高級タワマンの謎ルール
兄の部屋は3階にあり、私は期間限定で同居することになりました。引っ越してすぐ、隣人のA子さんが親切に声をかけてくれました。
雑談の流れで、私は共用ラウンジの話題を出しました。このマンションには2階のロビーラウンジと、最上階のスカイラウンジがあり、住人なら予約制で利用できると案内に書かれていたからです。
するとA子さんは少し困ったように言いました。
「表向きはそうなんだけど、実際にはスカイラウンジは20階以上の住人たちが仕切っているの」
「低層階の人は使っちゃダメっていう、暗黙のルールがあるのよ」
私は耳を疑いました。実際にはそんな決まりはありません。ですがA子さんによると、高層階には会社役員や経営層の家庭が多く、逆らいにくい空気があるのだそうです。私は、住む階数だけで立場が決まるようなその雰囲気に、強い違和感を覚えました。
スカイラウンジで味わった屈辱
後日、私は共用施設の確認も兼ねて、スカイラウンジを見に行きました。ガラス張りの開放的な空間で、景色も素晴らしく、「せっかくなら一度利用してみたい」と思ったのです。
そこへ数人の女性たちが入ってきました。中心にいたのはB美さんとC絵さん。ブランド品に身を包み、堂々とした態度の2人でした。
私に気付くなり、「あなた、どこの部屋?」「何階に住んでるの?」「ご主人は何のお仕事?」と次々に質問してきました。
私が「3階の兄の家に、しばらく住んでいます」と答えると、空気が変わりました。
「3階? しかも未婚で居候ってこと?」
「ここは20階以上の人たちの場所なの。低層階の人は遠慮してもらえる?」
私は「そんなルールないですよね……」と言いましたが、B美さんは食い気味に「は?」と言いながらギロッとにらんできました。私はあまりの圧に言葉を失いました。それ以上何も言い返さずに退室しましたが、悔しさと情けなさで胸がいっぱいになりました。
兄と管理会社が動いた結果
帰宅後、その出来事を兄に話しました。すると兄は驚いた様子で、「そこまでひどくなっていたのか」と言いました。
実は兄は、このマンション管理組合の理事会メンバーの1人だったのです。以前から一部の住人による共用施設の私物化や、他の住人への高圧的な言動について相談が寄せられており、実態確認が進められていたところでした。
後日、管理会社立ち会いのもと、共用ラウンジ利用のルール確認会が開かれました。そこでもB美さんたちは、
「低層階の人が来ると雰囲気が悪くなる」
「利用者は選ぶべきよ」
などと発言。周囲は騒然となりました。しかし、管理会社の社員はきぜんとした態度で、共用施設は管理規約に従って対象となる住人が利用できること、階数や家族構成で利用を制限するルールは存在しないことをB美さんたちに伝えました。
それでも反論を続けるB美さんたちに、社員が「威圧的な言動や迷惑行為には正式に対応します」と明言したところ、これまでB美さんたちの言動に黙って耐えてきた他の住人たちも、次々と賛同の声を上げたのです。
B美さんたちは凍り付いたような表情でその場に立ち尽くし、何も言い返すことなく去っていきました。
崩れた暗黙のルール
その後、B美さんたちは理事会から正式に注意を受け、以前のような振る舞いは見られなくなりました。
スカイラウンジは本来の形に戻り、階数に関係なく予約制で利用できるようになりました。A子さんも「やっと普通になったね」とホッとした様子でした。
私も後日、A子さんと一緒にスカイラウンジでお茶を楽しみました。あの日は追い返されてしまいましたが、今度は堂々と景色を眺めることができました。
住む場所や肩書きではなく、人としてどう振る舞うかのほうがずっと大切なのだと、改めて感じた出来事でした。
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立場や見た目で人を判断し、共用の場で優越感を振りかざしてしまうと、周囲からの信頼は失われてしまいますよね。誰もが気持ちよく暮らせる環境は、一部の人の思い込みではなく、互いへの配慮や共通のルールで成り立つのだと感じさせられるエピソードでした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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