「玉の輿に乗るから別れて」婚約者の裏切り
帰宅すると荷造りをしていた彼女は、勝ち誇った顔で言い放ちました。
「私、あなたの会社の社長の息子にプロポーズされたの。だから今日で終わり。私は次期社長夫人になるんだから!」
彼女の指には、巨大な石がついた指輪が輝いていました。
「社長の息子……? うちの会社の息子さん、まだ5歳だけど?」
僕が呆然として問い返すと、彼女は鼻で笑いました。
「はあ? 先週バーで知り合った息子さんは20代よ。ちゃんと名刺ももらってるし、会社のこともよく知ってたわ。家庭が複雑で血のつながらない兄弟もいるらいしいけど、もうすぐ彼が継ぐんですって。あなたみたいな下っ端が知らないだけよ」
彼女は僕の言葉を「負け惜しみ」だと決めつけ、浮かれた様子で家を出て行ってしまいました。
衝撃の「婚約相手」の正体
翌日、僕は複雑な思いを抱えながら出社しました。実は、僕の勤める会社の社長とは家族ぐるみの付き合いがあり、週末に社長の自宅に招かれることもある仲です。社長の息子さんは間違いなく、まだ幼稚園児。
気になった僕は、昼休みに社長にそれとなく相談してみました。
「あの……社長。昨日、どこかのバーで『社長の息子』を自称する男が、僕の婚約者にプロポーズしたらしいんです。心当たりはありますか?」
すると社長は、苦虫を噛み潰したような顔で答えました。
「……またあいつか。実は、私と苗字が同じなのをいいことに、外で僕の息子だと嘘をついて女性を騙し回っている元社員がいるんだ。会社としても弁護士を通じて警告し、警察に被害届も出しているんだが、住所を転々としていてなかなか尻尾を掴ませないんだよ……」
僕は耳を疑いました。彼女が「次期社長夫人」と崇めていた相手は、素行不良で退社した赤の他人だったのです。
「やっぱり彼女は騙されている」
僕は真実を伝えようとすぐに彼女に電話しました。しかし、彼女は僕の話を遮るようにこう捲し立てたのです。
「まったくしつこいわよ! 私たちはもう終わりだって言ったでしょ。これから彼と高級レストランでデートなんだから邪魔しないで! もう貧乏な平社員と話してる暇なんてないの。二度とかけてこないで!」
一方的に電話を切られ、着信拒否までされてしまった僕。「せめて真実だけでも……」という僕の最後の優しさは、彼女自身の強欲さによって完全に打ち砕かれたのでした。
勘違いの末路
数週間後、真っ青な顔をした彼女が戻ってきました。
「あの男、偽物だったの! 貯金も全部持ち逃げされて……。この指輪も質屋で『ただのガラスだ』って言われたわ! 警察にも行ったけど、私が自分からお金を渡しちゃったから、すぐには動けないって……。ねえ、あなたから社長に言ってなんとかしてよ!」
泣きつく彼女に、僕は静かに首を振りました。
「『社長の息子』という肩書きと、ガラス玉に目がくらんで僕を捨てたのは君だよね。中身も見ずに飛びついた結果なんだから、自分で責任を取るべきだよ」
彼女は泣き叫びましたが、時すでに遅し。彼女には婚約破棄という事実だけでなく、男に貢いだ多額の借金まで残ったそうです。
一方、僕は独り身に戻りましたが、あの一件で「自分にとって本当に大切な価値観」が明確になりました。今は仕事に打ち込みつつ、次は内面をしっかり見つめ合える相手と出会いたいと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。