こんにちは、保育士の中田馨です。1歳を過ぎたころから増えてくる子どもの行動のひとつが「噛みつき」です。保育園のお迎えに行ったときに先生から「今日、お友だちを噛んでしまいました」と報告を受け、「どうして噛むの? どうしたらいい?」と、落ち込んでしまうママもいると思います。
今日は、子どもが保育園でお友だちを噛んだときにどうすればいいかを話します。
どうして噛んでしまうの?
そもそも、どうしてお友だちを噛んでしまうのでしょうか。1歳過ぎたころから、お友だちをたたく、ひっかく、噛むという行動が見られます。子どもは力加減がわかりませんので、大人が「たたいている」と思っていることも、自分では「触っている」と思っていることがあります。「噛む」も最初は、ママへの愛情表現のひとつの甘噛みだったこともあるのではないでしょうか。
また、1歳半~2歳ごろになると、気持ちが先走って噛んでしまうこともあります。このころの子どもは、言葉で自分の気持ちを伝えることができません。たたいたり、噛んだりすることで「イヤなの!」という気持ちを表現していることもあります。
保育士がどのような対応をしているか聞いてみる
子どもがお友だちに噛みついてしまうということは、実は保育園ではよくあることです。一度でも噛む、噛もうとする行動をしている子どもがいたら、お友だちとかかわるときに保育士がそばで見守るようにしています。子どもがどんなときに噛むかはだいたい予想がつくので、9割以上を未遂で止めています。とはいえ、保育士もすべてを完全に止められるわけではありません。
もし、お友だちを噛んでしまったとき、噛んだ子には子どもの目線に行き、目を見て「噛んだら痛い」「噛んだらダメ」ということをその場で伝えています。そして、噛んだ子にも理由があることが多いので「おもちゃを取られて嫌だったんだね」など、気持ちに共感し、「次は『やめて』が言えるといいね」と言います。
噛まなかったけれど噛もうとした場面では、「〇〇ちゃんの持っている、コレが欲しかったのね。〇〇ちゃんが遊び終わってからかりようね」と声かけをします。保育士が子どもたちの仲立ちになり、気持ちを言葉で代弁したり、トラブルがないときに物の貸し借りを遊びを通して実践してみたりします。それを繰り返し何度もおこなっています。
お家でママができること
噛むという行動が見られる時期は「お友だちとのかかわりを教えるチャンス」ととらえましょう。もし、お家で家族を噛んだら、子どもの目を見て冷静に「噛んだら痛い」と伝えることです。このとき、例え愛情表現の甘噛みであっても家族が「イタタタタ~!」と笑顔を見せたり、ものすごく怒るなど大きなリアクションを取ったりしてしまうと「噛んだらママが反応してくれる」と思ってしまう子もいます。
特に笑ってしまうと、遊びの一環として子ども自身が笑って噛んでくることもありますので、噛んでほしくないなら「笑わない」ことが大事です。噛んだらその都度やめさせる。これを繰り返すことが大切です。
いつになったら噛まなくなる?
多くの噛みつきがお友だちとの物の貸し借りのときに起こるので、子どもの年齢ごとの発達と一緒に見てみます。
1歳はお友だち同士の物の貸し借りはできません。目の前にあるおもちゃに執着するのでお友だちが使っていても取ろうとします。そんな場面で噛みつきが起こります。2歳になると大人の仲立ちがあれば、おもちゃの貸し借りができるようになりますが、自己主張が激しくなるので言葉でうまく伝えられず気持ちが先走り、噛んでしまうことがあります。
3歳ごろは、落ち着いた状況であれば、言葉で自分の気持ちを伝えることができるようになります。順番を守ることなどは、その場はできてもまた忘れるのでくり返し教えます。4歳ごろになると、良いことと悪いことの区別ができるようになり社会性が出てきます。
保育園で子どもたちを見ていると、3歳ごろになり、言葉で少しずつ気持ちが伝えられるようになると噛むことも少なくなってきます。
噛むと手や腕に歯型がついて痛々しく、噛んだ側も噛まれた側もつらい思いをします。噛んでしまった相手のお友だちや親には、会ったときに「先日は噛んでしまい、ごめんなさい」という気持ちを一声かけることでお互いのモヤモヤが少なくなります。そして、噛む・たたく・ひっかくなどの子どもの行動は、発達段階でよくあることと捉えつつ、「噛んだら痛い」ということを繰り返し子どもに伝えていきましょう。