疎遠だった義母からの電話
その日は、夫と自宅でゆっくり過ごしていました。特に予定もなく、いつも通りの穏やかな時間が流れていて、こんな何気ない一日がずっと続けばいいのに――そんなことをぼんやり考えていたときでした。
すると突然、夫のスマホが震えました。何気なく画面を確認した夫は、その瞬間わずかに眉をひそめ、次の瞬間には表情を固くしたまま電話に出ました。
「もしもし……え? 母さん?」
その声を聞いた瞬間、胸の奥がざわっと冷えました。そして、その予感はすぐに確信へと変わりました。電話の相手は――義母だったのです。義母は夫の実の母ではなく、義父の再婚相手です。夫が学生のころから干渉が強く、義父の前では穏やかで面倒見のいい人を装っていながら、陰では夫の行動に細かく口を出し、ときには責めるような言い方をすることもあったと聞いていました。そして結婚後は、その矛先が夫だけでなく私にも向けられるようになりました。その結果、私たちは少しずつ義母との距離を取るようになり、今では顔を合わせない状態が続いていたのです。
すると次の瞬間、義母は夫の戸惑いなどまるで気にしていない様子で「今ね、あなたたちの家にいるのよ。ちょっとの間ね、一緒に住もうと思って! 今どこにいるの?」と言い放ったのです。 続けて「だって、あなたたち、最近ちっとも顔を出さないじゃない。お父さんと2人きりの生活にも飽きちゃったし! それに、あなたたちの家なら部屋も余ってるし立地もいいし♡ いいじゃない」 その言葉を聞きながら、胸の奥がざわざわと落ち着かなくなっていきました。 私たちが意図的に距離を置いていることに、義母はまるで気づいていないようでした。
しかし――それ以上に気になったのは、義母の言葉の中にあった、ある一言でした。
勝手すぎる“同居宣言”
「今ね、あなたたちの家にいるのよ」
その言葉の意味を考えた瞬間、胸の奥に広がっていた嫌な予感が一気に現実味を帯びてきました。まだ状況を飲み込めないまま夫の横顔を見つめていると、夫の表情はさらに険しくなり、低い声で「……どういうことだよ。なんで俺たちの家にいるんだ」と問いただします。すると義母は、あっけらかんとした様子で「だから! 一緒に住もうと思ったから来たのよ」と、まるで当然のように言うのです。私と夫は思わず言葉を失いました。夫は怒りを抑えるように息を吐きながら「誰が同居なんて了承した? 勝手に来るなって、前にも言ったはずだろ」と、はっきりと言いました。すると義母は、少し不満そうに「そんな細かいこと言わなくてもいいじゃない」と一言。続けて「それにね、ちゃんと準備もしてあるのよ。あなたたちが帰ってくる前に、家の中も少し整えておいたから」と言うのです。
夫が「整えたって、どういう意味だよ」と、問い返しました。すると義母は、得意げな声で「だって、この家、物が多すぎるのよ。使ってなさそうな物がたくさんあったから、いらないと思った物はまとめておいたわ! 買い物でも行ってるの? 早く帰ってきなさい♪」と言い放ったのです。その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がざわりと揺れました。 勝手に家に入り、勝手に物を触り、まるで自分の家のように振る舞っている――その非常識さに、言葉が出てきませんでした。それでも義母は、こちらの動揺などお構いなしに「むしろ感謝してほしいくらいよ? 主婦なんだから、ちゃんと整理整頓くらいできないと恥ずかしいわよ」と言うのです。
その一言に、思わず息をのみました。 ここまで勝手なことをしておきながら、まるでこちらが悪いかのような言い方をするなんて――。 夫の手が、ぎゅっと握りしめられているのが見えました。そして次の瞬間、夫はついに「ふざけるなよ……!」と声を荒げたのです。
義母が入り込んでいたのは…
夫はしばらく黙っていましたが、低く落ち着いた声で言いました。
「何、勝手に入ってんだよ! そこには住んでないんだよ」
電話の向こうが、一瞬静まり返りました。義母はまだ、その言葉の意味を理解できていないようで「……は? 何言ってるの?」と一言。すると夫は「半年前に引っ越したんだ。その家は、今は友達に貸してる家なんだよ。合鍵、返してもらってなかったからな。また勝手に来るだろうと思って、あえて鍵はそのままにして友人に貸したんだ。今お前が触ってるのは、俺たちの物じゃなくて『他人の荷物』だよ」と告げたのです。その瞬間、電話の向こうが完全に沈黙しました。 そして次の瞬間、義母の声がわずかに震え「え……? じゃあ、この家は……」と呟いたそのときでした。電話の向こうで、玄関の開く音がしたのです。続けて「ちょっと、あなた誰ですか!? 不法侵入ですよ!」という声が響きました。その声の主は夫の友人でした。義母は慌てて「ち、違うの!ここは息子の家で! ちょっと!どうにかしなさいよ!」と、夫に助けを求める声が……。
すると夫は「不法侵入で警察に突き出されるか、二度と俺たちに関わらないと誓って今すぐ消えるか。好きな方を選べよ」と言い放ったのです。実は友人に家を貸すとき、夫は“以前の鍵を義母が持ったままになっているかもしれない”とだけ伝えていたのです。義母が本当に来ると決めつけていたわけではなく、もしものときは連絡してほしいと頼んでいました。
義母は何かを言い訳するように叫んでいましたが、その声は次第に小さくなり「ごめん……」と呟いたのを最後に声が聞こえなくなりました。それ以来―― 義母から私たちに連絡が来ることは二度となく、平穏な日々を過ごしています。
◇ ◇ ◇
家族という関係は、ときに距離感を見失わせてしまうのかもしれません。どれほど近しい間柄でも、越えてはいけない一線はあるのでしょう。違和感を見過ごさず、自分たちの暮らしを守るために線を引くことが大切なのかもしれません。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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