契約直前で横取りする先輩
A田さんは有名大学出身で、ことあるごとに学歴や実家の話を持ち出す人でした。
「やっぱり仕事は地頭だからな」
「中卒でここまで来られたんだから十分だろ」
そんな言葉を冗談のように言われたこともあります。
さらに困っていたのが仕事の進め方でした。私が時間をかけて進めた案件が契約直前になると、「ここからは俺が担当する」と言って引き継がれてしまうのです。私が「え……でも」と戸惑っていると「中卒の役目は終わりだな」と冷たく笑いながら言い放ちました。
表向きは先輩による最終確認という形でしたが、契約が成立すると成果はA田さんのものになっていました。悔しい気持ちはありましたが、私は目の前の仕事を続けるしかありませんでした。
部長から任された重要案件
そんなある日、部長から呼び出されました。
「次の大型案件を担当してみないか」
突然の話に驚きましたが、部長は「君の仕事ぶりはずっと見てきた。十分任せられると思っている」と言いました。長年積み重ねてきた努力を評価してもらえた気がして、うれしかったのを覚えています。
ところが、その案件のサポート役に名乗り出たのはA田さんでした。部長は少し迷っている様子でしたが、人員の都合もあり、私たちは一緒に案件を進めることになったのです。
しかし実際には、A田さんはほとんど準備をしませんでした。私は不安を感じながらも、資料作成や事前調査をひとりで進めることにしました。
商談で見えた実力差
迎えた商談当日。取引先との打ち合わせが始まると、A田さんはまるで自分が中心で進めてきた案件のように、積極的に話し始めました。
ところが、商品の内容や提案の詳細について質問されると、回答が曖昧になったり、資料を確認する場面が続いたりしました。資料の内容も十分に把握していなかったようです。
私は補足説明をしながら商談を進めました。その結果、取引先からの質問にもスムーズに対応することができたのです。
商談後、取引先の担当者からは、「準備がしっかりされていて安心できました」という言葉をいただきました。
評価されたのは日々の積み重ね
後日、部長から呼び出されました。案件が評価されたことに加え、A田さんについても話があったのです。
実は以前から、案件の引き継ぎ方法や業務への取り組み方について、別の社員たちからも複数の指摘が出ていたそうです。今回の案件をきっかけに、業務分担や案件管理の方法が改めて見直されることになったのだとか。
その後、A田さんは別部署へ異動することになりました。一方で私は担当案件を任される機会が増え、以前横取りされていた取引先も引き継ぐことになりました。
今回の出来事を通して実感したのは、仕事は最後に実力と信頼が評価されるということです。当時は悔しい思いをすることもたくさんありました。それでも投げ出さずに続けてきたことが、自分の評価につながったのだと思います。
遠回りに見える努力でも、見てくれている人はいる――。そう実感できた出来事でした。
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努力を続けていても、すぐに評価されるとは限りません。ときには理不尽な思いをしたり、自分の成果が正当に認められなかったりすることもあるでしょう。それでも主人公は腐らずに仕事と向き合い続けました。今回のお話は、最後に評価されたのが学歴ではなく、日々積み重ねてきた信頼だったことが印象的なエピソードでした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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