お住まいを決める際には、建物の外観や設備、駅やバス停などからの距離、物件価格やローンの審査、日当たりや周辺の環境など、優先順位はご家庭それぞれかと思いますが、自治体(都道府県・市区町村)ごとに異なる行政サービスをお住まい選びのポイントの一つに挙げる方も増えてきました。しかし、行政サービスのどのような点が異なるか分かりにくい点もあると思います。
今回は、子育てに関する行政サービスを中心とした比較のポイントについてお伝えします。
行政サービスを比較して住まいを決める?
お住まいを選ぶ際に、具体的な物件が決まっていればこの限りではないのですが、候補がいくつかある際には物件価格は大きな要因と思います。しかし、その後の行政サービスの状況によっては医療や教育費に支払う金額が100万円以上の差となることがあり得ます。
お住まいの選択肢に、複数の市区町村になる場合は、その市区町村の行政サービスがどうなっているか確認をすると良いでしょう。
子育てに対する助成(手当)制度
児童手当や幼児教育の無償化などは国の制度ですので、原則どの自治体でも同じ内容ですが、医療や教育の助成は独自の制度や基準で実施している自治体もあります。自治体で異なる行政サービスの主なポイントをあげると、主に3つの分野になります。
【医療の助成】
“乳幼児医療費助成”は全国で実施されている制度ですが、対象となるお子さんの年齢や保護者の所得状況、自己負担金等は自治体によって基準が異なります。例えば、対象となるお子さんの年齢で最も多いのは15歳年度末(中学校卒業まで)であることが多いのですが、早い自治体では小学校入学前まで、遅い自治体では22歳年度末(4年制大学卒業まで)となっています。最大で16年間異なると仮に年2万円の医療費がかかるとした場合、総額32万円も医療費の支払いが異なることになります。
【教育の助成】
基本的には多くの自治体で所得の低い世帯向けに奨学金や助成金が用意されていますが、所得基準が緩い制度もあります。一例をあげると東京都では、“私立高等学校等授業料軽減助成金”制度が実施され、最大で1年あたり337,200円(2019年度)の授業料が軽減されます。年度によって金額は変わりますが、この金額が3年間適用されれば、約101万円にもなります。医療の助成と合わせて、教育の助成についても確認をされると良いでしょう。
【その他の助成】
医療や教育以外に子育て中の世帯やお子さんに手当を支給する自治体があります。以前にご紹介した東京都江戸川区の“乳児養育手当”や、京都府南丹市の“子育て手当”等がその一例です。これ以外にも第3子以降のお子さんに手当を出したり、ひとり親の世帯に手当や助成を出したりする自治体もあります。自治体によって内容が異なるので、こちらもホームページや担当部署に確認しましょう。
地方税等の比較
お子さんに対する手当・助成だけでなく、毎年かかる地方税等も自治体によって異なります。同じような住環境であれば、税負担が少ないほうが手取りに回りますので、地方税の状況を確認されると良いでしょう。
【住民税(都道府県民税・市区町村民税)】
前年分の所得にかかる税金です。住民税は原則として、地方税法という法律に基づいているため、ほとんどの市区町村で同じ税率ですが、37府県2市で住民税の超過税率(基本税率より高い税率・金額を設定)を適用しています。お住まいの自治体が該当するかどうかは、総務省の「超過課税の状況」をご確認ください。また、名古屋市では2019年時点で従来の税率に対して5%減税が実施されています。
【固定資産税】
土地や建物などの所有者にかかる税金です。固定資産税は標準税率が1.4%ですが、153の市町村で標準税率の1.4%を超えています。税率を確認したい場合は、自治体のホームページまたは税務担当部署へ照会するようにしましょう。
【国民健康保険】
自営業者・フリーランスが加入する国民健康保険の保険料・保険税は市区町村によって計算基準が異なります。一部の市区町村では固定資産税のある国民健康保険加入者には“資産割”と呼ばれる固定資産税をベースに保険料の一部を計算基準に含めているところもあります。
お引っ越しをする際の選択肢に複数の市区町村がある場合、物件や住環境等で決め手に欠ける場合には行政サービスがどうなっているかも判断基準の一つに入れてみても良いと思います。以前はなかった制度ができたり、以前はあった制度がなくなったりする可能性もありますので、検討の際にはホームページや役所・役場等で最新情報を確認することをおすすめします。