婚約者の“妹”から届いた突然の連絡
やさしく丁寧な文面のAちゃんは、とても控えめな印象の女性でした。中学生のころから引きこもりで、人付き合いが苦手なこと、自分の見た目や性格にも自信が持てないこと、普通の20代の女性とは違う気がして不安なこと……。彼女は少しずつ、自分のことを打ち明けてくれたのです。
私は、見た目やこれまでの経緯で人を嫌うつもりはありませんでしたし、むしろ勇気を出して連絡してくれたことがうれしく感じていました。結婚式には出席したい、といった話までしてくれて、「もしかしたら会える日も近いのかもしれない」と思うように。
彼からは「妹は人前に出るのが苦手だから、式に来られないかもしれない」と聞いていたので、そう言ってもらえたことがなおさらうれしかったのです。
「結婚したら…」彼の妹から意外な質問
それから私たちは、ときどきLINEでやり取りを重ねるようになりました。最初は遠慮がちだったAちゃんも、回数を重ねるごとに少しずつ心を開いてくれているように感じられ、私も「力になれたらいいな」という気持ちで接していました。
仕事の昼休みにやり取りをしたときには、食生活や働き方の話にもなりました。私は普段から手作りのお弁当を持参していること、太りやすい体質なので食事量やカロリーに気を付けていること、結婚後もすぐに仕事を辞めるつもりはないことなどを、何気なく話していたのです。
するとAちゃんは、「結婚したら専業主婦になるものだと思っていた」「夫を支えようという気持ちはないのか」と、少し意外な反応を見せました。さらに、「一緒に住んでくれたらいいのに」とまで言われ、私は驚きつつも、寂しさや不安の裏返しなのだろうと受け止めていました。
その後、彼の友人たちとのバーベキューに誘ってみたこともありましたが、Aちゃんははっきりと断りました。それでも「結婚の挨拶のときには会います」と言ってくれたため、私はその日を楽しみにしていたのです。
“Aちゃん”の正体を知り、頭が真っ白に
その数週間後のこと。いつものように届いた連絡は、これまでとはまったく違うものでした。送ってきた相手は、Aちゃんではなく、彼のお母さんだったのです。突然の名乗りに戸惑う私に対し、相手は平然と「今まであなたとやり取りしていたのは私」だと告げました。
彼には引きこもりの妹がいるものの、私が“Aちゃん”だと思ってやり取りしていた相手は、その妹本人ではなかったのです。さらに私のことは事前に調べていたこと、そして“Aちゃん”としていろいろ話を聞きながら、息子の嫁としてふさわしいかどうかを見極めていたのだと話し始めたのです。
あまりにも衝撃的で、一瞬、意味が理解できませんでした。しかも相手は、「嫁試験の結果は70点」「大したスペックじゃないけれど一応合格」と、まるで品定めでもするかのように言ってきました。翌日に予定していた結婚の挨拶についても、「合格したのだから来てもいい」と当然のように口にしたのです。
私はその瞬間、一気に気持ちが冷めていくのを感じました。相手を試すようなやり方にも、それを当然のように語る態度にも、どうしても受け入れられなかったのです。この先、こんな価値観の中で関係を築いていくことはできない——そう思った私は、「不合格でいいです。婚約も破棄します」と伝えました。
まだこのときは、彼が義母の行動を知っていたとは思っておらず、彼に話を聞きたいという気持ちも残っていましたが、それでも一度、この関係を見直さなければならないと感じたのです。
“合格”を喜ぶ彼に、恐怖を感じた私は
その後、私はすぐに彼に事実を確認しました。すると、母親が“彼の妹・Aちゃん”として私とやり取りしていたことを、彼は最初から知っていたのです。しかも驚いたことに、彼は母親のやり方を止めるどころか、私が“合格”したことを喜ぶような態度まで見せました。
さらに話を聞くうちに、結婚後は彼の実家で同居するつもりだったこと、引きこもりの妹の面倒を私に見させる前提で話が進んでいたことまでわかりました。私には何の相談もなく、勝手に将来を決められていたのです。
引きこもりの家族がいること自体を、私は問題だとは思っていませんでした。実際、彼の妹本人が悩みを抱えていたとしても、頭ごなしに否定するつもりはなかったと思います。
けれど今回の問題はそこではありません。嘘を重ねて私を試し、最終的には都合よく家に取り込もうとしていたことが、どうしても許せなかったのです。私はこの人とは結婚できないと、はっきり確信しました。
婚約破棄の末に待っていた彼の末路
婚約を解消したあとも、彼の母親からはしつこく連絡が来ました。結婚を考えていたのに別れるなんておかしい、もう一度話し合ってほしい――。そんなふうに何度も引き止められましたが、私の気持ちは変わりませんでした。
私は彼に別れを告げ、婚約は正式に破棄しました。あとから聞いたところによると、彼は婚約破棄のショックで仕事を辞め、実家に戻ったそうです。
けれど、もう私には関係のないことです。あのまま何も知らずに結婚していたらと思うと、ぞっとします。傷ついたのはたしかですが、結婚前に本性や家族の考え方に気づけたことだけは、不幸中の幸いだったのかもしれません。
しばらくは恋愛から離れて、自分の気持ちを立て直す時間を大切にしたい――。今はそう思っています。
◇ ◇ ◇
結婚前に相手やその家族の価値観を知ることは大切ですが、嘘をついて相手を試したり、品定めするような行為は決して許されるものではありませんよね。結婚は、本人同士だけでなく相手の家族との関わりも欠かせないもの。違和感を覚えたときは見過ごさず、自分自身を大切にできる選択をしていきたいですね。
【取材時期:2026年4月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています
※一部にAI生成画像を使用しています