夫はスポーツが好きで、仕事帰りによくジムへ通っていました。さわやかで社交的な性格ですが、実は気が小さく繊細な一面も。そんなギャップも含めて私は大好きでした。
夫は私の両親とも良好な関係を築いていて、実家で力仕事があれば率先して手伝ってくれました。両親も夫を気に入っていましたが、私は実家へ頻繁に行くことに少し抵抗がありました。
その理由は双子の妹です。
夫には知られたくなかった双子の妹の存在
私たちは二卵性双生児なので完全に同じ顔ではありません。しかし妹は昔から私の服装や髪型、メイク、話し方までまねをしていて、周囲からはよく似ていると言われていました。
しかも妹は昔から私の持ち物だけでなく、私の交際相手にも興味を示すことがありました。そのたびに両親は注意してくれましたが改善されず、私は結婚を機に妹の連絡先をブロック。
その後も妹は長年ふらふらと各地を転々としていて、家族でさえ現在の居場所を把握していませんでした。それでも、いきなりふらっと帰ってくることが……。
そのため私は、実家で偶然夫と妹が鉢合わせることだけは避けたいと思っていたのです。
妹から夫へ突然のDM
私たちが結婚して半年ほど経ったころ、両親から妹が婚約したと連絡を受けました。
相手はいくつかのスポーツジムを経営している実業家の男性。妹がジムに入会し、彼のパーソナルトレーニングを受けたことをきっかけに、親しくなったそうです。とても誠実で面倒見が良く、周囲からも信頼されている人物とのことでした。
意外な組み合わせに驚きながらも、両家の顔合わせに参加した私。
夫は仕事の都合で欠席だったため安心していたのですが、自宅へ戻ると夫から驚く話を聞かされました。なんと妹とSNSで連絡先を交換したと言うのです。どうやら先日、妹のほうからDMが届き、「姉の旦那さんにあいさつしたい」「これからは家族ぐるみで仲良くしたい」と言われたとのことでした。
不安になった私が「できれば連絡は取らないでほしい」と伝えると、夫は「自分から連絡することはない」と約束してくれました。
不妊治療をきっかけに変わっていった夫
もともと、結婚後すぐに子どもを望んでいた私たち。しかし、半年経ってもなかなか授からなかったため夫婦で検査を受けたところ、私に治療が必要な要因があることが判明しました。
妊娠の可能性がなくなったわけではありませんでしたが、少しでも早く子どもを授かりたく、治療を始めることに。
治療を始めたのは、妹の顔合わせから1カ月後のことでした。そのあたりから夫の態度が少しずつ変わっていったのです。
「こんな結婚生活は望んでいなかった」
「早く子どもが欲しかったのに」
そんな言葉を口にされることもあり、私は深く傷つきました。夫は家を空けることも増え、ジムへ行くと言って帰宅が遅くなる日も多くなりました。
私が伝えた“ある事実”
ある日、夫のスマホが珍しくダイニングテーブルに放置されていました。画面が光ったので見てみると、そこには通知が。私の妹からのメッセージのようでした。
「あなたの子どもを妊娠したの」
頭が真っ白になりました。ダイニングに戻ってきた夫に説明を求めると、謝るどころか「お前とは離婚する」「妹とやり直す」と言い出したのです。
「俺は早く子どもが欲しかったんだ」
「どうせ双子で同じ顔なんだから、どっちでも変わらない」
さらに財産分与についても自分に有利な要求を並べ始めた夫。あまりにも身勝手な態度に、私は言葉を失いました。
そのとき、はっと思い立ち、私は自分のスマホである写真を見せました。
それは、妹の両家顔合わせの際に撮った写真。そこにはもちろん、妹の婚約者が写っています。
「妹の婚約者、この人だよ」
そう伝えると、夫の表情が変わりました。実は妹の婚約者は、夫が通っているスポーツジムのオーナーでもあったのです。先日の顔合わせの際に、婚約者が夫ともジムを通じてつながりがあることが判明。彼は昔から本格的に格闘技をやっていて、大柄でコワモテな目立つ存在ということもあり、実は気弱な夫にとって脅威を感じる相手のようです。
しかも、彼は妹にぞっこん。猛烈なアピールの末、妹と婚約したことを伝えると、夫は一気に青ざめました。
「こんなことになった以上、彼にもちゃんと状況を伝えなくちゃね」
夫の制止を振り切り、妹の婚約者に電話をかけました。顔合わせの際に私もジムに興味があると伝えると、「サービスしますよ!」と連絡先を教えてくれたのです。簡潔に事情を伝えると、彼は彼で妹の行動に違和感を覚えていたと言います。
後日、婚約者が妹を問い詰めたところ、なんと、妹の妊娠は嘘であることが判明。夫からお金を引き出そうとしていただけでした。すべてを知った婚約者は即座に妹との婚約を破棄。さらに夫に対してもジムへの出入り禁止を言い渡し、「二度と関わらないでくれ」と猛烈に一喝したそうです。
夫は「ジムを出禁になるだけで済んでよかった……」と安堵し、私に何度も謝罪。「不妊治療への不安や焦りから判断を誤った」「妹に対しては本気ではなかった」とも言っていました。
しかし、私は夫を許すことができませんでした。苦しいときに寄り添ってくれるどころか、私を傷つけ、妹との関係を持った事実は消えなかったからです。話し合いの末、最終的に私たちは離婚しました。
そして4年後――。
私は別の男性と再婚。新しい夫は不妊治療にも寄り添ってくれ、支え続けてくれるやさしい人です。
治療の結果、私は念願だった子どもを授かることができました。あのときは人生のどん底だと思っていましたが、今は心から幸せだと感じています。
◇ ◇ ◇
不妊治療は夫婦にとって大きな試練になることがあります。それを乗り越えるためには、2人で支え合うことが不可欠でしょう。
今回のケースでは、夫は妻の苦しみに寄り添うどころか、自分本位な行動を選んでしまいました。一方で、つらい経験を乗り越えた主人公は、自分を大切にしてくれるパートナーと新たな人生を歩み始めています。
相手への思いやりや信頼関係の大切さを改めて考えさせられるエピソードでした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。