収入差を気にしていた婚約者
彼とは、婚約するまで1年ほど付き合っていました。交際中から収入差はありましたが、彼はデートのたびに「ここは俺が出すよ」と言ってくれる人でした。ただ、彼が経営するバーは売り上げが安定していないようで、私のほうが収入に余裕があったため、デート代は私が多めに負担することがほとんどでした。
また、婚約後も、結婚式場の見学や一緒に住む物件探しの交通費、外食代などは、交際中と変わらず私が多く出していました。
彼はそのたびに「いつもごめん」「いつかちゃんと返すから」と言ってくれていたので、私は特に不満には思っていませんでした。
ただ、1つだけ気になっていたのは、彼が私の両親に会おうとしないこと、そして、私も彼の両親に会わせてもらえないことでした。私が「そろそろ両家の顔合わせについて考えないとね」と言うと、彼は「店のことが落ち着くまで待ってほしい」「安定したら、ちゃんと考えるから」と言いました。
ただ、このときはまだ「彼は私との収入差を気にしているだけ」と思っていたのです。
知人の言葉をきっかけに抱いた違和感
そんなある日、私の知人である飲食店経営者が「この前、あなたの婚約者らしき人が女性と店に来ていたんだけど……」と、言いづらそうに教えてくれました。その日は、彼が「バーの経営のことで知人に相談してくる」と言って、私との約束をキャンセルした日でした。
私はその日の夜、彼に電話をしました。
「この前、女性と一緒にお店にいたって聞いたんだけど。経営の相談って言っていた日だよね?」
彼は一瞬黙り込みましたが、すぐに「昔の知り合いだよ」「たまたま相談に乗ってもらっただけ」と答えました。
「じゃあ、どうして隠すような言い方をしたの?」と聞くと、彼は不機嫌になりました。
「そこまで疑うの? 俺のこと信用してないんだ」と責められた瞬間、私のほうが悪いのだろうかとひるみました。けれど、彼の説明は最後まで曖昧で、納得できるものではありませんでした。
さらに数日後、賃貸物件の候補を一緒に見ていたときのことです。テーブルに置かれていた彼のスマホに、「アヤカ」という女性の名前で通知が表示されました。そこには、「今月分、いつ送れる?」というメッセージが見えたのです。
彼は「あっ今のは……」と露骨に焦り、慌ててスマホを伏せました。その瞬間、胸の中にあった違和感が、確信に近づいた気がしました。
入籍前に知った隠し事
後日、私は彼のバーを訪れて、もう一度話をしました。
「女性と会っていたことも、お金のことも、ちゃんと説明してほしい。結婚する相手に隠していいことなの?」
彼は最初こそ「考えすぎだ」「昔の知り合いからお金のことで相談されているだけ」と言い張りました。けれど、「何の知り合い?」などとさらに掘り下げて聞いてみると、彼は次第に言葉に詰まりました。
そしてようやく、彼は私に隠していた過去を話し始めました。彼は以前、結婚していたことがあると言いました。彼によると、離婚の原因は彼自身の不貞だったそうです。さらに、元妻との間には子どもがいて、今も養育費と、離婚時に取り決めた慰謝料の支払いを続けているというのです。
飲食店で会っていた女性は、その元妻でした。男女としての関係はすでに終わっているものの、子どものことや支払いについて話し合うため、今も必要に応じて会っていたのだと彼は説明しました。
元妻と子どものことで連絡を取り合うこと自体を、責めるつもりはありませんでした。むしろ、子どもの親として必要なことだと思います。けれど、離婚歴があることも、子どもがいることも、支払いを続けていることも、私には何一つ話してくれていなかったのです。その事実に、私は深く傷つきました。
「どうしてもっと早く言ってくれなかったの?」と聞くと、彼はうつむいたまま、「言ったら、君に嫌われると思った」と答えました。そして続けて、「君と結婚したかったのは本当だよ。結婚したら、ちゃんと話すつもりだった」と言ったのです。
彼がもっと早く正直に話してくれていたなら、私は一緒に考えたかもしれません。けれど彼は、大事なことを隠したまま私と結婚しようとしていました。「結婚したら話すつもりだった」と言われても、そんな信頼関係で夫婦になれるとは思えませんでした。
「正直に話してくれていたら、一緒に考えられたかもしれない。でも、隠したまま結婚しようとしたことは、どうしても許せない」
そう伝え、私はその場で婚約解消を告げました。
入籍前に立ち止まれて
彼からずっとはぐらかされていたため、両家の顔合わせや婚姻届を出す日も、これから決めるところでした。そのため、家族を巻き込む前に立ち止まれたことは、不幸中の幸いだったと思います。
その後も彼から何度か連絡が来ましたが、私は必要最低限のやりとりだけをして、関係を終わらせました。
彼を信じていたからこそ、事実を知ったときのショックは大きいものでした。けれど、違和感を見過ごさず、婚姻届を出す前に立ち止まれたことは、私にとって大きな転機になりました。
結婚は、相手の弱さを受け止めることでもあるかもしれません。けれど、大切な事実を隠されたまま築く関係は、支え合いとは呼べません。これからは、誰かに尽くす前に、まず自分自身を大切にして生きていこうと思います。
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離婚歴や子どもの存在、元妻との連絡をどう受け止めるかは、人によって考え方が分かれるところかもしれません。けれど今回、主人公が深く傷ついたのは、それらの事実そのものよりも、結婚を考える相手に大切なことを隠されていたことでした。
正直に話してくれていれば、一緒に向き合う余地があったかもしれません。だからこそ、「結婚したら話すつもりだった」という言葉では、壊れた信頼を取り戻すことはできなかったのでしょう。支え合う関係には、弱さを見せる勇気と、相手に誠実であろうとする姿勢が欠かせないのだと感じるエピソードでした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※AI生成画像を使用しています
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