっぷりと。
私が呆然としていると、夫は私のほうに振り向き、笑顔でこう言いました。
「単身赴任中に気づいたんだよ。砂糖をかけると、もっとうまくなる」
大量の砂糖をかけた料理を次から次へと口に運ぶ夫。そのたびに、食卓には砂糖の粒がパラパラと落ち、夫の口からはジャリジャリと砂糖を噛み締めるような音が聞こえてきます。
私は信じられない気持ちで、ただその様子を見ていることしかできませんでした。はっと我に返り、「そんな食べ方していたの? 体に良くないよ!」と伝えましたが、夫は不機嫌そうに眉をひそめただけ。
「俺の好きにさせてくれよ。仕事でストレスがたまっていて、食事だけが楽しみなんだから!」
その言葉に、それ以上強く言えなくなってしまいました。私も砂糖まみれの料理を口に運んではみましたが……とても食べられるものではありませんでした。
翌朝、私はあえてシンプルな和食を用意しました。味付けを見直せば、もしかしたら受け入れてくれるのではないかと思ったからです。
しかし夫は一口食べてすぐに顔をしかめ、「味が足りない」と言って、また砂糖を持ってきてかけ始めました。
どうやら単身赴任中にコンビニ食や外食が中心で、味の濃いものや甘いものを過剰に好むようになり、一種の砂糖依存症のような状態に陥っていたようでした。
義母の一方的な叱責
その後も、夫の食生活は変わることはありませんでした。食卓に並べた私の手料理は、すべて砂糖で上書きされるのです。
そんな光景を目の当たりにすることが続き、私はだんだんと食事の時間が苦痛になっていきました。大皿で出すとすべて砂糖まみれにされてしまうため、1人分ずつ分けて出すことも増えました。
そんなある日、義母から電話がかかってきたのです。
「ちょっと! 息子にどんなものを食べさせてるのよ」
「あなたの料理が口に合わないって聞いたわよ。味付けを変えないと食べる気が起きないって」
どうやら、夫は義母に対し、自分の異常な食べ方を隠して「妻の料理がまずいから、仕方なく自分で調整している」と被害者面をして不満を伝えていたようでした。
私が事情を説明しようとしても、義母は途中で遮り、「夫の味覚に合わせて料理を作るのが妻の役目!」「おいしい料理を作れないなら、息子の好きなように食べさせてあげて」と言って聞きません。そのまま電話は一方的に切られ、私は悔しさと虚しさでしばらく動けませんでした。
その夜も、夫は私の手料理に砂糖をドバドバとかけていました。その様子を黙ってじっと見ていると、夫は「好きにやらせてくれよ!」と一言。夫の顔も体も、単身赴任から帰ってきたときよりだいぶ大きくなっているような気がしました。
ここで私が何か言っても、夫は聞かないでしょう。それどころか、また義母を味方につけ、私を悪者にしてくるかもしれない。悲しくて視線を下に落としかけたそのとき、私の頭にあるアイデアが浮かんだのです。
真実を明らかにするための食事会
数週間後、結婚記念日を迎えるタイミングで、義両親を自宅に招くことにしました。私が手料理をふるまうことを告げていたので、義母はあまり気乗りしていないようでしたが、時間通りに来てくれました。
テーブルいっぱいに大皿を並べ、さあ食べようというときに、私は笑顔で夫に砂糖がたっぷり入った容器を渡しました。
「おお、気が利くじゃん!」
「これこれ、これがうまいんだよなぁ~」
そう言いながら、いつも通りすべての料理に大量の砂糖をかけていく夫。義両親は、驚いた様子で夫の行動を凝視していました。
「……これはどういうこと?」
砂糖まみれの料理を嬉々として口に運ぶ夫を見ながら、義母がぽつりとつぶやきました。
私は「好きなようにさせてあげてほしいってお義母さんからも言われていたので……」と前置きしたうえで、これまでの経緯を落ち着いて説明。夫が毎日この食べ方をしていたこと、それを止めようとしても聞き入れてもらえなかったこと、そして義母からも責められたこと。すべてを話し終えたとき、義両親は言葉を失っていました。
その後、義両親は夫と真剣に話し合い、しばらく実家で生活を見直すことに。私自身も、これ以上夫と一緒に生活するのは難しいと思っていたので、ちょうどよいタイミングだったと思います。
後日、義母からは「事情をよく知らずに強く言ってしまってごめんなさい」と謝罪を受けました。
私が「味覚や食生活がこのまま改善しないのであれば、離婚を考えている」と告げたこともあり、夫も食生活を改善しようと努力している様子でした。それもあって、もう少しだけ、決断は先延ばしにしようと思っています。
今回の出来事を通して、相手の言い分だけを鵜呑みにすることの危うさと、健康を軽視した生活の怖さを実感しました。
食の好みは人それぞれですが、体を壊してしまっては意味がありません。自分自身のためにも、大切な人のためにも、日々の積み重ねを大切にしていきたいと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。