1時間待って現れた宅配員
ある日、事務所で宅配ピザを注文しました。ところが予定時間を大幅に過ぎても一向に届きません。お店へ連絡しても「もう少しで到着します」と言われるばかり。気付けば1時間近くが経過していました。
もうキャンセルしようかと思ったころ、ようやくチャイムが鳴りました。玄関先に立っていたのは、雨でびしょ濡れになった若い外国人男性。自転車で急いで来たのでしょう。
「遅くなりました。すみません」
その顔を見て私は驚きました。彼は数日前、公園で母と散歩していた際に知り合った留学生のAさんだったのです。日本で学びながら働き、将来は自分の店を持ちたいという夢を語っていた好青年でした。
母は慌ててタオルを渡し、「少し休んでいきなさい」と声を掛けました。
話を聞いて見えてきた職場の実態
話を聞くうちに、Aさんはそのピザ店で配達だけでなく、調理や片付け、仕込みまで幅広く担当していることがわかりました。
「最近、人がどんどん辞めてしまって……」
Aさんは困ったように笑います。
実は数日前、私たちもそのピザ店を訪れていました。店内は混雑していたのですが、それ以上に気になったのは店長の態度です。従業員に対して大声で指示を飛ばし、少しでもミスがあると人前で叱責していました。そのときもアルバイトらしき若いスタッフが謝っていましたが、店長は聞く耳を持たない様子でした。
Aさんによると、職場では新人が長続きせず、人の入れ替わりが激しい状況が続いているそうです。
「忙しいのは仕方ないけど、みんな怒られるのが怖くて……」
そう話すAさんの表情に、私は複雑なものを感じました。
母が勧めたのは相談すること
数日後、Aさんが再び事務所を訪ねてきました。どうやら店長から理不尽な叱責を受け、「自分が悪いのかなって思ってしまって……」と自信を失っていたようでした。
そう話すAさんに、母は穏やかに言いました。
「働いていると理不尽なこともある。でも、ひとりで抱え込まなくていいのよ」
そして母は、大学の学生相談室や留学生支援窓口のほか、労働条件について相談できる公的な窓口もあることを教えました。
「まずは誰かに相談してみなさい。状況を整理するだけでも気持ちは変わるから」という母の言葉に、Aさんは真剣な表情でうなずいていました。
その後、Aさんは大学の学生相談室や留学生支援窓口へ相談に行ったそうです。すると、自分だけが無理をしていたことや、働き方について相談する方法があることを知り、少し気持ちがラクになったと話してくれました。
数カ月後に聞いた意外な話
それから数カ月後。Aさんから久しぶりに連絡がありました。聞けば、あのピザ店は相変わらず人手不足に悩まされており、以前より営業時間を短縮して営業しているとのことでした。
一方のAさんは、大学の先輩の紹介で別の飲食店へ移ったそうです。
「今のお店は忙しいけど、みんな助け合って働いています」
そう笑うAさんの表情は、以前よりずっと明るく見えました。母はその話を聞いて、「職場選びもご縁だからね」と静かに言いました。
今回の出来事を通して感じたのは、働く上で大切なのは仕事内容だけではないということです。どんなに人気のある店でも、働く人が安心して働ける環境でなければ長続きしません。
また、悩みを抱えたときにひとりで抱え込まず、信頼できる人や相談先を頼ることの大切さも改めて実感しました。Aさんが環境を変えるきっかけをつかめたのも、誰かに話を聞いてもらえたからこそだったのだと思います。
私も資格取得に向けた勉強を続けながら、困っている人の力になれるような知識と判断力を身につけていきたいです。
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Aさんのように、慣れない環境の中で悩みを抱えていても、「自分が悪いのかもしれない」とひとりで我慢してしまうこともありますよね。今回のお話は、信頼できる人や相談先に話を聞いてもらうことの大切さを改めて感じさせてくれるエピソードでした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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