「俺が社長になる」息子の暴走
夫の会社では、私は経理や人事の一部を手伝っており、役員としても名を連ねていました。夫が亡くなった後、私は今後の会社運営について息子と話し合うことにしました。
息子は以前から仕事が長続きせず、転職を繰り返していました。それでも夫は、「いつかは責任感を持ってくれるはずだ」と期待を捨てずにいたのです。
そんな息子は、「社長」という言葉を聞いた途端、急に態度を変えました。
「俺が父さんの後を継ぐよ」
「母さんはもう引退すればいいだろ?」
私は驚きながらも、冷静に伝えました。
「会社経営はそんなに簡単なものじゃないの。まずは現場を知って、社員や取引先から信頼されることが大切よ」
すると息子は不満そうな表情を浮かべ、「すぐ社長になれないのかよ……」と不機嫌そうにつぶやきました。私は不安を感じながらも、「少しずつでも責任を学んでくれれば」と考え、まずは営業や取引先対応など、現場の仕事から経験させることにしました。
崩れていった社内の空気
ところが息子は、正式に経営を任されたわけでもないにもかかわらず、次期社長であるかのように振る舞うようになりました。
長年会社を支えてきたベテラン社員に対して、
「古いやり方の人間はいらない」
「使えないおばさんはクビにしたほうがいい」
と言い放ち、社員の契約内容にまで口を出そうとしたのです。さらに営業を任せてみると、息子は「利益率が高ければ問題ない」と言い、取引実績や信用面の確認が十分でないまま、新規業者との契約を進めようとしていました。
私は何度も、「会社は目先の利益だけで成り立つものじゃない」「社員や取引先との信頼が一番大事なのよ」と伝えました。ですが息子は、「俺は父さんの考え方とは違う」と言って、聞く耳を持ちませんでした。
そしてある日、息子がこう言い放ちました。
「もう母さんは口を出さなくていい」
「今日から俺が会社を仕切る」
私は、その言葉でようやく覚悟を決めました。
私と社員たちが選んだ道
息子の言動に不安を感じていたのは、私だけではありませんでした。長年会社を支えてくれていた社員たちも、「このままでは会社が立ち行かなくなる」と危機感を抱いていたのです。
そこで私は、役員や古参社員たちと何度も話し合いました。すると、「このままでは取引先の信頼を失ってしまう」「現場の士気も限界です」と、息子の言動を不安視する声が次々に上がったのです。
私は改めて息子に向き合いました。
「あなたをいきなり社長にするつもりはなかった。まずは現場で信頼を積み重ねてほしかったの。でも今のままでは、社員も取引先も安心して任せられないのよ」
息子は最初こそ反発していましたが、社員たちも同じ思いだと知ると、次第に言葉を失っていきました。そして最終的に、息子は会社を退職することになったのです。
その後、社内には少しずつ落ち着きが戻り、社員たちも再び前向きに仕事へ向き合えるようになりました。厳しい決断ではありましたが、距離を置いたことで、息子自身も少しずつ現実と向き合うようになったのかもしれません。
今はまた、社員たちと支え合いながら働いています。これからも亡き夫に恥じないよう、人とのつながりを大切にしながら会社を守っていきたいと思っています。
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「社長」という肩書きだけを見ていた息子と、長年会社を支えてきた主人公との差が浮き彫りになった今回のお話。目先の利益よりも、社員や取引先との信頼を大切にしてきたからこそ、多くの人が主人公の判断を信じられたのでしょうね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※AI生成画像を使用しています
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