夫は昔ながらの価値観を強く持っていて、「家事は女性がするもの」という考えを当たり前のように口にするタイプだったのです。
私もフルタイムで働いていたにもかかわらず、掃除や洗濯、料理といった家事はほぼすべて私任せ。最初は「そのうちわかってくれるだろう」と思っていましたが、状況は変わりませんでした。
私が高熱を出して寝込んだことがありました。その際も夫は、「熱があるのはわかったけど、俺の夕飯はどうするの?」と当然のように言ったのです。心配する言葉より先に食事の話が出たことに、私は大きなショックを受けました。
このままではいけない、そう思った矢先のことです。
繁忙期に突然言われた一言
そんなある日のこと。私は繁忙期で残業が続いていました。以前からその日は帰宅が遅くなると伝えていたにもかかわらず、朝食中に夫が突然こう言ったのです。
「今日の夜、会社の同僚が何人か来て飲み会するから」
「料理と掃除、よろしくな」
私は思わず耳を疑いました。
「今日は残業だから遅くなるって前から話してたよね? 自分でおもてなしして」
そう伝えると、夫は不機嫌に。
「だから何? 家のことはちゃんとやってよ」
「早く帰ってきて準備すればいいだろ」
共働きなのに、なぜ私だけが仕事を調整しなければならないのか――夫婦としての考え方に大きなズレがあることを、改めて実感した瞬間でした。
私は何も言わず、予定通り仕事へ向かいました。
明らかになった夫の考え方
その日の夜、予定通り残業を終えて帰宅すると、リビングではすでに夫と同僚たちが食事をしていました。
スマホには夫から何度も着信やメッセージが入っていたので、念のためお酒とおつまみを買って帰宅したのですが、夫なりに買ってきた総菜や宅配サービスを利用して準備したようで、何とか飲み会は成立していたようです。
私があいさつを済ませると、夫は「不出来な嫁でごめんな」「ちゃんと準備しろって言っておいたのにさぁ」と同僚たちに愚痴をこぼし始めました。同僚たちは気まずそうな表情に。
「奥さんもフルタイムで働いてるんですよね……?」
おずおずと言ってきた同僚の一人に、私は強くうなずきました。そして、今朝の出来事を打ち明けたのです。
「今日はもともと残業の日でして……」
「今朝急に、飲み会の準備を頼まれたものですから。準備ができてなくてすみません」
すると同僚の方々は驚いた様子で顔を見合わせたのです。
「それなら家事は分担するのが普通じゃないですか?」
「仕事も家庭も夫婦で支え合うものですよ」
予想以上に率直な意見が次々と出てきました。夫は最初こそ苦笑いを浮かべていましたが、みるみる顔面蒼白になり、次第に何も言えなくなっていきました。
私は夫を責めたかったわけではありません。ただ、私の考え方が特異なものではないことを知ってほしかったのです。
少しずつ変わり始めた夫
同僚たちが帰ったあと、夫は珍しく真剣な表情で話しかけてきました。
「自分ではそんなにおかしいと思ってなかった」
「うちの父親も同じように言っていたから、普通のことだと思っていた」
義母が専業主婦だからうまくいっていたのだということを伝えると、夫は納得したようでした。そして、「これからは家のこともちゃんとやるようにする」と言ってくれたのです。
正直、その場では半信半疑でした。しかし夫は本当に少しずつ行動を変えていったのです。
洗濯物を取り込んだり、休日に掃除をしたり、夕飯作りを手伝ったり……。以前なら考えられなかったことです。
実際に家事を経験したことで、その負担の大きさも理解できたようでした。
数カ月後には、「もっとラクにできるように、便利家電を使おう」と提案してくれ、家事の効率化にも積極的になりました。
今では週末に一緒に料理をすることもあります。結婚当初のような押しつけはほぼなくなり、家のことも自然と相談しながら進められるようになりました。
もちろん完璧ではありません。それでも、お互いの立場や大変さを理解しようとする姿勢が生まれたことで、夫婦関係は以前よりずっと穏やかになったと感じています。
あのとき同僚の方々が率直な意見を伝えてくれなければ、夫は自分の考え方を見直す機会がなかったかもしれません。
夫婦が長く良い関係を続けるためには、「どちらかが我慢する」のではなく、お互いを尊重しながら支え合うことが大切なのだと実感した出来事でした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。