「貧乏だから買ってもらえないの?」
娘が同級生から「貧乏」「ボロ家」とからかわれている――。その事実を知ったとき、私は胸が締め付けられるようなショックを受けました。発端は、娘が家でぽつりと漏らした言葉でした。
「私の使っている物って、そんなにおかしいかな……」
よくよく話を聞いてみると、同じクラスの女の子から、短くなった鉛筆や使い込んだ筆箱を見て「貧乏だから新しい物を買ってもらえないんだ!」と笑われたというのです。娘の話によると、その子のお父さんは地元で有名な企業に勤めているらしく、普段から持ち物を自慢することが多いのだとか。さらに、私たちが住んでいる築70年の年季の入った家のことも、「あんなボロ家にしか住めないんだね」とばかにされているとのことでした。
娘は「物を大切にするのは恥ずかしいことじゃないよね?」と気丈に振る舞っていましたが、傷ついているのは明らか。私は「気にしなくていいよ、スルーしよう」とアドバイスし、娘もそれに従っていたようですが、事態はさらにエスカレートしていったのです。
「親切心」で捨ててあげた??
ある日、学校から一本の電話がかかってきました。娘の体操着がそのクラスメイトにごみ箱に捨てられ、トラブルになったというのです。
慌てて学校へ駆けつけると、そこには相手の女の子とその母親の姿がありました。先生は事情を説明し、親子に謝罪と体操着の弁償を促しました。ところが、その母親は悪びれる様子もなく「うちの子、親切なことをしただけみたいですよ」と言ってのけたのです。
私があっけに取られていると、彼女はさらにこう言い放ちました。
「おたくの娘さんの体操着、あまりに使い古されていたからごみと間違えたみたい。親切心で捨ててあげただけです」
そして、急いで駆けつけた私の普段着を上から下まで眺め、「まぁ、いろいろなご家庭がありますものね」と鼻で笑ったのです。謝罪どころか侮辱され、私は怒りで言葉を失いました。先生が間に入ってその場はなんとか収まりましたが、到底納得できるものではありません。あの母親には、正論や常識は通用しないでしょう。娘には引き続き堂々としているよう伝え、どうにか一矢報いる方法はないかと、私はひとり策を練ることにしたのです。
授業参観で知ったまさかの事実
あの出来事から数週間後、小学校で授業参観がありました。あの母親と顔を合わせるのは気が重かったものの、娘の学校での様子を見たくて、夫とともに参加することにしました。
この日はたまたま急ぎの仕事が入ったため、私と夫はいつもの節約スタイルではなく、仕事用のスーツのまま学校へ。少し遅れて教室の後ろに入ると、すでに保護者たちが集まっています。仕事モードで到着した私たちの姿を見た相手の母親は、いつものラフな格好とは違う私たちを見て、少し動揺しているようでした。
すると突然、一人の男性が夫に駆け寄ってきたのです。
「あれ……? 社長と副社長じゃないですか……! お子さんが同じクラスだったとは!」
声をかけてきたのは、なんとわが社の社員。その母親は「え、どういうこと……」とそわそわし始めました。実は、この社員こそが嫌がらせをしてくる同級生の父親だったのです。
暴かれた虚栄心
質素な暮らしを好んでいるものの、実は、私と夫は地元企業の社長と副社長。学校では経営者であることを一切公言していなかったため気づかれなかったのでしょうが、決して貧乏だとばかにされる筋合いはありませんでした。
授業参観が終わった帰り際、夫が「さっきは驚いたよ。まさか君の娘さんが、うちの子と同じクラスだったとはね!」と声をかけると、部下であるその父親は隣にいた妻を紹介しようとしました。私はこの機会にと、意を決して先日の体操着の件とその母親からの心ない言葉を彼に報告したのです。
自分のあずかり知らないところで妻がそんな嫌がらせをしていたと知り、その父親は「まさか妻がそんなことを……!?」と狼狽。大慌てで自分の妻と娘を人のいない場所に連れ出しました。そして事実関係を問いただすと、私たちの前に来て平謝りをして去っていったのです。
後日、相手の父親から改めて謝罪の連絡がありました。聞けば、その母親は普段から見えを張るために身の丈に合わない買い物などで散財し、借金まで作っていたそう。今回の件でその身勝手な振る舞いや虚栄心が明らかになり、相手の父親は娘の教育のためにも離れて生活したほうがいいと、離婚することになったと聞かされました。
それ以来、娘がからかわれることはなくなり、毎日楽しく学校へ通っています。身に着けている物や住んでいる家に関係なく、娘にはたくさんの友だちを作ってほしいと思っています。
◇ ◇ ◇
物を長く大切に扱う姿勢は、とても素晴らしいことです。その人の価値は、住んでいる場所や持っている物だけで決められるものではないはず。目に見えるものだけで他人を判断するのではなく、相手が大切にしている思いを尊重できる気持ちを忘れずにいたいですね。