一時帰国した僕を待っていたもの
僕はとあるメーカーで営業として働いていました。新規開拓や海外案件を担当していたことから、2年間の海外赴任を任されていたのです。
そんなある日、本社での打ち合わせのため1週間だけ帰国することになりました。ところが出社すると、僕が使うはずの席が見当たりません。
「あれ?僕はどこに座ればいいですか?」
近くにいた部長へ尋ねると、「会社にお前の席なんてないからなw」と笑いながら返されました。
すると同期のA子が慌てたような表情で駆け寄ってきました。
「帰国日って前から決まってましたよね?席の手配はどうなってるんですか?」
しかし部長は、「たかが1週間だろ。空いてる場所でも使わせておけ」と取り合おうともしませんでした。
僕はA子に「大丈夫だよ」と伝え、その日は会議室の片隅で仕事をすることにしました。
実は部長とは以前から考え方が合いませんでした。僕は新しい提案を積極的におこなうタイプでしたが、部長は昔ながらのやり方を重視する人。海外赴任中も何度か意見が対立していたのです。
部長のひと言で決意!
その日、僕は海外赴任中に進めていた案件について部長へ報告していました。現地企業との共同開発の話が少しずつ進んでおり、実現すれば会社にとって新たな収益源になる可能性もありました。
しかし部長は最後まで話を聞こうともせず、「そんな話は必要ない」と一蹴しました。
僕が説明を続けても、「海外企業なんて信用できない」の一点張り。そして最後には、「会社のやり方が不満なら辞めればいい」と言い放ったのです。
僕はその場では何も言い返しませんでした。ただ、このとき気持ちは完全に固まったのです。
実は海外赴任中、取引先企業の担当者から転職の打診を受けていました。以前から会社の将来や自分のキャリアについて考えることも増えていましたが、この日の出来事で答えが出たような気がしたのです。
空港で同期に打ち明けたこと
帰国期間を終え、赴任先へ戻る日。見送りに来てくれたA子に、僕は初めて転職を考えていることを打ち明けました。
すると彼女は少し驚いたあと、「正直、そのほうがいいと思う」と苦笑しました。そして、「でも、あなたが辞めたら海外案件どうするんだろう……」とつぶやいたのです。
当時の海外案件は、商談から現地企業との調整まで、ほとんど僕が担当していました。部長は国内営業一筋で、英語での商談や海外企業とのやり取りは得意ではありません。
僕は笑いながら、「会社なんだから、なんとかするでしょ」と答えました。
その後、業務の整理や引き継ぎを進め、無事に退職することができたのです。
退職後に聞いた古巣の状況
転職後、僕は海外事業を展開する企業で働くことになりました。環境も大きく変わり、これまでの経験を活かせる仕事にやりがいを感じています。
一方で、元同僚たちからは古巣の話も耳に入ってきました。
僕が担当していた海外取引先との案件は、その後継続には至らなかったそうです。さらに若手社員の退職も続き、社内の雰囲気も少しずつ変わっていったのだとか。
もちろん会社の問題をすべて部長一人の責任にするつもりはありません。それでも、部下の意見に耳を傾けず、新しい挑戦を否定し続ける部長のやり方に限界を感じていた人は少なくなかったようです。
その後、人事異動のタイミングで部長は管理職を外れ、地方支社へ異動になったと聞きました。詳しい事情はわかりません。ただ、かつてのように大きな権限を持つ立場ではなくなったそうです。
その後、A子と僕は…
ちなみに、A子もその後別の会社へ転職しました。退職後も連絡を取り合っており、お互い同じ職場で苦労した仲だからこそ、以前より自然に話せるようになった気がします。
最近では休日に一緒に食事へ行くことも増えています。正直なところ、以前からA子には好意を持っていました。今はまだ友人としての関係ですが、これからもっと距離を縮めていけたらと思っています。
あの日、席が用意されていないことを知ったときはショックでした。ですが、自分を必要としてくれる環境へ踏み出したことで、新しい仕事や人とのつながりを得ることができました。
変化を恐れず行動することが、新しい可能性につながることもある。今回の出来事を通して、そう実感しています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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