しかし半年ほど経ったころから、夫からの連絡が急激に減り始めました。メッセージを送っても既読スルーされることが増え、週末に帰宅することもほとんどなくなりました。
私が「そっちに遊びに行こうか」と提案しても、仕事が忙しい、疲れているからと何かにつけて断られるのです。夫の不自然な態度に、私は少しずつ違和感を抱き始めていました。
突然届いた離婚届と夫の不可解な嘘
仕事が忙しいという夫の負担になりたくなかった私は、無理に会いに行くことは避け、代わりに一通の手紙を書くことにしました。体調を崩していないか心配していることや、離れて暮らす寂しさなど、素直な気持ちを綴りました。
数日後、夫から封筒が届きました。メッセージや電話ではなく、わざわざ手紙で返してくれるなんてと、うれしくなりましたが、封筒を開けて血の気が引きました。
中に入っていたのは、手紙ではなく、夫の署名がされた離婚届だったのです。
パニックになりながら急いで夫に電話をかけると、夫は重々しい声で「不治の病になってしまった」と言い出しました。これから過酷な闘病生活になるため、私に迷惑をかけたくない、悲しむ姿を見たくないから別れてほしいと言うのです。これまで私が会いに行くのを拒んでいたのも、自分の弱った姿を見せたくなかったからだそう……。
私が言葉を失って黙り込んでいると、電話の向こうからかすかに「フフッ」という女性の笑い声が聞こえました。その直後、夫は「今は、その、体調が悪いから!」と一方的に電話を切ってしまいました。
女性の声と、不自然なほどに焦った夫の対応。夫の話はきっと嘘なのだろう――私は、そう直感しました。
義両親と一緒に突撃訪問
抱いた違和感をそのままにはしておけず、私はすぐに義実家へ向かい、事の経緯を説明しました。義両親は「病気」という言葉に最初は戸惑っていましたが、女性の声がしたことや最近の不自然な言動を伝えると、義母の顔つきが変わりました。
「今すぐあの子の家に行こう。明日になれば、あなたが行くことを警戒して証拠を隠すかもしれない」
続けて義父が「今から高速を使えば、夜には着く」と言いました。新幹線なら2時間ほどの距離ですが、ちょうどそのときは、新幹線のダイヤが乱れていて大幅に遅延しているとニュースで取り上げられていたのです。
「新幹線が止まってるからって、きっとあの子も油断してるはずよね。お父さん、運転お願い!」
「◯◯さん(私)、すぐに出かける準備をしなさい。親として息子の嘘や裏切りは見過ごせない」
そう言ってくれた義両親の言葉に甘え、私は義父の車でそのまま夫のマンションへ向かうことにしました。
呆れた真相と身勝手な夫の末路
その後、夫のマンションに到着すると、自宅には不在でした。近くのコインパーキングに車を停め、マンションの入口が見える場所でしばらく待機していると、夫が見知らぬ女性と腕を組んで帰ってきたのです。その姿は、病気のために支えられて歩いているというよりは、恋人と寄り添って歩いているよう……。到底、重病を患っている人には見えませんでした。
私は静かに車を降り、夫に駆け寄りました。「具合が悪いって聞いたから心配で来たの。そちらの方は、病気のあなたを支えてくれている方?」と皮肉を込めて声をかけました。背後から義両親も厳しい表情で現れると、夫は顔面蒼白になり、隣にいた女性も慌てて夫の腕から手を離しました。
義両親は「治らない病気ですって? どういうことか親の私にもきっちり説明しなさい」「ずいぶん元気そうだな。病気を患っているとは思えない。そちらのお嬢さんとはどういう関係なんだ」と詰め寄りました。
すると夫は、もはや言い逃れはできないと悟ったのか、観念してすべてを白状しました。隣にいたのは同僚の女性。夫は、彼女と不貞関係になっていたことを認めました。彼女から「早く離婚して」と急かされたものの、慰謝料を支払いたくないがために「不治の病」と嘘をついたというワケでした。
あまりに自己中心的で不謹慎な言い訳に、義両親も私も呆れ果てました。その場で離婚に向けて話し合うことが決まり、後日、私は夫と不倫相手の双方に慰謝料を請求しました。
その後、不倫の事実は会社に知れ渡ることとなり、2人とも社内で肩身の狭い思いをしていると風の噂で聞きました。
現在、私は無事に離婚が成立し、新しい生活をスタートさせています。元夫とは完全に縁が切れましたが、あのとき味方になってくれた義両親とは、今でもたまに連絡を取り合う良好な関係が続いています。
◇ ◇ ◇
慰謝料を免れるために「不治の病」と嘘をつき、不倫相手と一緒になろうとした夫は、最終的に社会的信用すらも失う結末を迎えました。単身赴任で離れて暮らしているからこそ、夫婦間での誠実なコミュニケーションは不可欠です。それにもかかわらず、妻の思いやりを逆手に取り、不謹慎な嘘で自己保身に走る態度は決して許されるものではありませんね。パートナーの言動に違和感を覚えたら、ひとりで抱え込まず、周囲の信頼できる人たちに相談し、真実を突き止めるために行動を起こしたいですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。