夫の言うことに逆らわず、黙って従っていた私。そんな私を気にかけてくれていたのは、夫の母親、つまり義母だけでした。
義母は、私の好物を送ってくれたり、電話で体調を気遣ってくれたりしました。夫にきつい言い方をされたあと、義母からの何気ない連絡に救われることも少なくありませんでした。
夫に見下される日々
夫の言うことに逆らわず、黙って従っていた私。夫にきつい言葉をかけられても、「夫婦なのだから」と自分に言い聞かせてきました。
そんな私を気にかけてくれていたのは、夫の母親である義母だけでした。義母はときどき私の好物を送ってくれたり、電話で体調を気遣ってくれたりしました。
ある日、私は夫に「たまにはお義父さんのお墓参りに行かない? お義母さんも、あなたに会えたら喜ぶと思う」と声をかけました。
しかし夫は、「俺は忙しい。行きたいならお前だけで行け」と不機嫌そうに言いました。さらに「余計なことばかり言うな。俺を不快にさせる前に考えてしゃべれ」と続けられ、私は黙るしかありませんでした。
いつからか、夫の機嫌を損ねないようにすることが、私の日常になっていたのです。
夫のスマホに届いた通知
それからしばらくたったある日、夫がお風呂に入っている間にスマホが鳴りました。画面には女性の名前と、「この前みたいに、またゆっくり会いたい」というメッセージが表示されていました。
夫の行動を思い返すと、不自然なことはいくつもありました。休日出勤だと言って出かけた日。急に帰りが遅くなった日。スマホを肌身離さず持つようになったこと。
夫に問い詰めると、「昔からの友だちだ。くだらないことで騒ぐな」と逆ギレされました。けれど、どうしても胸騒ぎが収まりませんでした。
家計管理は私がしていたため、夫のクレジットカードの利用明細も毎月確認していました。そこで、私と行った覚えのない飲食店や宿泊施設の利用履歴を見つけたのです。
日付は、夫が「仕事で遅くなる」と言っていた日ばかりでした。
動揺しながらも、私は表示されたメッセージの内容や明細の日付を控えました。感情だけで夫を責めても、また言いくるめられると思ったからです。
夫が隠していた女性
後日、改めて夫を問い詰めると、夫はようやく認めました。相手は、夫の高校時代からの女友だちでした。結婚後も何度か連絡を取り合っていたようで、数年前から男女の関係になっていたそうです。相手の女性も、夫が既婚者であることを知っていました。
私は頭が真っ白になりました。
「どうして……?」
やっとの思いでそう聞くと、夫は悪びれもせずに言いました。
「もう終わったことだろ」
「向こうとはもう会わないって言ってるんだから、それでいいだろ」
「浮気くらいで大げさなんだよ」
私は何も言えませんでした。夫は、私が傷ついていることよりも、自分が責められていることに腹を立てているようでした。
「男ならそういうことの一つや二つあるだろ」
「そんなことも許せないなら、結婚生活なんて無理だぞ」
夫の言葉を聞いた瞬間、胸の奥で何かがすっと冷めていくのを感じました。私はこれまで、夫の機嫌を損ねないように我慢してきました。ひどい言い方をされても、結婚した相手だからと自分に言い聞かせてきました。でも、不倫をしておきながら謝りもせず、私を責める夫の姿を見て、ようやく目が覚めたのです。
もう夫の顔色は見ない
朝、夫はいつものようにリビングに入ってくるなり言いました。
「俺の飯は? もしかして、まだ怒ってんのか?」
「浮気くらいで心狭ぇな。もう終わったことだろ」
私は夫を見て、静かに言いました。
「あんたと私の夫婦関係も、今終わったよ」
夫は「は?」と言ったあと、「本気で言ってるのか? どうせ一人じゃ何もできないくせに」と鼻で笑いました。
けれど、私はすでに弁護士へ相談していました。夫とのやり取りやカード明細をもとに、離婚する場合に何を準備すればいいのか、夫と不倫相手に慰謝料を請求できるのかを確認していたのです。
「離婚します。慰謝料のことは、これから弁護士を通してください」
そう伝え、私は家を出ました。
義母に伝えたこと
家を出たあと、私は義母にも連絡しました。何も言わずに離婚を進めることはできないと思ったからです。
夫が昔からの女友だちと不倫していたこと。相手も夫が既婚者だと知っていたこと。夫が謝るどころか、開き直って私を責めたこと。私は事実だけを伝えました。
電話の向こうで、義母はしばらく黙っていました。そして、「あの子、自分の父親と同じことをしたのね」とつぶやきました。
義母の話では、亡くなった義父も結婚中に何度も女性問題を起こし、そのたびに開き直って義母を責めていたそうです。
「あなたには本当に申し訳ないことをしたわ」と謝る義母に、私は「お義母さんのせいではありません」と伝えました。
すると義母は、「私も、あの子への関わり方を考え直します」と言いました。
夫からの鬼電
翌日、夫から何度も電話とメッセージが届きました。
「お袋に余計なこと言っただろ!」
「お袋が、俺への援助をやめるって言い出したんだよ!」
「将来のことも全部考え直すって、どういうことだよ!」
義母は、夫に渡す予定だったまとまった援助を取りやめることにしたそうです。さらに、将来夫に任せるつもりだった実家や財産の管理についても、一度考え直すと伝えたとのことでした。
もちろん、義母がすぐに何もかも決めたわけではありません。ただ、これまで夫を信用して任せようとしていたことを、いったん白紙に戻したいと思ったようでした。
夫は「お前のせいで全部めちゃくちゃだ」「夫婦のことを親に言うなんて最低だ」と責めてきました。
私は「私が壊したんじゃない。あなたがしたことの結果です」とだけ返しました。これまで私を見下してきた夫は、私が本当に離婚に向けて動き出すとは思っていなかったのでしょう。
不倫相手にも慰謝料請求
私は弁護士を通じて、不倫相手の女性にも慰謝料を請求しました。
相手の女性は最初、「ただ相談に乗っていただけ」「夫婦関係がうまくいっていないと聞いていた」と言い訳をしていたそうです。
しかし、残っていたメッセージや利用明細、そして夫自身が関係を認めたことから、既婚者だと知ったうえで夫と会っていたことは明らかでした。
最終的に、夫と相手女性はそれぞれ慰謝料を支払うことになりました。お金をもらったからといって、傷ついた気持ちがすぐに消えるわけではありません。それでも、夫がしてきたことを「浮気くらい」で済ませずに済んだことは、私にとって大きな区切りになりました。
新しい生活へ
その後、私は弁護士を通して夫と離婚しました。
義母からは、離婚が成立したあとに「あなたが悪いわけじゃない。どうか、自分を大切にしてね」と連絡がありました。その言葉に、私は涙が止まりませんでした。
夫は最後まで、自分が私をどれだけ傷つけたのか理解していないようでした。でも、もうそれをわからせようとは思いません。
私は、夫と不倫相手から受け取った慰謝料を新生活のために使うことにしました。これからは、誰かの顔色をうかがって生きるのではなく、自分を大切にしてくれる人と、自分を大切にできる場所で過ごしていきたいです。