「関係ない!」倒れた妊婦を見捨てる上司
商談先へ向かうため駅前を歩いていたとき、目の前で突然、おなかの大きな妊婦さんが苦しそうに倒れ込みました。私はハッとして「大丈夫ですか!?」と駆け寄ろうとしましたが、上司は私の腕を強く引っ張り、「関係ない! 商談が先だ! 誰かが助けるだろ」と吐き捨てたのです。
しかし、苦しむ妊婦さんを前に、見過ごすことなんてできません。私は上司の手を強く振り切り、「申し訳ありません。先に行ってください!」と伝えました。そして、気分が悪そうな妊婦さんに自分のハンカチを差し出し、救急車が到着するまでそばに寄り添いました。
妊婦さんが搬送されるのを見届けてから上司に連絡すると、上司は「商談には来なくていい! お前は仕事より他人を優先したんだ。今回の商談が駄目になったら、お前の評価にも響くからな」と冷たく言いました。
結局、商談はまとまらなかったようです。私は、自分の行動は間違っていなかったと思いながらも、今後どうなってしまうのかと不安でいっぱいでした。
突然の来客! 手柄を横取りする上司
それからしばらく経ったある日、会社に来客がありました。訪れたのは、品のある男性と、その隣に寄り添う妊婦さん、そして落ち着いた雰囲気の女性の3名。妊婦さんは、あの日、駅前で倒れ込んだ女性だったのです。
聞けば、彼女はある有名企業の社長夫人とのこと。隣にいた男性は社長で、もう1人の女性は秘書でした。私が彼女を助けようとしたとき、上司が電話か何かで会社名を口にしていたようで、それを覚えていた夫人は、夫に事情を話し、わざわざお礼に来てくださったそうです。
「先日は妻を助けていただき、本当にありがとうございました。ぜひ、助けてくださった社員さんに直接お礼を申し上げたいのです」社長がそう言うと、なぜか上司がすぐに前へ出ました。
「ああ、そのとき対応したのは私です。私が部下に救急車を呼ぶよう指示しました」私は耳を疑いました。助けるどころか、妊婦さんを放って商談へ行こうとした上司が、私の行動を自分の手柄にしようとしていたのです。
「助けてくれたのは…」嘘が暴かれた瞬間
しかし、社長夫人は不思議そうに首をかしげました。そしてバッグの中から、見覚えのあるハンカチを取り出したのです。「あなたではありません。私を助けてくださった方は、このハンカチを貸してくださったんです。ずっとお返ししたいと思っていました」
それは、紛れもなく私があの日渡したハンカチでした。社長夫人は私の姿を見つけると、「この方です」と、はっきり告げました。上司の顔は一瞬で真っ青に。さらに夫人は、「この方が私を助けようとしたとき、あなたは『関係ない』『商談が先だ』と言っていましたよね」と続けたのです。
それを聞いたわが社の代表は激怒。「人命を軽視したうえ、部下の善意ある行動まで奪うような人間だったとは」と、上司を厳しく叱責しました。その後、この一件だけでなく、日ごろの部下に対するパワハラ発言も次々と明るみになり、上司はあっけなく降格処分に。
一方、お礼にやってきた社長夫婦は、「困っている人を見過ごさず、誠実に行動できる◯◯さん(私の名前)と、ぜひ仕事をご一緒したい」と言ってくださり、私の会社との取引を前向きに検討してくれることに。後日、思いがけないほど大きな契約が正式に決まり、私はその担当を任されました。
あの日、目の前の人を助けたい一心でとった行動が、こんな結果につながるとは思ってもみませんでした。どんなに大きな仕事を前にしても、人として大切なものを見失わずにいたいと、改めて強く感じています。
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目の前で体調を崩した人がいたら、まずは周囲に助けを求めたり、必要に応じて救急車を呼んだりするなど、できる範囲で行動することが大切です。相手が妊婦さんの場合は、体調が急変している可能性もあるため、こちらも落ち着いて対応したいですね。
また、仕事で成果を出すことも重要ですが、人命を軽視したり、誰かの善意を自分の手柄にしたりする行為は、いずれ自分自身の信用を失うことにつながります。どんなときも、人として誠実な行動を選べるよう心がけたいですね。
【取材時期:2026年5月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。