インセンティブ制度もありましたが、夫は積極的に働こうとはせず、どこか他人事のような様子。このままでは生活が成り立たないと思い、私は結婚前に勤めていた会社へ連絡し、フルタイムで働くことにしました。
共働きになっても変わらない夫
それまでは夫が仕事に専念できるよう、家事を一手に引き受けていた私。しかし仕事を再開することになったため、私は夫にこう伝えました。
「これからは共働きになるから、あなたも家事をしてほしい」
しかし夫は、あっさりこう言い放ったのです。
「俺が家事をやらない人間だって、結婚前からわかってたよね?」
独身時代から、夫は家事が得意ではありませんでした。結婚後、私が体調を崩しても、何もしてくれなかったことは鮮明に覚えています。
しかし、状況が変わった今、少しでも協力してほしかった――夫の返事を聞いて、私は胸の奥がスーッと冷たくなっていくのを感じました。
その後も何度か話し合いを試みたのですが、夫の態度は変わりません。私はこのまま夫と暮らしていくべきなのだろうかと思い悩むようになっていきました。
突然の来客宣言と無茶な料理の要求
ある日の朝、夫が突然こう言いました。
「今日の夜、職場の人たちをうちに連れて来るから」
聞けば、新人歓迎のための食事会をわが家で開くことにしたとのこと。しかも、事前の相談もなく勝手に決めていたのです。
しかし、私は今日もフルタイムで仕事。そもそも平日の朝にそんなことを言われても、準備できるはずがありません。
困惑する私に対して、夫は軽い口調で続けました。
「適当にお菓子つまんでるからさ、帰ってきたら料理よろしく」
「唐揚げとポテサラでいいからさ!」
思わず言葉を失いました。
唐揚げもポテトサラダも、決して“簡単な料理”ではありません。下ごしらえにも時間がかかるものです。
「今日は無理だよ」
「仕事もあるし、そもそも食材の準備もしてないし」
そう伝えたのに、夫は聞く耳を持ちません。結局怒りを抑えきれないまま、私は仕事へ向かいました。
想定外の光景に凍りついた夫
その日の夜、20時を過ぎて帰宅すると、リビングにはすでに夫と職場の方々の姿がありました。テーブルの上には、宅配ピザの箱が並んでいます。
夫の職場の方々は私を見るなり、「急にお邪魔してしまってすみません。お仕事だったと先ほどうかがって……」と丁寧に頭を下げてくださいました。
しかし夫はというと、「遅いよ。早く唐揚げとポテサラ作って」と、不満げに言ってきたのです。
私は帰りに買ってきた食材をテーブルに置き、静かに言いました。
「簡単なんでしょ? 自分で作ればいいと思う」
すると夫は顔をしかめ、「なんでだよ! 家事はお前の仕事だし、そんなに手間かからないだろ。さっさと作れよ!」と声を荒らげました。
その瞬間、場の空気が一変。そして夫の同僚の一人が、はっきりとした口調で言ったのです。
「唐揚げもポテトサラダも、ちゃんと作ると大変ですよ」
さらに別の方も続けました。
「うちも共働きですが、夕飯は交代で作っています。分担しないのはおかしいと思います」
「それに、そんな言い方はないですよ。奥様に失礼です」
次々と夫に向けられる厳しい言葉。夫は驚いて「え……」と言ったきり黙り込み、言い返すこともできないようでした。
家事をしない夫のその後
結局、その日はそのままお開きに。
夫の職場の方々は帰り際に「後片付けを手伝います」と言ってくださいましたが、「大丈夫です。夫に任せるので」とお伝えし、お見送りしました。
夫と2人きりになったあと、私は静かに口を開きました。
「あなたと暮らすのは、もう限界。離婚も考えているから」
夫はようやく事の重大さに気づいたのか、顔色を変え、必死に謝ってきました。
「本当に悪かった。変わるから、もう一度チャンスをください……」
その言葉を受け、すぐに結論を出すのではなく、しばらく様子を見ることにしました。
それからの夫は、以前とは見違えるように変わりました。仕事にも真剣に取り組むようになり、収入も少しずつ回復していったのです。
休みの日には自ら家事をするようになり、料理にも挑戦していました。実際にやってみて、家事の大変さをようやく理解したようでした。
あのとき同僚の方々が指摘してくれたことが、夫にとって大きな転機になったのだと思います。
今回の出来事で、夫婦はどちらか一方が我慢する関係ではなく、支え合うものだと、改めて実感しました。相手のやさしさに甘えるのではなく、お互いに思いやりを持ち続けることが大切なのだと、今では心からそう思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。